コロナワクチンでよく聞く「RNA」…種類は色々、「tRNA」で世界初に挑む研究者

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編集委員 増満浩志

 科学の用語は、しばしば「難しい」と敬遠されてしまい、新聞でも書きにくいことが多い。かと思うと、いつの間にか「市民権」を得て拡大することもある。2020年に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が始まって以降、まず「PCR」という言葉が紙面に氾濫した。その後、ワクチンの普及とともに、「RNA」も頻出語となってきた。

 体内で働く様々なRNA(リボ核酸)のうち、有名になったのは新型ワクチンの主成分となっている「メッセンジャーRNA」(mRNA)だが、他のタイプのRNAについても魅力的な研究が進んでおり、日陰の身にしておくにはもったいない。「トランスファーRNA」(tRNA)というRNAについて、世界初の技術に挑む (ちゅう)(じょう)(たけ)() ・熊本大講師(39)の研究を紹介する。

遺伝情報をアミノ酸へ「翻訳」するtRNA

 まず、体内でたんぱく質が作られる工程を説明しておこう。

 たんぱく質は、アミノ酸という比較的小さい分子が一列につながってできる。その材料となるアミノ酸は20種類あり、どれをどういう順番でつなげるかの設計図が、細胞核の中のDNA(デオキシリボ核酸)に収められている。mRNAは、設計図の情報をコピーして、細胞核の外にあるたんぱく質製造工場「リボソーム」へ運ぶ。

 DNAやmRNAは、設計図の情報を「遺伝暗号」という仕組みで記録している。4種類の「塩基」という化学成分が分子内に並び、3個1組の配列(コドン)でアミノ酸一つを示す。

 この暗号を、実際のアミノ酸配列へ「翻訳」するのが、tRNAの役割だ。「塩基がC(シトシン)・A(アデニン)・G(グアニン)と並んでいるから、アミノ酸はグルタミン」「U(ウラシル)・G・Gだからトリプトファン」などと、約200種類のtRNAが分担してmRNAの情報を読み取り、該当するアミノ酸をたんぱく質製造ラインへ投入していく。

 こうした製造工程なので、DNAの設計図に問題がある場合だけでなく、tRNAの不全によっても、たんぱく質が正常に作られなくなり、障害や病気につながる。近年、DNAの設計図は「ゲノム編集」という技術によって改変も可能になってきたが、tRNAの不全を修正する技術はまだない。中條さんは「その技術を実現したい」と意気込む。

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3993542 0 挑む―科学の現場から 2023/04/12 10:00:00 2024/02/15 14:37:02 /media/2023/04/20230410-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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