チョルノービリ原発占拠「パニックになった」と従業員が証言

チョルノービリ原子力発電所、ロシア語で、チェルノブイリ原発の事故から26日で36年になります。この原発では、放射性物質の飛散を防ぐための対策が進められていますが、ロシア軍は、ウクライナへの軍事侵攻を始めた2月24日に押し入り、1か月余りにわたって占拠しました。
原発からおよそ50キロ離れた町スラブチッチは、原発の従業員と家族が暮らしていて、ロシア軍の行動は、安全に対する暴挙だったとして衝撃が広がるとともに非難の声が高まっています。

このうち、当時、原発内で勤務していた従業員のリュドミラ・コザクさん(45)は、「200人ほどの兵士が押し入ってきた。恐ろしくなって、パニックになった」と振り返りました。

コザクさんは、その日は当直明けでしたが、ロシア軍から交代を許されたのは3月20日で、25日間を、ロシア軍が占拠する原発で職務を続けました。

発電所の電源が一時、落ちたこともあったということで、「私たちが、ロシア軍に対して発電機を動かすための燃料を用意しないと大変なことになると訴えたこともあった」と緊迫した現場の様子を証言しました。
また、技術責任者のアンドリーイ・ビリックさん(58)は当日はスラブチッチの事務所で勤務していて部下からの電話で、ロシア軍が押し入ったとの報告を受けました。

その時の心境について「いったい、ロシア軍は何を考えているのだろうかとがく然とした」と話していました。

そして、「最悪のシナリオだとして最も懸念したのは、ロシア軍が、石棺と巨大なシェルターを爆破するなどして破壊し、放射性物質が飛び散るような事態だった。そうなれば、広い範囲で汚染が起きた」と証言しました。

また、ビリックさんは、原発の周辺にある土壌が汚染された地域でロシア兵がざんごうを掘った形跡があることを確認したとして「ロシア側は安全への知識や配慮がなかったとしか思えない」と話していました。
こうした状況について、スラブチッチのフォミチェフ市長は、「ロシア軍が原発に押し入った狙いは、ウクライナ側への脅しだったのではないか」と述べたうえで「原発の安全に関する国際的なルールはあるが、軍事攻撃を受けた場合を想定したルールはなく、今後の大きな課題だ」と指摘し、新たな課題への対応が迫られているという認識を示しました。

一方で、ロシア軍は3月26日から27日にかけて、スラブチッチの市内にも入ってきました。

市役所前の広場では住民たちが集まり、抗議の声をあげましたが、ロシア兵は、デモの参加者にも攻撃を加え、地元当局によりますと、男性1人がけがをしました。

フォミチェフ市長は、この混乱の中で一時、ロシア軍に拘束されましたが、「人々は恐れることなく、ロシア軍に抵抗を続けた」と話していまし