「ひやっしー」に研究者はどう対応すべきか2024/06/15(土)
「ひやっしー」(起業家・村木風海氏の開発した二酸化炭素吸収装置)の話題が Twitter(現X)で最近また流れてきて、何かあったのかなと思っているのですが、その中にちょっと気になるポストがありました。
ひやっしーどうでもよかったんだけど、例えば小学校に出張講義とか行った時に「ぼくも温暖化に興味があって、ひやっしーみたいになりたい!」という生徒や「環境問題に興味を持って欲しくてひやっしーの本を子どもたちに薦めています!」みたいな先生に出会ったら、なんと言っていいかめちゃ困るな…
— 汚ディーン@山岳環境研究者 (@gl_odean) June 13, 2024
えー、いや、どうなんだろう。そんなに困るかな。「本当のこと」を、言葉を選んではっきり言えば、小学生相手でも伝わるんじゃないかな、と思います。
- 「ひやっしー」は、部屋の中の二酸化炭素を減らして快適にする装置。
- 「ひやっしー」を動かすと、部屋の中で減らした以上の二酸化炭素を部屋の外で出すことになる。自分の部屋は快適になるが、地球全体で見れば、二酸化炭素を逆に増やしている。
- つまり、「ひやっしー」は、地球温暖化や環境問題の解決には全くつながらない。
- 「ひやっしー」を開発した人は、上の 3. に気づかせないようにうまく言いくるめるのがとてもうまい。特に、あまり科学の知識のない人は簡単に言いくるめられてしまい、「ひやっしー」が地球温暖化の解決につながっている、と誤解してしまう。
- しかし、これは、長い目でみると社会の損失でしかない。
- 温暖化や環境問題はとても複雑で、理解するには時間と手間がかかる。でも、「わかりやすい」「親しみやすい」から「ひやっしー」の本を読むのでは、言いくるめられるだけで、逆に問題の解決から遠ざかってしまう。
- 大事なのはとにかく地道に勉強することです。勉強することによって、いろいろな物事について「なぜそうなっているのか」を考え抜く「頭の体力」をつけよう。これこそが、今の日本に必要なものです。
本当は 5. と 6. の間で「一見科学的・合理的であるかのように見えて、実はそうじゃないもの」が「見るからに怪しいもの」よりもタチが悪い、という説明をしたいところですが、これは小学生相手ではちょっと難しいでしょう。理解力が十分でないと、「本当に科学的・合理的であるもの」を忌避する方向に行きがちです。
「地道に勉強する」という結論は、子供達や、今の若手の先生方には「受けない」かもしれません。でも、これはとても大事なことです。「受けなく」ても、言い続けないといけないと思います。私も情報発信頑張ります。
同日追記:「何かあったのかな」と思っていたら、名古屋市(およびその他の自治体)の小学校向けの推薦図書にひやっしー氏の本が入っているそうです。これはアカン。この本は子供には読ませないように、ぜひぜひご注意ください。岩崎書店には申し訳ないけど、こんな商売してたらダメだよ。