サブリナ (Sabrina) チェアを背面から撮影
・高級オフィスチェアの世界
・世界で売れるハードルの高さ
・「サブリナ(Sabrina)」の開発ストーリーを取材
・「サブリナ」の紹介
・「サブリナ スマートオペレーション」を写真で解説
【解説】「異硬度クッション」のもたらす着座姿勢の快適性
・「サブリナ スタンダード」を写真で解説
・ジウジアーロと協業して開発されたサブリナ
・数年かけた開発プロジェクト
・当初から世界をターゲットにスタート
【参考】オルガテック(Orgatec : 国際オフィス家具見本市)について
・一体成型のリングフレーム構造で、剛性としなやかさを両立させる
・「しっかり身体を支える、しなやかに追従する」コンセプト
・コンペで埋もれないデザインであること
・サブリナの登場に至る背景
・岡村製作所の持つ「ものづくりのこだわり」
・良いオフィスチェア、理想のオフィスチェアとは
・終わりに
(注) 2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更している。
高機能でありながら、デザイン性の高い、高級オフィスチェアというと、日本ではアーロンチェアを思い浮かべる人も多いだろう。アーロンチェアを製造するハーマンミラー社は、ミシガン州に本社を置くアメリカの大手オフィス家具メーカーだ。
安価な中国製が世界を席巻する時代ではあるが、高級オフィスチェアの世界では、ハーマンミラー社以外にも、アメリカのヘイワース社、スチールケース社、ドイツのウィルクハーン社、スイスのヴィトラ社、ジロフレックス社など、アメリカやヨーロッパに本拠を置くメーカーが、デザイン性と機能性を誇る製品を競っていて、そこに廉価なメーカーの入り込む余地はない。
そうした中、我が日本のメーカーの状況はどうかというと、日本製品も確かな地位を築いている。例えば、生産される製品のほとんどが海外で売れている高級オフィスチェア「コンテッサ (Contessa)」(製造: 株式会社岡村製作所) がある。イタリア・ジウジアーロ社とコラボして2002年にリリースされたロングセラーモデルで、同社の神奈川・追浜工場で製造されているそのチェアは、その生産分の8割が海外向けとなっている。
岡村製作所「コンテッサ (Contessa)」 「みんなの仕事場」撮影
※現在、「コンテッサ (Contessa)」の後継となる「コンテッサ セコンダ (Contessa II)」がリリースされている(2016年11月発表)。(プレスリリース)
最近は、安価な中国製品に押される中、メイドインジャパンの品質が高くて世界で人気があるという話題がニュースになることが多いが、実のところ、日本製品であれば、無条件で海外でも人気というわけではない。広く世界で売れている日本製品の代表格としてトヨタや日産などの自動車を挙げることが出来るが、ほかには、産業機器や高機能部品といった一部の製品に限られるのが現状だ。
特に、今回のテーマである高級オフィスチェアの世界では、機能性、強度、デザイン性、供給力など多くの要素を高い水準で保つことを求められるため、歴史的にヨーロッパやアメリカに本拠を置くメーカーが強く、「世界で売れる」ということはハードルが高い。その難しい条件をクリアして世界で売れているというのは、実にスゴイことなのだ。
そこで、今回は、日本が誇る国産高級オフィスチェア「コンテッサ(Contessa)」を生み出した岡村製作所に取材に伺い、そのものづくりのマインドを、同社から2012年に発売された高級オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の開発ストーリーを通じて探った。
「サブリナ(Sabrina)」は、2012年に発表された高級オフィスチェアで、コンテッサと同様、イタリア・ジウジアーロ社とコラボして開発されたハイクラスチェアだ。初めからワールドワイドに展開することをターゲットにしたモデルで、発売から5年が経過し、既に海外比率は4割となっている。
高級オフィスチェアには、デザイン性、機能性、耐久性などを、非常に高度な水準でバランスさせることが求められる。そうした中で、初めから世界展開を狙ってものづくりするというのはどういうことなのか、世界で売れるためのハードルをどのようにクリアしていったのかについて、椅子の魅力の紹介とともに、同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏、同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏の2人にお話を伺った。
同社 デザイン本部 製品デザイン部 第一デザイン室次長(兼)室長 五十嵐 僚氏
(1996年岡村製作所入社。入社以来、ほぼチェアのデザインに携わる。)
同社マーケティング本部 オフィス製品部 コミュニケーションファニチュアグループ 次長 眞田 弘行氏
(1995年岡村製作所入社。入社時は設計に配属。その後、調達購買部門、マーケティング部門、海外部門等、一貫してチェアに携わる。現在はマーケティングを担当。サブリナ開発時は、海外向けPRなど海外販売支援を行っていた。)
お2人に話を伺っていく前に、「サブリナ」というチェアについて一通り紹介しておこう。
サブリナには上位モデルの「サブリナ スマートオペレーション」と、標準モデルの「サブリナ スタンダード」の2系統構成となっている。
「スマートオペレーション」は、ひじ掛けのところにリクライニングや上下昇降などのレバーを集中配置して、姿勢を変えることなく椅子の操作ができるようにしたものだ。
「スタンダード」については、椅子操作レバーは座面下に配置されており、ひじ無しモデルも用意されている。
上位モデルで多機能の「サブリナ スマートオペレーション」、そのベーシックなモデルとして「サブリナ スタンダード」が用意されている。背面の構造材など両モデルで共通するパーツも多い(リクライニング機構は両モデルで異なる)。
こちらが、「サブリナ スマートオペレーション」モデル。正面から撮影。
ひじ掛けのところにレバーがついているのが、スマートオペレーション機能だ。写真のモデルはヘッドレスト、ハンガー、ランバーサポート付のフル装備となっている。
以下はスタンダードモデルと共通仕様になるが、背面をメッシュ、座面は、硬さの異なる3種類のウレタンクッションを一体形成した異硬度クッション(*1)となっている。座面上下昇降に加え、50mmの座面奥行調整機構も装備されているので、大柄な方から小柄な方まで体格に合わせたフィットが可能だ。
サブリナの座面クッションは、硬さの異なる3種類のウレタンクッションを一体形成した「異硬度クッション」になっているのだが、なぜ座面の場所によって硬さを変えるほうが良いのかについて、この機会に詳しめに解説しておきたい。
「異硬度クッション」は、おおまかには座面前方部が柔らかく、座面後方部が硬く作られている。座面前方部を柔らかくしているのは、そこに乗る太ももの裏が圧迫に敏感という身体の特性があるためだ。小学校時代に、木の椅子で長時間座っていると疲れてきて、手のひらを太もも裏に入れると楽になった経験がないだろうか。太もも裏は圧迫に弱いので、ここに当たる部分を柔らかくすると、長時間座ったときの快適性が上がる。
他方、座る姿勢では、全体重の半分以上ある、上半身の体重をお尻のどこかで支えなければならない。支えるポイントは骨盤の下部(座骨結節)だ。人間の身体は良くできていて、お尻でも骨盤の下部のあたりは鈍感にできていて圧迫に強いので、ここをしっかり支えることで、座っているときの上半身の姿勢を安定させることができる。そのため、座骨結節が乗る座面後方部を硬いクッションにして沈み込みを防ぎ、着座姿勢を安定して保つように設計されているのが、「異硬度クッション」なのだ。
このように硬軟組み合わせた座面を作ることで、ソフトな座り心地ながら、着座時の姿勢を正しく保ち、長時間座っても疲れづらい椅子となっている。これが全体に柔らかいと、身体が沈み込み過ぎて背中が丸くなりやすく腹部が圧迫されて苦しくなる(そのため、お尻を前方にずらして足を伸ばす姿勢になりやすい)、全体に硬いと圧迫に敏感な太もも裏がつらくなって長時間座っていられなくなる(*2)。
*2) 椅子の座り心地に関しては、人間工学の我が国の第一人者 小原二郎教授の本が分かりやすくておススメしたい。例えば、 「人間工学からの発想」第四章 家具の人間工学 (小原二郎著, 1982, 講談社 ブルーバックス)
余談がかなり長引いてしまった。本論に戻ろう。
こちらが背面から。
中央にセンターフレームが通り、OOのような形で左右2つのリングで背面を構成するリングフレーム構造になっている。
こちらは真横から。
背面が横から見てもリング構造になっているのが分かるだろう。腰を支えるため背面下部は前に出ているが、柔らかな曲線を描いている。無駄な線がないシンプルで美しい構造だ。
ランバーサポート部を横からアップで。リングフレームに対して、背下部のアルミダイキャストフレームが調和する形で接合している。
ひじ掛けの操作レバー。
スマートオペレーション機能は、同社のコンテッサで培った技術を採用している。姿勢をほとんど変えずに、ひじ掛けに手を置いたまま調整できるのが特徴だ。操作性の良いのも、高級チェアの特徴のひとつと言える。
こちらは「サブリナ スタンダード」モデル。ひじ掛け付だが、ひじ掛け無しモデルも用意されている。写真のモデルはヘッドレスト、ハンガー、ランバーサポート無しのモデルになる。
座面下に見える黒いレバーは、リクライニング調整、座面高さ調整のためのもの。
背面をメッシュ、座面はウレタンクッションとなり、50mmの座面奥行調整機構も装備されていて体格に合わせたフィットが可能、異硬度クッションを装備しているのは上位のスマートオペレーションモデルと同じだ。
真後ろから。アクアブルーの生地にホワイトカラー樹脂フレームモデルなので、写真で見ても形状の美しさが分かりやすい。
斜め前から。
真横から。横から見るとサブリナのフレームのシンプルで優雅な美しさが際立つ。
では、インタビューに入っていこう。
「世界に通用するものづくり!岡村製作所 オフィスチェア「サブリナ(Sabrina)」の魅力を探る[2] (開発編)」
日本の家具、産業用機器製造大手。東証一部上場。オフィス家具を中心としたオフィス環境づくりに留まらず、教育・公共・医療・研究・金融・商業施設などの各種什器の設計製造施工でも知られる。
2018年4月1日に「株式会社岡村製作所」から「株式会社オカムラ」に社名変更した。
【参考】「make with オカムラのものづくり」岡村製作所のサイト
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年5月16日
サブリナスタンダード」は日常のオフィスチェアとしてビジネスパーソンの多様な働く姿勢をサポートします。
コンテッサの独創的なデザインはそのままに、現代の多様化するワークスタイルに応えて、座り心地と強度を向上させたチェア。
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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