比較Ct法の実践編、今回は予備実験でおこなう、PCR増幅効率の確認がテーマです。
比較Ct法では、ターゲット遺伝子と内在性コントロール遺伝子のPCR効率がほぼ等しいという条件が必須であることは、第13回,第14回で解説しました。つまり、先ずやるべきは、自分がつかうプライマーの増幅効率の確認です。ユーザーブリテン#2という小冊子(英文)に解析方法が記載されているので、みてみましょう(図)。
- テンプレートの希釈系列を作成
- ターゲット遺伝子(例えばc-myc)と内在性コントロール遺伝子(例えばGAPDH)のCt値をリアルタイムPCRシステムで測定し、⊿Ct値を算出する
- 横軸の濃度のLog、縦軸⊿Ctをプロットし(下図)、近似式を求める
- 傾きが0.1より小さいとき(図例は0.0492)場合、2つの遺伝子のPCR効率はほぼ等しいと考える
ここでもし、PCR効率の等しいプライマーが得られない場合は、プライマーを再設計するか、増幅効率を反映して定量できる検量線法を採用する必要があります。
ちょっと脱線しますが、イリノイ大学のBen-Shaharらは、比較Ct法を使用してforaging(for)遺伝子の発現量の変化がミツバチの自然な行動に影響を及ぼすことを報告しています(2002年、Science 誌)。for遺伝子は、多くのシグナル伝達経路で重要な役割を担うグアノシン 3′,5′-一リン酸依存性プロテインキナーゼをコードしています。ミツバチがある年齢に達し、for遺伝子の発現量が増加することで、巣内作業から採蜜作業へ行動を変化するという内容です。Ben-Shaharらは、様々な条件下における遺伝子の発現量の変化を比較Ct法で調べています(1)。前述のユーザーブリテン#2も、この論文のReferencesに記載されています。機会がありましたら、ぜひご覧下さい。
TS白神
次回は、比較Ct法の実践編の最終回。どうしたら便利な比較Ct法をつかえるのか、さらに掘り下げてみていきます。お楽しみに!
参考文献
(1) Influence of gene action across different time scales on behavior. Ben-Shahar Y, Robichon A, Sokolowski MB, Robinson GE. Science. 2002 Apr 26;296(5568):636.
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