SlideShare a Scribd company logo
1© Internet Initiative Japan Inc.
メールシステム基本のき
〜メールの基本的なおさらいと基礎知識〜
株式会社インターネットイニシアティブ
IIJ Technical NIGHT vol.7
2019年5⽉27⽇
ネットワーククラウド本部
アプリケーションサービス部
サービス開発課
⼟川 智昭
2
メールシステム基本のき
所属
ネットワーククラウド本部
アプリケーションサービス部
サービス開発課
名前
⼟川 智昭 (新卒⼊社7年⽬)
業務内容
企業向けメールサービスの運⽤(3年) 開発(4年)
普段の取り組み
Spring Boot, Elasticsearch, Ansible, Docker
MongoDB, MariaDB, Orchestrator, Consul, Drone
サービスの開発やプロダクトの検証をしています
3
メールシステム基本のき
本⽇の内容
1. メールの仕組みについておさらい
1. メール配送でISP(ESP)が役割を担っている箇所
2. メールを理解するための基礎知識
1. ⽤語の説明(MTA, MUA, MDA, etc)
2. MTAのトランザクション, ワークロードについて
3. 現在のメール技術の推移について
3. まとめ
4
メールシステム基本のき
本⽇の講演内容について
• 内容は SMTP や MTA 周りが中⼼のお話になります
• 注:エンドユーザ向けの話はあまり無いかもしれません
• 注:分かりやすさ優先で不正確な説明もありますがご了承
ください
• 広報の⽅に「ロストテクノロジー」と⾔われるメールど真
ん中の話をピックアップしたセッションが3つ続きますが
どうぞよろしくお願いします
5
〜 メールの仕組みについておさらい 〜
5分間
6
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
• ⼀般の⼈が考えるメールの配送のイメージとは?
• メールを送ってから受け取られるまで
宛先:taro@example.com
差出⼈:foo@example.com
件名:〜
本⽂:〜
7
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
②?①? ③?
①メールを送る
②???
③メールが届く
8
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
①
Webメール
スマホアプリ
Outlook, Thunderbird, etc
9
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
①
Webメール
スマホアプリ
Outlook, Thunderbird, etc
STARTTLS SMTP (port 25), SMTPS (port 465)
SMTP Submission (port 587), SMTP AUTH
HTTP(port 80), HTTPS (port 443), HTTP/2
HTTP(port 80), HTTPS (port 443), HTTP/2
⻘⾊が実際のメール配送に携わる箇所
10
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
②
11
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
②
STARTTLS SMTP (port 25)
⻘⾊が実際のメール配送に携わる箇所
〇〇.com
△△.co.jp
□□.ad.jp
12
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
③
Webメール
スマホアプリ
Outlook, Thunderbird, etc
13
メールシステム基本のき
メールの基本をおさらい
③
Webメール
スマホアプリ
Outlook, Thunderbird, etc
STARTTLS POP3(port 110), POP3S(port 995)
STARTTLS IMAP(port 143), IMAPS(port 993)
HTTP(port 80), HTTPS (port 443), HTTP/2
HTTP Push
HTTP(port 80), HTTPS (port 443), HTTP/2
HTTP Push
⻘⾊が実際のメール配送に携わる箇所
14
メールシステム基本のき
• 現在のメールやりとり・姿
• Webサービスやスマートフォンアプリがインタフェー
スの中⼼になりつつある
• 裏側で使われている仕組みを意識せずに使える
• ロストテクノロジー → “インフラ” テクノロジー
• もちろん MUA(メーラー)を使った利⽤割合も⼤きい
• ISPにおけるメール業務はこの裏側部分が中⼼
• 当たり前に届くための道(基盤)の整備をしています
15
〜 メールを理解するための基礎知識 〜
5分間
1. メール⽤語の説明
2. メール配送はトランザクションである
3. 近年のメール関連技術の状況
16
メールシステム基本のき
1. メール⽤語の説明
• MTA(s)
• Mail Transfer Agent(s)
• メール配送を担うプログラムの総称
• Sendmail, Postfix, qmail, Exim 等
• MUA(s)
• Mail User Agent(s)
• メールクライアント、メーラー
• Thunderbird, Outlook, Becky 等
• MDA(s), MSA(s)
• 割愛
• バウンスメール (bounce message)
• 別名 NDR(Non-Delivery Receipt),リターンメール
• 宛先不明時やメールボックス容量超過時等に返される
エラーメールのこと
17
メールシステム基本のき
2. メール配送はトランザクションである
• 障害時にメールが消失しないようにリレーされている
• 1通毎に fsync してのパーシステントが必須
• どのMTA (sendmail, postfix, etc) もやっていることは同様
“EHLO…”
“MAIL FROM: …”
“RCPT TO: …”
“DATA…”
“.”
“QUIT”
“250…”
“250…”
“354…”
“250…”
“EHLO…”
“MAIL FROM: …”
“RCPT TO: …”
“DATA…”
“.”
“QUIT”
“250…”
“250…”
“354…”
“250…”
“250…”“250…”
at least onceat least once
18
メールシステム基本のき
3. メールのエンベロープとヘッダー
• ⼤きく分けて2種類の宛先・差出⼈情報がある
Envelope From: <a@example.com>
Envelope To: <taro@example.com>
From: “Bob” <b@gmail.com>
To: “Taro” <taro@example.com>
Cc: “Jiro” <jiro@example.com>
Envelope From, To
• MTAが実際の配送とバウン
スメールの配送先として使
⽤するアドレス情報
Header From, To
• MUAが画⾯上に表⽰して⾒
せる宛先・差出⼈のアドレ
ス情報
• Header From を書き換える
ことで容易に詐称が可能
• →迷惑メールの温床に
SMTP 全体
DATA part
Header
Body
19
メールシステム基本のき
4. 近年のメール関連技術等の状況
これからメールシステムを引き継ぎ・運⽤する⽅向け
• SPF(RFC7208 2006〜)
• エンベロープFromのドメイン詐称を検証できる
• 対応しないともはやメールが届かないことも
• DKIM(RFC6376 2007〜)
• ヘッダFromのドメイン詐称を検証できる
• DMARC(RFC7489 2015〜)
• 詐称メールに対するポリシーを宣⾔
• 世界中の⾃ドメインの検証状況を知ることができる
• ARC(Internet-Draft 2018〜)
• メーリングリストや転送メールも送信ドメイン認証可
能に
• DANE(RFC7672 2015〜)・MTA-STS(RFC8461 2018〜)
• メール配送時にインターネット上を平⽂ではなくTLS強
制して配送するように宣⾔できる
20
メールシステム基本のき
まとめ
• メールやSMTP関連の話を理解するための基本的なおさら
いについて解説しました
• 15分にまとめるのが難しい
• 資料はインターネット上に豊富にあります
• キーワードを元に正しい情報を参照しましょう
• メールについて0からキャッチアップするのは⼤変
• 多くの送信事業者が⽇々最新の技術動向に気を配って
います
• メールの到達性を保ち、よりセキュアなメールのやり
取りができるように努⼒しています
21
メールシステム基本のき
Appendix.
• 他のメッセージングサービスやチャットツールに置き換え
られていかないのか?
• メールは⾮中央集権で仕様がすべてオープン
• 但し⼀部の企業に集中が進んでいるのは事実
• スパム対策,セキュリティ対策,送信ドメイン認証,
等⼀⽇の⻑あり
• 仕様やAPI,参加者をオープンにすれば、同じ問題
がメッセージングサービスでも起こり得る
• ⽤途による住み分けは今後も進んでいくだろう
• SlackやDiscordもやっぱり便利
22
IIJ-BKLT999-0001

More Related Content

メールシステムの基本のき