青葉真司被告(45)は、5年前の2019年7月、京都市伏見区の「京都アニメーション」の第1スタジオに火をつけ、社員36人を殺害し、32人に重軽傷を負わせたなどとして殺人や放火などの罪に問われました。
25日の判決で京都地方裁判所は、被告には事件当時、物事の善悪を判断する責任能力があったと認めたうえで「36人もの尊い命が奪われたことはあまりにも重大で悲惨だ」などとして、検察の求刑どおり死刑を言い渡しました。
裁判所によりますと、26日、弁護士が判決を不服として控訴したということです。
被告の弁護士はこれまでのところ取材に応じていませんが、裁判では、被告は重い精神障害により責任能力はなかったとして無罪を主張していました。
京アニ放火事件 青葉真司被告の弁護士 判決を不服として控訴
「京都アニメーション」のスタジオに放火し、社員36人を殺害したなどとして死刑判決が言い渡された青葉真司被告の弁護士が26日、判決を不服として控訴しました。
亡くなった石田奈央美さんの母「刑が確定しないと前に進めない」
京都アニメーションで色彩設計を担当していたアニメーターで、事件で亡くなった石田奈央美さん(当時49)の母親は、青葉被告の弁護士が控訴したことについて「長い時間がかかったけどやっと判決が出たよと仏壇の前で報告し、心の中で一応の区切りがついたと思っていたところに、控訴の知らせを聞きたまらない気持ちです」と話しています。
そのうえで「私も年を取っているので、裁判の行方を最後まで見届けることができないのではないかと思ってしまいます。刑が確定しないことには前に進めない気持ちです」と話していました。
亡くなった渡邊美希子さんの母「控訴やめると言ってほしい」
京都アニメーションで背景画を担当し、数々の作品で美術監督を務めていたアニメーターで、事件で亡くなった渡邊美希子さん(当時35)の母親の達子さんは、死刑判決について「主文が後回しにされた時からそういうことなのかなと思っていました。娘にもきのうの判決は届いていると思います」と話しました。
青葉被告の弁護士が控訴したことについて「一般的に控訴するケースが多いことは分かっていましたが、『やめてほしい』というのが本音です。被告は自分がやったことが悪いことだと分かっているので、控訴をやめると言ってほしい」と話していました。
事件のあと、達子さんは犯罪被害者への支援の大切さなどを訴える講演活動を各地で行っていて、「裁判をきっかけに、こういう事件が起こらない社会を作ることが重要だと思います」と話していました。
亡くなったアニメーターの父 “控訴は残念”
事件で亡くなった男性アニメーターの父親は、傍聴したこれまでの裁判で青葉被告から償いの気持ちが感じられず残念に思ったといいます。
死刑判決が言い渡されたことについては「死刑でも、亡くなった36人の命を償うことはできず、息子は帰ってきません。なぜ、息子が亡くなってしまったのかという思いは、私が死ぬまで続いていくんだろうなと改めて感じました」と話しました。
そのうえで青葉被告の弁護士が控訴したことについて、「どんな判決が出ても受け入れてほしいと思っていたので残念です。被告には、機会があるなら同じような悲惨な事件が2度と起きないよう社会で考えるために、事件を起こした経緯を語ってもらいたい」と話していました。