世界銀行は30日、ウクライナ情勢に加え、イスラエルとハマスの衝突がさらに拡大した場合の原油価格など、商品市場に与える影響をまとめた報告書を公表しました。
それによりますと、衝突が拡大しなければ影響は限定的で、年末までは国際的な指標となる原油の先物価格は平均で1バレル=90ドルにとどまるとしています。
一方、報告書では3つのリスクシナリオも公表しました。
このうち衝突が激化し、中東で「中規模の混乱」が起きた場合、2003年のイラク戦争のときと同じような規模で原油供給量が減少し、原油価格は21%から35%上昇するとしています。
さらに最悪のケースである「大規模な混乱」が起きた場合、1973年のオイルショックのときと同じ規模で原油供給量が縮小し、原油価格は最大75%上昇して1バレル=157ドルに達すると予想しています。
世界銀行は「世界の商品市場は、未知の領域に突入するおそれがある」としたうえで、「原油価格の上昇は、必然的に食料価格の高騰をもたらすことになる。世界ではすでに7億人以上が栄養不足に陥っており、衝突の激化は世界全体の食料不安をいっそう深刻にする」と警鐘を鳴らしています。
世界銀行 “原油価格が75%高騰するおそれ” 中東緊迫化で
世界銀行は、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が激化して中東情勢が一段と緊迫化すれば最悪の場合、原油価格が75%高騰するなど、世界の商品市場は未知の領域に突入するおそれがあると警告しています。
WTO「世界経済、貿易に影響も」
WTO=世界貿易機関のオコンジョイウェアラ事務局長は30日、アメリカの経済チャンネルCNBCのインタビューでイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突について、「衝突がほかの中東地域に拡大すれば世界経済、世界の貿易に影響が出る」と述べ、経済的な打撃に懸念を示しました。
そのうえで「中東地域は、石油だけでなく天然ガスの供給元でもあり、世界中が依存している。そのような衝突激化の道をたどらないよう、緊張緩和を期待したい」と述べました。