百条委 公益通報制度専門家“兵庫知事らのふるまいは法違反”
兵庫県の斎藤知事のパワハラの疑いなどを告発する文書をめぐり、県議会の百条委員会で証人尋問が行われました。
文書を作成した元局長を公益通報の保護対象としなかった県の対応について、専門家が「法律に違反する」などと指摘したのに対し、県の内部調査に協力した弁護士は「法的に問題ない」という認識を示しました。
兵庫県の斎藤知事のパワハラの疑いなどを告発する文書をめぐり、県議会の百条委員会は5日、証人尋問を行い、公益通報制度の専門家や弁護士、それに県の幹部らが出席しました。
この中で公益通報制度に詳しい上智大学の奥山俊宏教授は、県が告発文書を作成した元局長を公益通報の保護対象とせず、懲戒処分にした対応について「公益通報にあたらないと判断したのは拙速すぎた」と述べました。
そのうえで「結果的に文書には、法的に保護されるべき公益通報が含まれていることが明らかになっていると思われ、知事らのふるまいは公益通報者保護法に違反すると考える」と指摘しました。
また、斎藤知事が記者会見で元局長を「公務員としては失格」と述べたことについて「県の行政府のトップである権力者が公の場で部下個人に対して、いわば公開パワーハラスメントに及ぶことは許されない」と述べました。
これに対し、県の内部調査に協力した藤原正廣弁護士は「文書の内容だけをみれば、真実相当性は否定されると判断している。元局長に対する不利益な取り扱いは禁止されず、懲戒事由があるから処分は可能だという見解だ」と述べ、法的に問題ないという認識を示しました。
一方、5日は一連の問題の対応にあたり、体調不良を理由に業務を休んでいる元総務部長にも出席を求めていましたが、安全面への懸念や心身の不調などを理由に欠席しました。
証人尋問は6日も行われ、午後には斎藤知事本人が出席し、公益通報に対する認識や贈答品を受け取った疑いなどについて質疑が行われる予定です。
【百条委員長“事実踏まえ見解出す”】
百条委員会のあと奥谷謙一委員長は記者団に対し「専門家からは元局長が文書を3月に報道機関などに送ったこと自体、外部公益通報にあたり、犯人捜しのような調査は問題があると意見をもらったと認識している。藤原弁護士は問題ないと言っているが、しっかり事実を踏まえてわれわれの見解を出したい」と述べました。
また、奥谷委員長は、5日、非公開で行われた証人尋問に出席した職員が、県の人事課がことし3月の時点で第三者機関で調査するべきではないかと当時の総務部長に進言していたものの、その時点では、設置されなかったなどと証言したと説明しました。
【公益通報制度とは】
公益通報とは、公務員を含む労働者などが組織の不正行為を、内部の通報窓口や権限がある行政機関や報道機関などに通報することです。
不正による国民への被害を防止するための通報は、正当な行為として保護されるべきだとして、公益通報をした人の不利益な扱いは法律で禁止されています。
兵庫県では、これまで内部通報窓口しかありませんでしたが、新たに弁護士が受け付ける外部窓口を年内をめどに設置することになり、準備を進めています。