スウェーデン政府は、自主帰国を決めた移民に対し、1人当たり最大35万クローナ(約490万円)を給付する新制度を発表した。移民の出国を促すのが狙いで、2026年から実施する。寛容な難民受け入れを誇った北欧の人道大国は、大きく政策を転換した。
スウェーデンは現在、難民やその家族について、成人1人当たり1万クローナ(約14万円)を支給している。今回の決定は金額を一気に35倍に増やすもの。政府は19日の声明で「社会統合できなかった人の自主帰還を促す」のが目的だと説明した。現制度では給付金に1家族当たり4万クローナ(約56万円)の上限を設けているが、声明は新制度の詳細には言及していない。
発表を前に、ヨハン・フォシェル移民相は「われわれは移民政策におけるパラダイムシフト(価値観の大転換)のさなかにある」と訴えた。スウェーデンでは22年の総選挙で左派政権が下野し、8年ぶりに右派政権が発足。極右政党が閣外協力し、移民強硬策を進めている。
スウェーデンは1990年代に民族紛争が続いた旧ユーゴスラビアのほか、シリアやソマリアなどの紛争地から多くの難民を受け入れてきた。その結果、1千万人の全人口のうち、移民やその家族がおよそ2割を占めるようになった。白人社会に溶け込めず、ギャング団に加わる若者も多く、銃犯罪の増加が社会問題になっている。
スウェーデン紙によると、新制度はデンマークがモデルとなった。デンマークは2010年以降、10万デンマーク・クローネ(約210万円)を超える給付金で、難民や移民の自主帰還を促している。(三井美奈)