『安倍晋三回顧録』が出版された。その中で財務省の力について言及している点や、ロシアのプーチン大統領、トランプ前米大統領、中国の習近平国家主席らとの外交に関する話などが話題になっている。
この本を読んでまず思ったのは、やはり安倍さんは金融政策を完璧に理解していたことだ。
「2%の物価上昇率の目標は、インフレ・ターゲットと呼ばれましたが、最大の目的は雇用の改善です。(中略)完全雇用というのは、国によって違いはありますが、大体、完全失業率で2・5%以下です。完全雇用を達成していれば、物価上昇率が1%でも問題はなかったのです」と述べている。
財務省との闘いも相当なものだった。本書中、「財務省」という言葉が71回も出てくる。「経産省内閣」といわれたのに、秘書官だった今井尚哉氏の28回をはるかに上回っている。
「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」という一節を設けて、10%への消費増税を2度見送った際に、財務省がかなりえげつない抵抗を行ったことが書かれている。
しかし、安倍さんは、財務省の抵抗をはねのけ、コロナ対策を増税なしで行った。
「財務省の発信があまりにも強くて、多くの人が勘違いしていますが、様々なコロナ対策のために国債を発行しても、孫や子に借金を回しているわけではありません。日本銀行が国債を全部買い取っているのです。日本銀行は国の子会社のような存在ですから、問題ないのです。信用が高いことが条件ですけどね」