その物件で大丈夫? プロパン物件に引っ越した人たちの後悔と対策法
転居先で都市ガスとプロパンガスの違いによる想定外の支出に悩まされる事例が跡を絶ちません。プロパンガス物件に引っ越して後悔したという人たちの声をご紹介しつつ、物件選びの段階でしっかりと考慮しておくべきガス代の知識を解説いたします。
先に知っておきたかった! プロパンガス物件に引っ越した人たちの衝撃体験
- ガス代が倍に跳ね上がって面食らった
- 保証金1万円とられた
- 風呂に浸かれない
- ガスを使うのが怖い
都市ガス物件からプロパンガス物件に引っ越した人たちが、請求書やプロパンガス特有の高額な保証金に驚いてしまったというのがこれらのケース。家賃を上げてでも都市ガス物件にすればよかったという話もあるほど、プロパンガスが高額だというのです。
それでも、都市ガス物件からプロパンガス物件に引っ越しただけで、ガス代にそこまでの差が出るのでしょうか? 実際に比較したところ、同じ量のガスを使っていてもプロパンガスに変わればガス代が倍以上になってしまうことが確認できました。
プロパンガス代は都市ガスの2倍以上に?! ガス代を比べた結果……!
条件:神奈川県で比較
ガス使用量 | 5㎥ | 10㎥ | 20㎥ |
---|---|---|---|
プロパンガス(税込)※1 | ¥4,240 | ¥6,685 | ¥11,501 |
都市ガス(税込)※2 | ¥1,459 | ¥2,172 | ¥3,598 |
差額 | ¥2,782 | ¥4,513 | ¥7,903 |
※1 東京ガスエリア内の神奈川県某地域のプロパンガス価格平均値(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター2017年6月調査)
※2 東京ガスの一般契約料金(東京地区等)の基準単価で計算
ガスの使用量が同じであれば、プロパンガスの請求額は都市ガスに比べて約2〜3倍にもなることがわかりました。
なお、今回の計算に使用したプロパンガスの単価は平均的なものであり、実際の単価は契約先のプロパンガス会社などによって異なります。
適正料金よりも高額なプロパンガスを契約している物件に引っ越した場合、毎月のガス代は上記の計算結果よりも高額になります。
また、基本的にプロパンガスは都市ガスの約2倍の熱量を持つとされています。しかし、実際に使う火力はガス機器の性能によりますので、プロパンガスだから高火力が使えると体感できるものではありません。都市ガスよりも少ない量で十分なエネルギーを得られる利点はあるものの、プロパンガスの料金は都市ガスの約2倍以上になります。結果として、プロパンガスの方が割高な傾向に変わりはありません。
そして、都市ガスの単価は都市ガス会社・提供エリアによって固定されていますが、プロパンガスの単価はプロパンガス会社が自由に決められます。そして、プロパンガスは基本的に都市ガスよりも高額なので、入居後の請求額に衝撃を受けることになるのです。
都市ガスとプロパンガスの違いは大きい
都市ガスとプロパンガスは、料金の仕組みから供給方法まで大きく異なります。ガス代に直結するものだけで、これだけの違いがあるのです。
都市ガスの特徴 | プロパンガスの特徴 |
---|---|
・公共料金なので会社の独断で値付けできない ・ガスの単価が公表されており透明性の高い契約が結べる ・ガスの供給にガス管を使うため導入費用は高いものの運用コストはかからない ・ガス自由化で安いプランやガス会社が出現 ※地域により異なる |
・自由料金なので会社が独断で値上げ/値下げできる ・ガスの単価を非公表にする会社が多く、高額契約に気づきにくい ・ガスボンベを宅配してガスを供給するため運用コストがかかる ・ガス会社や契約内容は自由に変えられる ※ただし制限が多い |
同じガス料金プランを契約する家庭同士なら、同じ単価でガスを使っているのが当然です。しかし、プロパンガスは同一プランであっても数種類の料金表を用意し、世帯によって使い分けるケースがあるのです。
戸建てよりも集合住宅のほうがプロパンガス料金が高い
一般的に集合住宅は、戸建てよりもプロパンガスの単価が割高です。理由は、新築時のプロパンガス導入にかかる初期費用をマンションあるいはアパートのオーナーではなくプロパンガス会社が負担しているため。
これにより、オーナーは新築にかかるコストを回避して家賃を安く設定し、お得な物件であるように見せることができます。そして、プロパンガス会社は設備導入費用を入居者のプロパンガス料金に上乗せし、回収していきます。
悪質なプロパンガス会社は、初期費用を回収した後も上乗せした分の値下げをせずに、ずっと高額な料金でガスを販売し続けます。オーナーが遠隔地に住んでいる、あるいは特別な料金プランを適用されていれば、入居者が高額なガス代を請求され続けていても気づきにくいでしょう。
つまり、集合住宅はプロパンガス料金が高額になりやすい仕組みになっているのです。
特に新築・築浅で家賃が安い、あるいは都市ガスのエリア外で立地条件が良好な物件はプロパンガス料金が高額になる傾向にあります。
ガス開栓時に1万円支払うのが普通?! 保証金について
都市ガス物件で暮らしてきた人には馴染みが薄いですが、プロパンガスの開栓時に保証金を請求されることがあります。特に賃貸の集合住宅は、1万円~2万円ほどの保証金を求められるのが一般的です。
保証金とは、ガス代の未納分が回収できないことを防ぐためにガス会社が設けた独自のルールで、法律で定められているものではありません。
退去時にガス料金の未納がなければ全額返金されますが、保証金の預り証を紛失すると返してもらえない可能性があります。
保証金の預け入れを回避する方法やトラブルについて、こちらの記事で詳しく解説しています。
プロパンガスの保証金や返金の仕組みはどうなってるの?
プロパン物件にするとガスを使うのが怖くなる! 解決方法は
都市ガス物件からプロパンガス物件に引っ越すと毎月のガス代が高額になりやすい、引っ越し直後に保証金と称した支出が発生することが分かりました。立地や家賃にそれほどの差がないなら、都市ガス物件を選択したほうが光熱費を長期的に節約しやすいでしょう。
プロパンガス物件しか選択肢がない場合には、これらの方法でガス代を節約できます。
- お風呂に使うガスを減らす
- 料理に使うガスを減らす
- 暖房機器は電化製品を選択する
- プロパンガス会社を乗り換える
ガスを多く使うのは、料理とお風呂です。お風呂の給湯器やガスコンロの代替品として使える小型の機器なら、工事が要らないので賃貸物件でも導入できます。
高額な契約を結ぶプロパンガス会社から、適正価格で契約してくれる会社に乗り換えることも可能です。ただし、賃貸の集合住宅なら大家さんなどに働きかけなければならないため、個人での乗り換えは実質的に不可能とも言えます。
都市ガスに乗り換えるのはガス管を引き込む工事に多額の費用がかかるので、個人で行うのは現実的とは言えません。
物件選びは立地や家賃だけではなく、契約するガスが都市ガスか、プロパンガスかも合わせてチェックしてください。