バイオバンクを評価する基準の1つとして、バイオバンクに保管されている試料数や研究に利活用されている試料数があげられますが、それらの数値だけでバイオバンクそのものや試料の価値を計るのはあまりに短絡的過ぎではないでしょうか。
若き日のチャールズ・ダーウィンが探検の旅から持ち帰った化石や動植物の試料が約200年たった今でもロンドンにある自然史博物館に保管されていることは何を意味するのか。バイオバンクに保管されている試料の価値を考えるときの参考になるかもしれません。
そこで今回は、バイオバンクに保管されている試料の本当の価値とはなにか?ついて、考えたいと思います。
▼こんな方におすすめです!
- バイオバンクの管理・運営を検討している方、興味のある方
- バイオバンクの利活用を検討している方、興味のある方
- 効率的かつ高品質な試料の保管を検討している方、興味のある方
このブログ記事は、こちらのブログ記事(英語)をもとに作成しています。
RD-Connect Projectの一例
生体試料の保管に関する近年の例をひとつあげます。2012年から2018年にかけて欧州のRD-Connect Project1)で収集された希少疾患の試料はEuroBioBankによって目録整備されました。実際に、ここでは研究者が非感染性疾患(Non-Communicable Diseases;NCDs)を研究するための、血清や組織、さまざまな細胞のユニークな試料が保管されています。
しかしそのなかで、約2~3万人に1人に発生するとされている遺伝子疾患のひとつである骨形成不全症(Osteogenesis Imperfecta;OI)2)に関しては、関連する臨床情報と共に保管されている試料はわずか385検体しかありません。試料数が少ないからと言って、骨形成不全症の試料や研究プロジェクトの価値は低いのでしょうか?いいえ、誰もそうは思わないでしょう。骨形成不全症のような希少疾患の背後にある分子メカニズムの多くはまだ解明されていません。生体試料を用いた研究によってのみ得ることができる成果はとても多く、希少疾患の生体試料には計り知れないほど豊富な情報が詰まっていると考えられます。
未来の研究のために
分子生物学的研究やデータサイエンスにおける解析技術は日進月歩で発展し続けています。そのため今は保管されている試料を有効に使えなくても、将来は新しい技術や製品によりそれまで解明できなかった疾患の分子メカニズムに近づくことができるかもしれません。
未来の研究者のために、今できることがあります。今ある試料、特に希少疾患の試料など替えがきかない、数多く入手できない試料を、将来の研究などに有効活用されることに備え、可能な限り最高の質を維持したまま、適切な条件下で監視し、保管することが極めて重要と考えられます。
試料の品質を維持するための提案
当社は、試料管理のソリューションのひとつとして、試料を適切な条件下で長期間保管するために設計されたノンフロン冷媒を採用した超低温フリーザーと2次元(2D)コード付きチューブを提供しています。
Thermo Scientific™ TSXシリーズ ノンフロン 超低温フリーザーは、わずかな動力で最適な冷凍能力を発揮するため、V-drive制御によって庫内外の状況に応じてコンプレッサーの回転数をコントロールし、CO2を削減することで環境に優しく、かつ省エネ効果(弊社従来機比較で約50%の消費電力削減)が期待できます。また、庫内温度やイベントログを最長15年保管するなどのデータマネジメント機能を装備しており、試料を長期間安全に保管できます。
そして、試料の管理面においては試料保存容器の底面に2Dコードが刻印(レーザーエッチング)されたThermo Scientific™ Matrix™ 2DチューブおよびThermo Scientific™ Nunc™ ユニバーサルチューブは、2Dコードにより試料に付帯する情報やチューブの保管位置情報の管理と追跡を確実にします。
これらの製品は、未来の研究者が安心して試料を使用できる環境作りの一助となるでしょう。
まとめ
多くの研究者は、バイオバンクで保管されている試料の真価は、試料の数ではなく、その試料の特性や希少性にあることを理解しています。その価値は未来の研究者によって認識されることでしょう。当社は、未来に見いだされるだろう試料の新たな価値、そして疾患メカニズム解明のための研究の一助になることを願い、その先駆者になれることを誇りに思っています。
豊富な製品群、幅広い販売ネットワークを持つ当社では、お客さまのバイオバンクプロジェクトの立ち上げや拡張、改良などを総合的にサポートします。経験豊富なスタッフが、消耗品から低温保存システム、試料管理ソフトまで含めた幅広い提案を行います。
シンプルな試料管理システムから大規模プロジェクトまで、まずはご相談ください。
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注釈および参考文献
- RD-Connect Project:第7次欧州研究開発フレームワーク計画(FP7)の資金援助で立ち上げられた希少疾患(Rare Diseases;RD)研究ためにEU内外のパートナーを束ねるグローバルインフラ整備のプロジェクト
- 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター. “骨形成不全症(指定難病274)”. 難病情報センター. 2015-07. https://www.nanbyou.or.jp/entry/4568, (参照 2023-03-23)
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