金沢市に隣接する内灘町は酪農が盛んで、石川県内の牛乳生産量の5割以上を占めています。
地元の酪農組合によりますと、搾乳の機械やボイラーなど一部に被害が出たものの牛舎の倒壊などは免れ、牛乳の生産を続けているということです。
組合長の川上充紀さんの200頭を飼育する牛舎でも断水し、地震のあとは一時、出荷を停止せざるを得なくなりました。
水なく「モーモーモー」200頭飼育の牛舎は【被災地の声 25日】
「こないだまでモーモーモーモーの大合唱ですよ。水をくれないということがわかってるんでしょう」
1日80リットル程度の水を飲むと言われる牛。
しかし、石川県内灘町の牛舎では断水が続き、今は毎日運び込んだ水をためて牛舎に送っています。
「被害が甚大な地域を優先してもらいたいですが、こちらも早く元どおりになってほしいです」
酪農家の男性が、思いを話してくれました。
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内灘町 200頭飼育の牛舎も断水
川上充紀さん
牛は体のバランスを崩すと、ミルクのバランスも崩れるんです。そして洗浄も十分できないっていうことは不潔になる、だから出荷停止してましたよ。安定した安全安心な牛乳ができるまでは出さないと。ようやく、今は出てます。それでもまだ100パーセントは出てないですよね。
タンクで運ぶ水も半日で
牛は1日に80リットル程度の水を飲むと言われています。
ふだんは水道管からパイプを通して牛舎に水を送っていますが、断水のため、今はできなくなっています。
地震直後は従業員の力を借りて、バケツなどを使い、ためてあった水を不眠不休で牛舎に運び続けていました。
その後、近くの消防署から水の供給を受けられるようになりました。
牛舎の外に縦横2メートル余りの容器をつくり、タンク車などで運び込んだ水をそこにためます。
そして、そこからポンプを使って牛舎に送っています。
ただ、この水も半日ほどでなくなってしまうということです。
このため1日に2回から3回、消防署に出向いて確保しなくてはなりません。
水は牛に与える以外にも、搾乳の機械の洗浄や牛舎の清掃にも必要です。
今はこう静かになってるでしょ。もうこないだまで大合唱ですよ、この中。モーモーモーモーですよ、「水がない、水がない」みたいなもんでしょう。水をくれないということが分かってるんでしょう。
「こちらも早く元どおりに」
一方、川上さんは、自分たちよりも大きな被害が出た地域の人たちのことを思い、こう話しています。
これで電気がなかったらとか、そういう人たちのことを見ると…。われわれの仲間もね、大変ですよ、本当に。
牛は十分、水が飲めないと餌を食べる量も減り、牛乳の品質も基準を満たせなくなって出荷ができず廃棄せざるをえなくなります。被害が甚大な地域を優先してもらいたいですが、こちらも早く元どおりになってほしいです。
かほく市 操業再開 それでも…
石川県かほく市の繊維工場では、操業を再開したものの地震の前と同じ品質を保つことは難しい状況が続いています。
かほく市は衣類に使うゴムひもなど繊維産業が盛んな地域です。
タイツやズボンの素材となる糸の加工を行っていた中村撚糸株式会社の繊維工場では、地盤の液状化の影響で、建物が大きく傾くなどの被害が出ました。
このため一時休業することになり、ゆがんだ機械を調整するなど対応に追われました。
中村勝則 社長
操業が再開でき、仕事ができる喜びを感じていますが、建物の修復に何かしら手を打たないといけない。ただ費用や時期のめどが全く立たないです。
能登町 ようやく年賀状が
一方、被害の大きかった地域では、年賀状を受け取れていないという人も少なくありません。
能登町の郵便局では郵便物の引き渡しなど窓口業務の休止が続いていましたが、手紙やはがき、一部の荷物の引き渡しに限って再開しました。
このうち町内の「宇出津港いやさか広場」では車両型の郵便局が開設されました。
25日は午前中から近くに住む人たちが、次々と年賀状や荷物などを受け取りに来ていました。
年賀状を受け取った60代の男性は。
年賀状が届くか心配していたのですが、受け取れてよかったです。
能都郵便局 尾形優 局長
地震が発生してから年賀状などを配達できず、郵便物を待っている人がたくさんいましたが、少しずつお客さんの期待に応えていきたいです。
能登町内ではこのほか松波郵便局と柳田郵便局でも、平日の午前9時から午後3時まで郵便物を受け取ることができます。一方、郵便物の個別の配達再開のめどは、立っていないということです。
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