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バスケットボール3人制(3x3、スリー・エックス・スリー)のパリ五輪予選が4~5月に各地で開かれ、日本は5人制に続いて男女代表が切符の獲得を目指す。攻守が激しく入れ替わるスピード感などが若者の人気を集め、日本では3人制で力を磨いた選手が5人制代表でも活躍している。(井上敬雄、佐々木想)
五輪予選は宇都宮で
3月下旬のアジアカップ(シンガポール)で日本は男女ともベスト8だった。男子は気温30度超と酷暑の屋外コートで行われた準々決勝で、イランに延長の末に12―14で敗退。ただ、東京五輪代表の保岡龍斗(Bリーグ秋田)が3試合22得点、1試合平均7・3点と出場選手中3位の成績で、トーマス・ケネディ(Bリーグ茨城)も19得点と存在感を示した。保岡は「五輪予選に向けて緊張感を高められた」と話し、ケネディも「(大会を通じてチーム内の)コミュニケーションが良くなった」と収穫を強調した。
3人制はコートの大きさが5人制の約半分でショットクロック(シュートを打つまでの制限時間)も5人制の半分の12秒。多少の身体接触ではファウルが取られにくいこともあり、攻守の切り替えが激しくスリリングな展開になる。3人制チームでも活躍する保岡は「10分1本勝負でシュート1本でガラッと変わったり、5人制の終盤の時間帯のような緊張感が続くこともある」と話す。
3人制が初めて実施された2021年東京五輪は8チームで争われたが日本は男女ともメダルには届かなかった。現在の世界ランキングは男子15位、女子10位と世界のトップを目指す立ち位置で、コンコルド広場で行われるパリ五輪に向け予選は厳しい戦いが予想される。3人制ではアーク(5人制の3ポイントライン)の内側の得点が1点で外からは2点。試合時間が10分と短いこともあり、「2点の威力がすごく大きい」と保岡は言う。女子の長谷川誠ヘッドコーチ(HC)は日本の戦い方について、「1メートル90超の選手もいる海外勢にインサイド勝負では勝てない。外からのシュート中心の攻撃になる」と説明。アジアカップでも体勢を崩しながら2点シュートを放つ場面が目を引いた。
日本の男女が出場する予選は5月3~5日に宇都宮で行われる。ホームの利点を生かせるここで五輪行きを決めたいところだ。
富永啓生も出場
3人制の東京五輪日本代表で大会後に5人制代表の主力に定着した若手もいる。
代表格は昨夏、沖縄などで開催された5人制男子のワールドカップ(W杯)で日本の五輪出場権獲得に貢献した富永啓生(米ネブラスカ大)。3人制では20歳で東京大会の大舞台を経験した富永は、W杯では大事な場面で3点シュートを沈めるなど主力としてチームをリードした。
女子では当時21歳の山本麻衣(トヨタ自動車)と22歳の馬瓜ステファニー(エストゥディアンテス)が3人制で東京五輪に出場。2人は今年2月の5人制女子の五輪予選では終盤の勝負どころで攻守にわたって活躍するなどチームに不可欠な存在となっている。
3人制では5人制以上に大柄な外国選手とのマッチアップが多く、個々の選手の止める技術や守備能力の強化につながる。またコーチはベンチ入りできず、交代を含め、コート内の選手自身が戦況を読んで判断する力も養われるという。
長谷川HCは「10分間で描いたプランができない時に修正できるか、逃げ切る時、負けている時にどうカードを切るかも自分たちで判断する。プレーヤーでありながらコーチとしての力も身につくためバスケットIQは格段に上がる」と話す。
3人制で得たものを5人制でのプレーのレベル向上やチームのスケールアップにつなげる好循環が今後も続けば、日本のバスケにとってのプラス面は計り知れない。