Throw away the map and let's go with the help of your compass.
Agile Tour Osaka 2012 ( http://bit.ly/Tm3MNc )発表資料です。若手エンジニアとサービス開発を通して考えてきた「なぜ?」。その探求の旅の紹介です。
28. │ ❺─ユーザテストのアンチパターン │
DIY ユーザテストは製品の品質向上に大きく貢献してくれます。ただ、未経
験の人が陥りがちな“落とし穴”も少なくありません。ここでは代表的な失敗
パターンを指摘しておきましょう。
製品ができあがってからテストする─開発者やデザイナには一般的に悪い
癖があります。それは、テストの実施時期を遅らせたがることです。
「中途半
端なものをテストしても意味はない。デザインやコーディングが完了してから
テストすべきだ」と考えるのです。しかし、これは大きな間違いです。製品が
完成してからテストして、もし製品の基本設計に関わるような問題が見つかっ
た場合、もはや修正は不可能です。どうせ失敗するのならば「早期に失敗」す
るべきなのです。
初心者でテストする─被験者が初心者の方が、より多くの問題点を発見で
きると考えるかもしれませんが、それは全くの間違いです。マウスやキーボー
ドがまともに操作できない初心者をリクルートしてしまうと、それはテストで
はなく“パソコン教室”になってしまいます。テストには十分な技量とモチベ
ーションを持ったユーザに来てもらいます。そういった“当然できるはず”の
ユーザが悪戦苦闘するからこそ、開発者やデザイナは大きな衝撃を受けて、根
本的な製品仕様の変更を決断できるのです。
C
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グループインタビュー形式でテストする─マーケティングリサーチで用い
p
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られるグループインタビューと勘違いして、5 人のユーザを 1 部屋に集めて同
2
ユ
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時にテストしてはいけません。ユーザテストでは必ず 1 人ずつ個別にテストし
ザ
テ ます。現実の場面でも、ほとんどの場合、ユーザは 1 人で製品を操作している
ス
ト
入 のですから。
門
2
2 ユーザに質問する─ユーザに「どこが悪いと思いますか?」
「どう改善す
ればよいと思いますか?」といった質問をしてはいけません。ユーザは分析者
でもなければ、デザイナでもありません。製品の何が問題で、それをどう改善
29. すべきかを考えるのは、当然ながら“あなた”の仕事です。ユーザテストにお
いても「ユーザの声聞くべからず」なのです。
激安ユーザテストの系譜
ディスカウント・ユーザビリティの元祖はヤコブ・ニールセンです。学術的
なユーザビリティが支配していた時代に、彼は 5 ユーザテストやヒューリステ
ィック評価法を用いた実用的なユーザビリティ=ディスカウント・ユーザビリ
ティエンジニアリングを提唱しました。
ただし“ディスカウント”といっても、それは「研究室にこもった白衣を着
た博士と助手に頼むよりは安い」というレベルです。実際、彼が代表を務める
ニールセン・ノーマン・グループの価格表を見ると◎専門家評価:$38,000、
◎ユーザテスト:$25,000、◎ユーザテスト講習会:$23,000 +旅費……、
私たちの感覚では決して“安い”と言えそうにありません。
これを見て「海外はユーザビリティの予算が何百万円もある! 日本は遅れ
ている! 我々にももっと予算を!」と誤解してはいけません。海外でもユー
ザテストに 200 万円使えるプロジェクトはごく僅かです。
では、どうしているのか?
Do-It-Yourself! ─その第一人者がスティーブ・クルーグ(Steve Krug)で
す。「Don't Make Me Think(邦題:ウェブユーザビリティの法則)
」の大ヒッ 4
トで一躍人気者になった彼は、そのノウハウを軽妙な語り口で全米に伝道して D
I
回っています。 Y
ユ
ー
ザ
テ
そんな彼の第二弾が「Rocket Surgery Made Easy」です。風変わりなタイ ス
ト
トルですが、「ロケット手術」とは“すごく難しい(と誤解されている)コト” の
す
ゝ
を皮肉った彼の造語で、要するにユーザテストを指しています。つまり、タイ め
トルを意訳すれば「お手軽ユーザテスト ガイドブック」
・ といった感じでしょう。 2
2
彼の主張は 3 点に集約できると思います。
◦定期的(月イチ/朝イチ)に小規模(被験者 3 人)なテストを繰り返そう!
30. ◦関係者にテストを見学してもらおう!
◦問題解決では最善を“尽くさない”ようにしよう!
彼特有の“受け狙い”の感もありますが、その内容は私たち実務家から見て
も納得できるものです。特に、関係者に見学してもらうことの重要性と、その
ためのノウハウ(例えば“おやつ”をケチらない)は参考になりました。
このようにディスカウント・ユーザビリティの主役はニールセンからクルー
グに代わりましたが、実は大本の原則は少しも変わっていません。
◦どんなテストでも、やらないよりはマシ
◦早い段階(プロトタイプ)でテストする
◦繰り返しテストする
そして、これは今後も永遠に変わらないと思います。
スティーブ・クルーグ
激安ユーザテストの伝道師。 「Rocket Surgery Made
C Easy」は風変わりなタイトルだが、的確に本質を突い
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た彼独自の実用的ユーザテスト論が展開されている
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ユ
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ザ
テ
ス
ト
入
門
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