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研究法について
2016 version
暦本純一
たぶんこれからもっとも聞かれること
結局、あなたは何をしたの?
クレーム claim
• 科学技術論文では、正誤が客観的に判定できる言明。
• 研究とは「新しいclaimを提示し、それを立証する」こと。
• 立証とは、筋道をたてて理解すれば、それが正しいと納得できる
ように議論を構成すること(根拠と論理)。
• Claim の価値というものもある(claimであるが価値のないもの
もある)。
• 論文や研究発表はclaimが伝わるように構成しなければならない。
• 研究過程でも常にclaimを設定しておくこと。研究が進展する過
程で変更することはかまわない。しかし、「立証したい主張」が
ない状態で手だけ動かしていることのないように。
Claimである例
• DNAの立体構造は2重螺旋である。
• 細胞に酸でストレスを与えると万能細胞化する。
– Claimの立て方は素晴らしい。ただ立証できなかった..
• 上腕筋肉に電気刺激を与えると指が動く。
• 無線フィンガープリントを高密度に計測すれば、無線による
位置推定精度が向上する。
• 笑顔を形成すると精神が向上する。
それぞれどうやったら立証できるか(決着つけられるか)、実験手法もあわ
せて検討する
→ それが研究計画になる。
→ 完全に解けなくてもいい。決着がつく最短経路は何かを探る。
→ その方針で進めるどうかの決着も可能限りはやくつける(悶々と何ヶ
月もやって、だんだん「何がしたかったのかが自分でもわからなくなって
きた」という状況にならないように)。
Claimでない例
• 視線情報を用いたライフログの研究をする。
– 研究領域を言っているだけ
• 膨大なライフログ情報を効率的に検索する。
– 具体性がない
• 表情を持つテレプレゼンスシステムを作った。
– 作りました、だけではクレームにならない
→ 表情を持つテレプレゼンスシステムによって感情の伝達が円滑にな
る。
「感情の伝達が円滑になる」をどう立証するか、という問題は残るが…
• → 立体顔ディスプレイでは視線の伝達が正確にできる。
– 正確な視線の伝達、は検証可能
Claimと言語化
• Claimはシンプルに言語化できるべき(言語は最強の思考ツール)
– ジョブズとエレベータに乗り合わせて降りるまでにやっていることの価値を説
明できないとクビという都市伝説があった。。
• 言語化して初めて善し悪しが見えることもある
– 書き下してみると意外に当たり前ということもあるし、逆に発想が広がること
もある。
• 他人(あるいは自分自身)に価値を伝えるには言語化が必須
– 「言語化できない良さがある」はその先の話。言語化の努力を放棄する言い訳
にはならない。
– もちろん図も大事。ただし図はhowは得意だがwhyがむずかしい。言語と併用
して相補的に使うとよい。
「テーマは理屈ではなく、形の分かるもの、ハッキ
リ形の見えるもの...これらは少ない言葉でいえる
のが特徴で、言葉数が多くなるのは表現じゃなく
説明になる。だから自分はテーマはどれも一口で
いえるものを設定してきた」
黒澤明 (橋本忍『複眼の映像』より)
「百姓が侍を七人雇い、襲ってくる山賊と戦い勝利する」
「あと65日で死ぬ男」
Claimが決まると初めて判定できる
• 論文/研究の典型的なつっこみ4パターン
– なんでそれをやるの?意味がある?(研究価値)
– 他に既にやっている人がいるよ(新規性)
– 他の〇〇という方法では何故だめ?(新規性/比較)
– 本当にうまく動いている?(根拠/評価/再現性)
• でもclaimが決まっていないと
– 何が言いたいのかわからない。となる
– アイデアを思いついたときに上の4項目についてまず吟味する。
着想(idea)とClaim
• 工学では、Claimとは問題とその解決法のペアになる。
• ところが、えてしてアイデアはいきなり「Solution」だけの形
でやってくることもある。
• 偶然発見することもある。
• それが何の「Problem」のためのSolutionなのかを逆に見つけ
ていくことも必要。
– 発明は必要の母 (M.Kranzberg)
• だれも必要としていない人工的な問題を造って、それを解い
ていないか?(論文のための研究になっていないか?)
SpareseLightVR [CHI2016]
周辺視野に低解像度のLEDを配すると・広視野角のHMDが構成できる。
目的(課題)手段
人間の周辺視野は解像度が低い
(科学知識)
広視野角HMDは永らく追求され
てきたテーマ(問題の重要性)
今まではレンズを改良するなどの
方法が主だったので全然違う解
決方法。
「高精細かつ広視野角」というト
レードオフのバランスをあえて崩
している。
事例:
アイデア生産の3法則
• 既知のものの新規な組み合わせ
– 周辺視野は視覚解像度が低い×広視野角のHMDにはニーズがある
• トレードオフのバランスを崩す
– 高精細かつ広視野角のHMDは作るのが難しい
→両立の必要ある?ある条件では片方だけでも?
• 欠点と思われているものを利点に転換する
– LEDディスプレイは簡単にフレキシブルにできる。でも解像度が高
められない→周辺視覚提示だとこの特性は欠点ではない。
• (もちろん偶然発見するのもある。ので現場重要)
ただし!時間が勝負!あなたが思いつく素敵なアイデアはたぶんほかの人も思いついている。
Agilent(HP)の光学センサー
「画素数が数ない光学センサーは高速化できる」
(トレードオフのバランスを崩している)
「高速光学センサーを物体に密着させると動きがわかる」
→ プリンタの紙送りセンサーに使える。
高速光学センサーを物体に密着させると動きがわかる
→ マウスのセンサーに使える!
Solutionは同じ。より大きなproblemを発見して価値が増
大した。
より効果のある問題に適用してみた:
確認事項
• 修論/博論/現在進行中の研究のclaimを言えるか?
– どんどん組み替えていって構わないが (組み替えてより強い
claimにしていくプロセスも大事)、仮説として常にclaimを持っ
ていること。
• よりよい問題を発見できないか?
• Claimを立証する手段として研究や論文が構成されているか?
– そこ以外のところで妙に頑張りすぎてないか?
• 典型的つっこみパターンへの答えが用意されているか?
• 他人の論文でもclaimは何か、を意識して読む/聞くとよい。
(自分の研究のclaimが他の人に伝わっているかどうか)。
http://www.slideshare.net/kdmsnr/writing-a-paper-seven-suggestions
おすすめslideshare
箇条書きレベルのあらすじ(ラフストー
リー)だけでも書いてみるとよい。研究
を進めてから論文執筆、だとそこで詰
まった時につらい。
素人のように考え、玄人として実行する
金出武雄
悪魔のように細心に、天使のように大胆に
黒澤明
天使度
悪
魔
度
スゴイ発想!
技術も凄い!
やられた!
造りこんでるが今ひと
つぱっとしない。イン
プリの話ばかり。何の
ためにやってるのか
一発芸だ!
思いつきだけで
深みがない
つまらん。
レベル低い
むずかしい
「料理の美味不味は、十中九まで材料の質の選択にあり」 (魯山人)
= ダメな研究ネタをどううまく料理してもおいしくはならない。
スキル
(学力)
• 一般的に、研究室に来ているほうが捗る
• 聞く能力は大事 & 分かったことは共有する
– 聞く能力=何がわからないかを説明する能力
– 何がわからないかを正確に理解している=問題の半分は解けている
• Input / output / 自分の作業 / event などのバランスを考える
– 特に首都圏はイベントが多いので、それにかまけすぎると「何か
やっているつもり」がぜんぜん自分の研究ではないことも。
– 研究者にとって、新しいことを考えたり試行錯誤したり実現したり
している以外の用件は究極的にはすべて「雑用」です(不可避なも
のもあるけれど)。
• 指導教官はリソース&ツール
– ただし shared, limited, 気まぐれなリソース。間違ったことをいう
かもしれないですw
暦本研必読図書
ということで皆さん
Happy
卒論/修論/博論ライフを

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