ゼレンスキー大統領 国連総会で演説 “団結して行動を”

ニューヨークの国連総会に出席しているウクライナのゼレンスキー大統領が演説し、ロシアによる軍事侵攻を厳しく非難したうえで、「すべての力を結集し、侵略者を打ち負かすために団結して行動しなければならない」と述べ、国際社会に改めて支援を呼びかけました。

19日に国連総会で始まった各国の首脳らによる一般討論演説では、冒頭、グテーレス事務総長がロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、「国連憲章と国際法に違反する戦争は恐怖の連鎖を生み出し、人命を奪い、人権を踏みにじり、家族を離散させた。ウクライナにとどまらず、私たちすべてに深刻な影響を及ぼしている」と非難しました。

このあと、日本時間の20日午前3時ごろからはウクライナのゼレンスキー大統領が演説し、ロシアが世界を核戦争の恐怖に陥れ、食料供給をも脅かしていると厳しく非難したうえで、「すべての力を結集し、侵略者を打ち負かすために団結して行動しなければならない」と、国際社会に支援を呼びかけました。

そして、「ロシアが世界を最終戦争へと駆り立てようとしているのに対して、ウクライナはいかなる国も他の国を攻撃することがなくなるよう力を尽くしている。戦争犯罪は処罰され、占領された土地は返還されなければならない」と述べ、国際秩序を守らなければならないと訴えると、会場から大きな拍手が起こりました。

ゼレンスキー大統領はこのあと、20日に開かれる安全保障理事会の首脳級の会合にも出席するほか、各国首脳とも個別に会談し、改めて支援を訴える考えです。

アメリカ バイデン大統領 “ロシア 平和の邪魔をしている”

アメリカのバイデン大統領は19日、国連総会で演説し、ウクライナへの軍事侵攻をめぐり、ロシアを改めて非難するとともに、ウクライナに対する支援を継続することを強調し、国際社会に連帯を訴えました。

この中でバイデン大統領はウクライナへの軍事侵攻をめぐり、「ロシアだけがこの戦争の責任を負っている。ロシアだけが戦争を直ちに終わらせる力を持っているが、平和の邪魔をしている」と述べ、ロシアを改めて非難しました。

そして、「ロシアは世界が次第に疲れ、ウクライナへの残虐行為が見逃されるようになると信じている。ウクライナが切り刻まれることを許したら、どの国の独立が保障されるだろうか」と指摘し、ウクライナの主権と領土の一体性を守るため、支援を継続することを強調しました。

また、覇権主義的な行動を強める中国も念頭に、「われわれはこの侵略に立ち向かい、あすの侵略者を抑止しなければならない」と述べ、国際社会に連帯を訴えました。

その上で、米中関係について、「両国の間の競争が対立に傾かないよう、責任を持って管理しようとしている」と述べ、経済的な結びつきを切り離す「デカップリング」ではなく、経済関係を維持しながら中国との間で抱えるリスクを減らしていく「デリスキング」を目指す考えを強調し、気候変動問題など共通の課題については協力する姿勢を示しました。

そのほか、食料安全保障や感染症対策などへの支援についても言及し、途上国や新興国など、いわゆるグローバル・サウスの国々への配慮も示しました。

トルコ エルドアン大統領 “停戦に向け仲介外交を継続”

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、両国の仲介役を務めるトルコのエルドアン大統領は19日、ニューヨークで開かれている国連総会の一般討論演説に出席し、「戦争が始まって以来、両国の友人たちを交渉のテーブルにとどまらせるよう努めてきた」と述べ、両国の首脳と個別に直接会談をするなど、独自の外交を展開してきたと訴えました。

その上で、「ウクライナの独立と領土の一体性を基本として、外交と対話による戦争終結に向けて努力を続ける」と述べて、停戦に向けて仲介外交を継続していく考えを改めて強調しました。

また、去年、トルコと国連の仲介で合意に至ったものの、ことし7月にロシアが合意の履行を停止したウクライナ産の農産物輸出をめぐっては、「飢餓の危機にひんする地域に手を差し伸べるべく関係国と接触を続けている。まずはアフリカの国々に穀物を送る計画がある」として、食料危機への懸念にも対処していく考えを示しました。

一方、エルドアン大統領はアメリカやロシアなど、国連安全保障理事会の常任理事国5か国が強大な決定権を握っているとして、「国連が主導して世界の安全と平穏を担う組織を早急に再構築する必要がある。世界は5か国よりも大きい」と述べて、国連の改革が必要だと訴えました。

ブラジル ルーラ大統領 “対話による停戦を”

ブラジルのルーラ大統領は国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、対話を通じた停戦の必要性を訴え、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米各国とは一線を画する姿勢を見せました。

ブラジルのルーラ大統領は19日、国連総会の慣例に従って各国の首脳らによる一般討論演説の冒頭に演説を行いました。

この中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、「対話に基づかない解決策は長続きしない。私は交渉の努力が必要だと繰り返し主張してきた」と述べ、かねてから主張してきた対話による停戦の必要性を改めて訴えました。

その上で、「兵器に多額の投資が行われ、開発への投資はほとんどない。去年の軍事支出は総額で2兆ドルを超え、核兵器への支出は830億ドルに達した。これは国連の通常予算の20倍だ」と述べ、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米各国などの対応を暗に批判しました。

ルーラ大統領は20日、同じく国連総会に出席しているウクライナのゼレンスキー大統領と初めて対面で会談する予定で、和平をめぐるみずからの考えを直接伝えるものとみられます。

ウクライナ情勢めぐる「国連の分断」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、ウクライナ情勢をめぐって国連で加盟国の間の分断が広がっています。

国連の安全保障理事会ではウクライナ情勢を協議する会合がたびたび開かれていますが、欧米とロシアによる非難の応酬が繰り返され、さらには北朝鮮の核ミサイル開発問題やシリアの人道支援などをめぐっても、双方の対立が際立つ場面が多く、機能不全に陥っていると指摘されています。

また、193すべての国連加盟国が参加できる国連総会では、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて1年となったことし2月、「武力による領土の獲得は認められない」とした上でロシア軍の即時撤退などを求めた決議が、欧米各国や日本など141か国の賛成多数で採択されました。

一方で、中立的な立場をとったり、ロシアへの配慮を示したりするおよそ50か国が反対や棄権などに回り、国際社会の分断が浮き彫りになりました。

途上国は軍事侵攻の長期化に伴う食料やエネルギーの価格高騰など大きな影響を受けていて、一部の国からはウクライナにもロシアにも即時停戦を求める声が上がっているほか、欧米による武器の供与が和平を阻害していると批判する意見もあります。

先週には多くの途上国が参加する国連のグループ、G77と中国による首脳会合が開かれ、欧米などが主導してきた国際秩序は不公正で、途上国が直面する課題は深刻化していると、強い懸念を表明する政治宣言を採択しました。

加盟国の間で分断が深まる現状に国連のグテーレス事務総長も危機感を強めていて、13日の記者会見では「地政学的な分断によってわれわれの対応能力が弱体化している」、「政治とは歩み寄りだ。外交とは歩み寄りだ。効果的なリーダーシップとは歩み寄りだ」と訴え、ウクライナ情勢を含め世界の懸案の解決に向けた各国の協力を呼びかけました。

イギリス外相「安保理の常任理事国に日本なども入るべき」

国連総会に出席しているイギリスのクレバリー外相がNHKの単独インタビューに応じ、ロシアによるウクライナ侵攻が世界中に危害を加えていると非難するとともに、ロシアの拒否権行使によって国連の安全保障理事会が機能不全に陥っているとして、日本などを常任理事国に加える改革の必要性を訴えました。

イギリスのクレバリー外相は19日、ニューヨークの国連本部でインタビューに応じました。

この中で、ロシアの軍事侵攻に対するウクライナの反転攻勢について、「進展は遅れているが、犠牲者を最小限に抑えるよう慎重に行動し成功を収めている」と分析したうえで、イギリスとしてウクライナが必要とする兵器を見極めながら支援を続けていくと述べました。

また、ロシアに対しては、「ウクライナ南部の穀物施設を攻撃して黒海からの輸出を妨げ、世界中の貧しい人々に危害を加えている」と非難したうえで、食料不足に陥っている途上国を支援する重要性を強調しました。

さらにクレバリー外相は、国連の安全保障理事会でイギリスが過去30年以上、拒否権を行使していないことを引きあいに、ロシアが拒否権を乱用し、安保理が機能不全に陥っていると指摘しました。

その上で、「国連がより効果的な組織となり、現在の世界が抱える課題に向き合えるよう、われわれは改革を支持する。安保理の常任理事国にブラジル、インド、日本、そしてアフリカの国も入るべきだと考えている」と述べ、安保理改革の必要性を訴えました。