新型コロナ影響で病床ひっ迫 救急医療“崩壊”のおそれ 札幌

新型コロナ影響で病床ひっ迫 救急医療“崩壊”のおそれ 札幌
札幌市にある救急病院の院長がNHKの取材に応じ、新型コロナウイルスの影響で病床がひっ迫し、新規の救急患者を受け入れられなくなるおそれがあることを明らかにしました。この院長は「札幌市内の救急病院はどこも同じような状況ではないか。救急医療体制の“崩壊”を防ぐためにも、対策が急務だ」と指摘しています。
取材に応じたのは、入院が必要な救急患者を受け入れている札幌市中央区にある二次救急医療機関「斗南病院」の奥芝俊一院長です。

奥芝院長は、大型連休後の救急医療体制について「病室が空いたらすぐに新たな患者が入ってくる」と述べて、病床がひっ迫した状態が続き、新規の救急患者を受け入れられなくなるおそれがあることを明らかにしました。

奥芝院長によりますと、救急患者はもともと、けがや体調不良とともに、発熱の症状をともなうケースが多く「熱がある以上は新型コロナウイルスへの感染を疑う必要がある」としています。

このため病院では院内感染対策のため全員を個室に入れていて、その結果、およそ100床ある個室が、ほぼ埋まってしまう状態が続いているというのです。

さらに奥芝院長は、ふだんは救急患者を受け入れている整形外科などの単科の医療機関が、院内感染をおそれて発熱を訴える患者の受け入れを拒否するケースがあることも明らかにし「医療機関の本来の連携がとれていない」としています。

奥芝院長は「なんとか救おうと必死に受け入れているが、札幌市内の救急病院はどこも同じような状況ではないか。救急医療体制の“崩壊”を防ぐためにも、医療機関の連携体制の再構築が急務だ」と指摘しています。

病院「感染リスク完全になくすこと難しい」

今回、取材に応じた斗南病院は、ことし3月、外来の患者と看護師の2人が新型コロナウイルスに感染し、すべての治療をおよそ1週間にわたって中止した経緯があります。

最初に感染が確認されたのは、けん怠感を訴えて外来を訪れた患者で、感染した看護師は、この患者の車いすを押したり点滴の投与を補助したりするなどしていました。

看護師が患者と接した時間はおよそ1時間で、患者に発熱やせきなどの症状がなかったため、当初は感染を疑わず、手袋などは使用していなかったということです。

このため病院は、その後は、来院者全員を検温し、熱がある人は専用の部屋で隔離して診察するなどの対策を講じているとしています。

ただ、病院の奥芝俊一院長は、防護のための物資が限られるなか、すべての患者の感染を疑い、手袋やガウンなどでの防護を常に徹底するのは現実的ではないとも指摘していて、「全員が感染者だと思って対応していると防護用の物資があっという間になくなってしまう」と述べ、感染のリスクを完全になくすことは難しいと話しています。

小規模医療機関は受け入れ拒否避けられない事態

札幌市を含む北海道内の救急医療の現状について北海道は「新型コロナウイルスの影響で、特に札幌市内では、救急患者を受け入れられる病院の数が全体として少なくなっていて、斗南病院など、二次救急医療機関の負担が増している」と指摘しています。

その理由について道は、ふだんは救急患者を受け入れている整形外科などの単科の病院や診療所が、院内感染をおそれて、発熱の症状を訴える救急患者の受け入れを拒否するケースがあるとしていて、道は「人員や設備にかぎりがある小規模の医療機関にとって、院内感染のリスクを考えれば、受け入れの拒否は避けることのできない事態だ」としています。

さらに、市立札幌病院や北海道医療センターといった地域の救急医療の中心ともいえる病院などが、新型コロナウイルスの患者の受け入れに集中せざるを得ず、その結果、斗南病院のような二次救急医療機関で救急患者の受け入れの負担が大きくなっているとしています。

道は、新型コロナウイルスの感染拡大の勢いがおさまらないかぎり、この状況を大きく変えることはできないとみていて、道の仲介で、医療機関どうしの話し合いを促進して、受け入れ体制の強化につなげたいとしています。