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多重レポーター遺伝子ノックインマウスの解析に適した多蛍光検出システム
澤 新一郎 氏 (北海道大学遺伝子病制御研究所感染病態分野 准教授)
※第1回 Attune NxT Acoustic Focusing Cytometer 無料貸出プログラム当選者
リンパ節形成過程の解明を目指し、2016年10月に北海道大学で免疫組織の発生機構を研究する新規グループを立ち上げた澤新一郎氏。これまで自然リンパ球の一つであるLymphoid Tissue inducer (LTi)細胞の最終分化にRANKL-RANKシグナルが重要であることなど、リンパ節形成の鍵となる分子機構を精力的に追ってきました。「間葉系ストローマ細胞と自然リンパ球の相互作用はリンパ節の発生初期に必須のステップですが、マイナーポピュレーションであるこれらの細胞を解析するには、レポーターマウスと、高感度でパワフルなフローサイトメーターが欠かせません」と澤氏は話します。
リンパ節の「種(タネ)」を突き止める
澤氏の大きなテーマの一つは「免疫の場」であるリンパ節がいつ、いかにして形成されるかということ。哺乳類では胎児期に間葉系ストローマ細胞と自然リンパ球がインタラクションすることでリンパ節形成が始まります。自然リンパ球についてはこれまで、優れた知見が蓄積されてきており、澤氏いわく「役者が分かってきては いますが、一方、その相手となる間葉系ストロマ細胞の詳細は未だ明らかではありません」澤氏は間葉系ストローマ細胞の明らかな特徴や挙動の解析を通じて「これこそがまさにリンパ節を作る種のような細胞」であると明快に理解することを目指しています。「全身の各リンパ節は時空間的制御を受けて独立に形成されますが、すべてに共通する本質的イベントが間葉系ストローマ細胞と自然リンパ球の『出会い』です。これをよく理解し再現することが可能になれば、例えば人工リンパ節の実現も不可能ではありません」。
ゲノム編集も活用し、わずかな細胞集団を見極める
小さな胎児期のリンパ節形成を観察する場合、免疫組織化学的な解析と両輪で、マイナーポピュレーションを定量する必要があります。「自然リンパ球や間葉系ストローマ細胞は、T細胞やB細胞と異なり、明確な細胞表面マーカーがありません。そのため特徴的な転写因子やサイトカインを染色する必要があります。私たちはこれまで、間葉系ストローマ細胞にRANKL(Receptor activator of NFkB ligand)がないとリンパ節形成が起こらないことを明らかにしてきました。そこでRANKLプロモーターの下流にCreをコードするマウスを作製し、組織中でRANKL発現細胞を蛍光タンパク質で特異的に検出できる系を確立しています」と話します。しかしRANKL性の間葉系ストローマ細胞は0.05%に満たないマイナーポピュレーションであり、これを感度よく検出することが絶対的に必要でした。
「今回、Attune NxT Acoustic Focusing Cytometerでレポーターマウスを解析した結果、4色の蛍光タンパク質と約10種類の蛍光色素を高感度に検出できることを確認しました。また実際に使ってみてアコースティックフォーカシングの便利さを実感しました。流速を上げても液詰まりしにくく、大量のシース液が必要ありません。初期投資だけでなくランニングコストが抑えられる点がいいですね。ゲノム編集技術の進歩で遺伝子改変マウスの作製が簡便化され、解析の効率化がこれまで以上に要求されます。そんな新しい時代の免疫学研究にぴったりのフローサイトメーターだと思いました。」
澤氏はさらに多くのドライバーマウス、レポーターマウスを作製し、まだ誰も知らないリンパ節形成のメカニズム解明を目指して研究を進めます。
[図.マウス小腸からの自然リンパ球解析]
マウス小腸サンプルのリンパ球集団(左)における自然リンパ球(ILC)の解析データ(右)。RORは、核内受容体Retinoic acid orphan receptor (ROR)ファミリーの一つであり、ILC3で発現するマーカー。Attune NxTを使用。
ストレスのないマルチカラー解析を実現
Attune NxT Flow Cytometer
Invitrogen™ Attune™ NxT Flow Cytometerは、最大4レーザーで14色検出可能なフローサイトメーターです。アコースティックフォーカシング技術により高流量で測定でき、レアイベントや全血サンプルを感度よく解析できます。コンパクトサイズで、稼働音も気になりません。
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ライフサイエンス情報誌「NEXT」
当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2017年5月号からの抜粋です。
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