アジャイル開発者からみた「納品のない受託開発」の疑問を解消!?〜アジャイルラジオで倉貫が語った本音【前編】
ウェブとポッドキャストで配信中の、 IT系エンジニア応援番組!「アジャイルラジオ」 の記念すべき 第100回目(2014年の10月15日に配信) のゲストとして、弊社代表の倉貫を呼んで頂き、ラジオらしくざっくばらんにお話させて頂きました。そこで今回は、アジャイルラジオさんから特別に許可を得て、記事として書き起こしました。
パーソナリティーの山根さん、西さんは関西系のベテランのアジャイル開発者です。そんなお二人からの鋭い質問とツッコミに、どう倉貫が答えていくのか、ぜひ楽しんでご覧ください。記事の前編では「納品のない受託開発」とギルドの仕組みについて、後編では経営の視点からビジョンやお客様との関係について、語っています。
「納品のない受託開発」って長くない?
山根氏
アジャイルラジオの記念すべき100回目!ということで、今日はゲストを呼んでおります。ソニックガーデンの倉貫さんに来ていただきました〜。今日は倉貫さんをまじえて、主に「納品のない受託開発」の話などができればな、と思っています。
西氏
そうですね。じっくりお伺いしたいな〜と思っています。
倉貫氏
よろしくお願いします〜。
山根氏
今年、本を出版されたんですね。
倉貫氏
はい、「納品のない受託開発」というのをもう3年やってきて、かなり実績もできたので、ここらで1つまとめようということで本を書かせていただきました。
倉貫氏
会社もちょうど3期経ったところで、その記念も兼ねて今年の6月に
『「納品」をなくせばうまくいく』
という本を書かせていただいて、日本実業出版社さんから発売になりました。ありがたいことに、発売1カ月ちょっとで増刷ということになりました。
西氏
おお、すごい!
山根氏
すごいですね〜。
倉貫氏
ビジネス書の枠でも買っていただくケースがあるんですよ。
山根氏
ソフトウェアだけじゃなくて、もうビジネス書として認知されているんですか。
倉貫氏
そうですね。なので、ITに関係ない方にも読んでいただいています。
山根氏
そういえば、「納品のない受託開発」って言葉が長いじゃないですか。
倉貫氏
長いですね(笑)。
山根氏
何かこの辺の略称ってあるんですか。
倉貫氏
もともと「納品のない受託開発」って考えたときは、いろんな名前を考えたんです。ちょっと横文字のかっこいい名前、例えば、最初考えたのはクラウドをベースにカスタマイズして提供するので「カスタムクラウド」とか。色々考えたんですけど、それを言っても、まず○○とは…みたいな説明になってしまう。
山根氏
まぁ、分からないですよね(笑)。
倉貫氏
なので、最初から分かりやすい名前で言ったほうがいいかなと考えまして。
山根氏
なるほど。特に短くする必要もないかなという感じですか。
倉貫氏
そうですね〜。しゃべるときに、社内やお客さんに何回も言うこともないですし。
とっても気になるアノ話
山根氏
前から「納品のない受託開発」はすごく良いなとは思っていたんです。だけど、この夏に永和システムの木下さんの価値創造契約のプレゼンテーションがちょっと衝撃的で。
山根氏
価値創造契約はあまりうまくいってなかったというようなプレゼンを発表されていましたよね。端から見ていると、永和さんの取り組みと「納品のない受託開発」ってかなり似ています。それに永和さんのほうが1年ぐらい先行していた分プレスは打たれていたと思うんですが。今後ソニックガーデンさんで同じような問題が起こったりするのでしょうか。
倉貫氏
どうでしょうね。大前提としてソニックガーデンのもつポリシーのうちの1つが、「競合他社を見ずにお客さんを見ましょう」という考え方があります。
倉貫氏
ソニックガーデンにとっての競合がもしいるとしても、競合のことを見るよりもお客さんのことをちゃんと見ようしています。なので、あまり他社が何をしているとか、プレス出してどうこうとか、あまり気にしないです。
倉貫氏
実際のところ、私たちのビジネスはうまくいっていて、広告宣伝費はゼロ円、営業担当者はゼロ人で、コンバ―ジョン率はたぶん80%を超えているんです。
山根氏
それはお客さんの方から来ていただけるということでしょうか?
倉貫氏
そうですね。
山根氏
それは相談とかって感じなんですか?
倉貫氏
はい。
山根氏
お客さんは何をもって倉貫さんの会社のことを知るんですか?
倉貫氏
普通に口コミで知っていただくというのもありますし、私のブログを通じて知っていただくということもある感じです。我々の方からアクションするような「アウトバウンド」って言うんですけど、アウトバウンドのマーケティングはしたことがないので、100%インバウンドでやらせていただいています。
山根氏
失礼ですが、今社員さんって何人ぐらいいらっしゃるんですか?
倉貫氏
私を入れて11人ですね。
山根氏
11人ですよね。僕も一応社員はいないながら会社をやっていて一番怖いのって、社員も含めて、食っていけるだけのビジネスを注文、受託してこないといけないという事なんですよね。それを考えると営業しないという勇気って結構すごいなって思うんです。その辺り、いけるという自信があったということですか。
倉貫氏
そうですね。自信というか、ダメだったら別のやり方をしようとは思っていました。そうして改善していくのが経営なので。
西氏
営業するまでもなかったってことですね?
倉貫氏
結果としては、そうですね。ただ戦略としては、アウトバウンドのやり方はしないという答えになったんです。
山根氏
ソニックガーデンさんが進めている「納品のない受託開発」のやり方は本質的に永和さんとは違うという感覚でいいんですか。
倉貫氏
そうですね。そもそも業種が違うと思います。
「納品のない受託開発」って何だろう?
山根氏
「納品のない受託開発」というのを、分かりやすく言うと、どうなりますか?
倉貫氏
「納品のない受託開発」をすごく簡単にお話をすると、これまでは納品をしてお仕事をするビジネスって、要件定義をして決めた分を最後まで作りきって納めて、検収してもらってお金をもらうというビジネスモデルなんです。それをすると、開発側と発注側でゴールが分かれてしまうわけです。
山根氏
そうですよね。
倉貫氏
発注側は、本当は別にシステムをもらって嬉しいかというと、システムをもらっても別にそのシステムが手に入ってお金はキャッシュアウトするだけで何の価値も生んでなかったら意味がないですよね。
山根氏
そうですね。システムを使って、やっと初めてコスト削減とかですもんね。
倉貫氏
なので、本当はシステムが動き出してからがスタートなんだけど、開発側はどうしても納品しないとお金がもらえないので何とか納品しようとします。
倉貫氏
なので、そこがゴールになってしまう。いろんな会社さんが掛け声で「お客さんのために頑張りましょう」とか「いいものを作りましょう」とは言うんだけど、最終的な優先順位がギリギリのところに来たら、どっちを優先するかというと・・・
山根氏
納品になっちゃいますよね。
倉貫氏
そうなってしまうというのは、やっぱりお客さんにとってもあまり良くないし、開発側にとっても、エンジニアとしてはやっぱり「いいものを作りたい」って思っているところが実現できないですよね。
山根氏
そうですね。
倉貫氏
そこの境目がやっぱりいろんな問題を生んでいるなと思ったんです。その境目をなくしてしまえば一番うまくいくんじゃないかな、と。つまり、「納品」というのをなくせばうまくいくんじゃないかと考えて、納品をなくすためには何をしなきゃいけないかということなんです。
倉貫氏
納品がないということで見積もりはしないので、じゃあどうしようかということで、まず月額定額にしました。月額定額の中で、開発と運用とかを分けるんではなくて、それをずっとやっていく。お客さんの事業が続く限り一緒にやっていけばいいじゃないかと。
倉貫氏
我々はチームで対応するんですけど、顧問という形でお客様担当はつけます。そのメンバがお客様をずっと面倒を見ます。ここはよく勘違いされるケースもあるんですけど、人がついて月額定額にすると、技術者の派遣とかSES(System Engineering Serviceの略)の仕事と変わんないじゃないかと思われがちなんですが、違います。
山根氏
違うんですか。
倉貫氏
派遣とかSESと違うところは、時間でお仕事をしないことです。これも考え方なんですけど、エンジニアの仕事って成果を出してなんぼなんです。時間で働くと、パソコンの前に座っていればお金が入ってきてしまいますよね。それはお客さんにとってもよくない。
倉貫氏
ならば、成果で契約をしましょうと。エンジニアがどれだけ働いているのか、どれだけ大変なのか、どれだけ楽なのかは、お客さんにとってあまり関係ない話なので。
山根氏
関係ないですよね。
倉貫氏
毎週毎月ちゃんと成果を出して、月額定額と成果で契約する。それが「納品のない受託開発」です。そうすると、結果としてお客さんのところに行って仕事もしなくてもいいのでリモート勤務・在宅勤務も実現できます。
山根氏
それって、ここまでこの1カ月分やりましたというのを報告するだけなんですかね。1カ月前に「今月はこれとこれとこれをやりましょう」というのは特にない?
倉貫氏
ないです。ただし、必ず僕らお客さんと毎週打ち合わせをするんですが、毎週の中では「来週まではこれぐらいやりましょう」という目安は決めます。
山根氏
見積もりじゃないですけど、1週間単位の計画は立ててはいるということですか。
倉貫氏
そうですね。「来週ぐらいまでなら、この機能とこの機能とこの機能ぐらいならできていますね」って。
山根氏
だから、計画レスではないという話ですよね。スクラムよりも短いんですよね。
倉貫氏
私たちの場合は、1週間ですね。
「納品のない受託開発」はお客さん的にどうなの?
山根氏
僕は結構お客さんの社内システムの開発が多いんです。どうしてもある時点で言ったお客さんのアイデアとかは、一旦それで開発してみましょう。開発して1年ぐらい経ったらフィードバックとか、いろいろ作りたいアイディアが溜まってくる時期があると思うんですけど、そういうときに月額定額って結構きつくないですか。
山根氏
反対に契約が切れたときに、社内向けシステムだとソニックガーデンさんのやり方を使っていくのはお客さん的にはすごく心配なのかなって思うんですけど。そこら辺はビジネスターゲットではないということですか。
倉貫氏
いや、社内向けシステムはあまり開発しませんが、外向けのサービスでも、今はこれからマーケティングに力を入れる時期とか、開発をちょっと止めてユーザーを増やす時期だというのはやっぱりあります。
倉貫氏
ここもよく誤解されがちなんですけど、そうしたときにどうするかって言うと、契約を切るんではなくて、契約の中でお休み期間というのを用意しています。なので、契約を切らずに、金額を下げて弱火で続けていくというのをやるんです。
山根氏
一応問合せがあったら答えるけども、みたいな形。
倉貫氏
そうです。打ち合わせも月に1回ぐらいは当然しますし。
山根氏
一旦保守に入って、お客さんのアイデアがまた湧いて来たら開発を再開させるということでしょうか。
倉貫氏
そうです。
山根氏
なるほど。僕らもシステムリリースした後は、保守は絶対に取りますから。
倉貫氏
なので、もう作るものないよってなったら、契約ストップではなくて、一旦ちょっと弱火にして、「じゃあ、その期間はビジネスを頑張ってください」と。「そろそろもう1度、お金ができたので次の機能を作りたい」って言われたら、復活をさせてまた開発を進めるということを柔軟にできます。これも、エンジニアを社員として雇ったりするよりも柔軟にやれるやり方だからですね。
「納品のない受託開発」の調子はどうか?
西氏
今の契約形態でお客様というか、問い合わせが結構あるみたいな話をされていましたね。実際どれぐらいの問い合わせの頻度があって、どれぐらい受注というか、契約の締結までいるんでしょうか。
倉貫氏
問い合わせは、多くて週に2〜3本くらいです。
西氏
すごいですね。
倉貫氏
残念ながら、すぐにお応えできないので、順番待ちしていただいてます。
西氏
なるほど。
倉貫氏
あとは、ご相談にいらしたからといって、全て仕事するわけでもないです。向いてない案件もありますので。
西氏
そうですよね。
山根氏
ギルドの総員って何人ぐらいいるんでしたっけ。
倉貫氏
私を入れて今社員が11名で、ギルドのメンバーがプラス2名ですね。
山根氏
社外メンバはまだ多くないですね。
倉貫氏
そうなんです。
山根氏
となると、結構、優先待ちが1年とかの高級レストラン並なんですね。
倉貫氏
1年まではいかないですけど、タイミングによっては3カ月ぐらい待っていただいたりはありますね。
山根氏
次のお客さんとかから相談を受けたとしても、その後「じゃあ、お願いします」ってなったときに人が足りなのですよね。
倉貫氏
なので、辛いのですが「無理です」とお断りしなければならないこともあります。
山根氏
既存のお客さんとかって契約期間って長いですか。それとも半年ぐらい。
倉貫氏
長いというかずっとです。契約が始まったらお客さんの会社が続く限りは、ずっと契約なので半年とかないですね。
山根氏
逆に言うと、過去の仕事が減っているわけではなくて、新規のお客さんが増えている。
倉貫氏
そうです。積み上げだけなので。なので、ギルドのメンバーか、社員が増えなければ本当に打ち止めです。
ギルドに入るためには?
山根氏
ギルドメンバーをたくさん採用しようということになると思うんですが、ギルドメンバーを決めるときとかってどんな形で決められていくんですか。
倉貫氏
ギルドのメンバーは、結局、最終的に社員と一緒に働くので、社員の採用プロセスとほぼ同じですね。なので我々が社員を入れるのに、応募が来てから平均して半年ぐらいかかるのと同じ位、ギルドの審査にも時間がかかります。
倉貫氏
今もギルド準備中の方は結構いて選考しています。「いいエンジニアを揃えています」というのが、ソニックガーデンの強みの1つでもあるので。
山根氏
僕らSIer側の悩みでもやっぱりいいエンジニアがいないというが悩みですね〜。ギルドには、どういう人が来るんですか?
倉貫氏
ソニックガーデンでやろうとしていることのビジョンに共感していただいた上で、ここで働くと働きやすいとか、自分の腕が磨けるとかというのを求めている方が応募してくるという感じが多いです。ギルドでは、フリーランスの方を主な対象にしています。
倉貫氏
採用プロセスとしては、まず最初にお問い合わせから始まります。Ruby on Railsを必ず使うので、Railsをやったことがなければ、その勉強をしていただきます。その為にRailsを勉強できる学習用のサイトを用意しているんです。
山根氏
最初に申し込むときに、Railsを知らないからダメだというわけではないってことですね。
倉貫氏
全然ないです。むしろ、Rails初めての人のほうが中途で入った人は多いんじゃないですかね。仕事でバリバリやっていましたという人は少なくて、我々が用意した学習用のサイトでRailsを実習した方が多いです。ちなみに、この学習サイトは頑張らないとクリアできないです。
倉貫氏
並行してプロフィールボードという、これも自分たちで作ったシステムで、その人の哲学とか考え方とか、働く姿勢を見ます。学歴とか職歴はあまり重視してないんです。私が用意した1問1答形式の質問がたくさん用意してあって、画面上で回答してもらいます。たくさん質問があるので回答を見るとその人の人柄がなんとなく分かるというようなシステムです。
倉貫氏
Railsの自習とプロフィールを埋めていただいたら初めて面談となります。面接に受かったら、次はトレーニングという期間になります。トレーニングでは「良いコードを書く」というのが目標です。「良いコード」を書けるまで師匠、ソニックガーデン社員ですが1人ずつ付いて、一緒に勉強していただく。その間に私との面接を何回かします。
倉貫氏
技術的にも大丈夫となったら、次は我々の会社で仕事を一部手伝っていただく。その人にとって副業でもいいですし、アルバイトでもいいです。仕事を手伝っていただきながら「納品のない受託開発」とはどういうものか、仕事のプロセスはどう進めるのかというところを学んでいただいて、OJT的にやっていってお互いいけそうだな、という様になったら、ようやく「合格」です。
山根氏
だったら、結構採用までに長いので、ある程度資金持っておく必要ありますね。
倉貫氏
いや、そこもよく勘違いされるんですけど、会社を辞めてからスタートじゃなくて「前の会社をソニックガーデンに入るギリギリまで続けてください」と言っている。
山根氏
そうなんですね。
倉貫氏
むしろ「辞めちゃダメ」って言ってます。よく「ソニックガーデンさんに入る覚悟を決めるために、前の会社辞めます」なんていう人がいるんだけど、そんなことを言う人はうちには入れないですよ。
倉貫氏
これもソニックガーデンのポリシーで、イチかバチかはしないというのがあります。転職って結構イチかバチかになっちゃうんですよね。
山根氏
そうですね。
倉貫氏
合わなかったらお互いすごく残念なことになるので。途中でこちらから落とすかもしれないし、本人から辞退したいと思うかもしれないから、最終的に決まるまでは前の会社を辞めないで続けて、という話ですね。戻れる場所があった上でチャレンジしたほうがいいなとは思っているので。
エンジニアのどこを見て採用する?
山根氏
顧問という形で一緒にパートナーシップをお客さんと結ぶということが書籍に書いてあったと思うんです。あれをやろうとすると、エンジニアにはIT知識だけじゃなくて業務ドメインの知識とかも必要になってくるのではないですか?
倉貫氏
そうですね。
山根氏
業務ドメインは、お客さんと二人三脚でやっていくしかないということですか?
倉貫氏
そうです。業務知識については、我々の場合は新規事業が多いので、新しく勉強するしかないですね。
山根氏
社内システムじゃないですもんね。
倉貫氏
社内システムの場合も、結局は新しく勉強するしかないと思います。この業界はそういうものだと思っているので。むしろ「インテリジェンス」って呼んでいるんですけど、新しいことでも勉強できる意欲があるかとか、地頭の良さを持っている人かというのを面接の中でチェックをするんです。
西氏
自信ないです(笑)。
山根氏
僕はいつもソニックガーデンギルドに入れるかなって思っているんです(笑)。
倉貫氏
採用基準は4つキーワードがあって、T・I・P・S、TIPSって言っていて。
倉貫氏
1つめ「T」はテクニック。テクニックは基本的にやっぱり技術の会社なので必要でしょうと。
倉貫氏
2つめ「I」はインテリジェンス。インテリジェンスが先ほどの業務知識にもなるかもしれないし、プロジェクトの進め方かもしれないし、お客さんによってやっぱり進め方が違ったり、満足するポイントが違ったりする中で、マニュアル通りに仕事をする人はソニックガーデンでは無理なんです。
山根氏
やっぱりフィーリングがありますからね。
倉貫氏
フィーリングというよりも、自分で考えられるってことがインテリジェンスですね。フリーランスでもやっていける人はたぶん技術とインテリジェンスの2つを持っている人だと思うんです。
倉貫氏
3つめ「P」はパーソナリティ。ソニックガーデンはフリーランスの集団ではなくて、チームや会社でやっている組織なので、助け合いができないといけない。なのでそういうパーソナリティを持っているかどうかというのが大事です。
山根氏
1人1社ずつくらい担当していると伺うとあまりチームには聞こえないんですが。
倉貫氏
それもよく誤解されるところです。「顧問」という表現をしているので、各自が勝手に仕事をしているんだろうと。
倉貫氏
もちろん細かくマネジメントをしているわけではないので、各自が各自で考えながら仕事はしますし、お客さんから見たときに顧問として担当します。そして、担当した人間が、一通りのことができるようになっています。ですが、そのエンジニアが全員が全員、全てのことが得意で、何でもかんでもスーパーなレベルかというとそうではないですね。
山根氏
そりゃそうでしょうね。
倉貫氏
基本の技術として、お客さんと話をするところから、設計、プログラミング、運用までの基本技術はできるけど、難しいインフラ設計をするといったらインフラの得意な人が必要になります。
山根氏
そうですね。
倉貫氏
使いやすいUIが得意な設計をできるという人もいれば、データベースのチューニングが得意って人もいます。それぞれやっぱり得意不得意があるので、お客さんの案件ごとに1人の担当者が担当としてフロントに立つけど、仕事としてはチームで助けあって対応しているんです。
倉貫氏
データベース設計やチューニングをするといったら、得意なメンバが出てきて一緒にやる。UI設計のところは別の人が出てきて一緒にやる、全部1人でやっているわけではないんです。お客さんから見ると、インフラのことはこの人に聞かなきゃいけない、画面のことはこの人に聞かなきゃいけないって別々の人にお願いするとなったら、それは逆に大変なので。
山根氏
面倒くさいですよね。
倉貫氏
なので「お客さんの顧問としてはこの人です。だけど、ソニックガーデン全体としてサポートしています」というのが「納品のない受託開発」の仕事の仕方です。
山根氏
それを聞いていると、スクラムとか、従来的な人のスケジューリングとかを考えているとすごく難しそうに聞こえるんですけど。例えば、今ソニックガーデンさんが契約されているお客さまが、みんなたまたま今の問題がDBボトルネックだってなったときに、パンクしちゃうじゃないですか。その人がボトルネックになって全体的に作業進捗を遅れないようにうまくスライスしてあげなきゃいけない人が必要ではないですか。
倉貫氏
そうですね。でも、そんなに集中することないです。それに大変だったら「大変だね」って言えばいいだけなのでね。みんなで頑張ればいいだけだと思うし、そのためのチームなんです。
山根氏
じゃあ最後の「S」。
倉貫氏
最後の「S」はスピードです。スピード感って、たぶん会社のカルチャーにすごく影響する部分だと思っているんです。大きな会社さんとか、金融系の会社さんだったら、やっぱりクオリティ重視でスピードが遅くてもいいとか、決裁の手順はどうするんだとかというスピード感ですよね。そこでソニックガーデンのスピード感、ノリの良さみたいなところに合うかどうかというのは結構大事にしているところです。
山根氏
お客さんのほうが、最初の頃はどちらかと言うと、チームのほうが要件を理解したりとかしてモタモタしてくる、スクラムをやっていてもそうですけど、途中から要件っていうか、スクラムの用語でいくと、バックログが出てくるスピードが今度緩やかになっちゃったりしますよね。
倉貫氏
はい。
山根氏
そういうことってあったりします?それもスピードに関係あるのかなという。
倉貫氏
そうですね。基本的に開発スピードはものすごく速いので、特に新規事業の場合は、そのバックログというか、何をするか、どういうものを作るかを考えるほうがボトルネックになりがちです。
山根氏
そうなりますよね。
山根氏
さて今回は「納品のない受託開発」は何ぞやというお話を伺ってきました。次回は、会社の経営について突っ込んで聞いてみたいと思います。
西氏
本日はありがとうございました。
山根氏
ありがとうございました。
倉貫氏
ありがとうございました。
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「納品のない受託開発」とは 〜 これからの時代にあったソフトウェア受託開発のビジネスモデル〜
(Social Change! 株式会社ソニックガーデン SonicGarden 代表 倉貫義人のブログ)