町長室で性交渉を強要されたという証言に苦しめられた群馬県草津町の黒岩信忠町長が産経新聞のインタビューに応じた。黒岩氏を巡っては、告発した元町議の新井祥子氏が令和2年12月に解職請求(リコール)の賛否を問う住民投票で失職すると、草津町が「セカンドレイプの町」と国内外から批判される事態に至った。一方、前橋地裁は今月17日、黒岩氏が新井氏に損害賠償を求めた訴訟の判決で、新井氏の証言を「虚偽」と認定した。
≪虚偽の証言を巡って令和2年12月の新井氏に対するリコールの賛否を問う住民投票は「失職に賛成」が2542票、「反対」が208票だった。賛成は92%、反対は8%に過ぎなかった≫
──黒岩氏の潔白を信じた町民は当初から多かったという
「対外的に私は悪党にされたが、町民は私を信じてくれた。この問題が発覚した当時『町長はなんてひどいことをするのか』と言った町民はいなかったし、逆に『こんなバカな話があるわけないじゃないか』と言ってくれた。リコールで92%もの町民が私を信じてくれたことは非常に大きな心の支えだった」
──新井氏が虚偽の証言をした直後のマスコミ報道について
「ワイドショーは当時いつも『草津町長のレイプ事件』を報じていた。腹が立つので見なかったが、ものすごく拡散されたと思う。これほどはっきりとした名誉毀損(きそん)事件もないはずだ。テレビも含めて報道機関は新井氏の証言が虚偽だったと大きく取り上げるのが筋だと思うが、取り上げない。不満に思っている」
──町長室はガラス張りで扉も原則開かれているという
「新井氏に対するリコールを取材に来たテレビカメラのクルーを町長室に招いて『ここで(性交渉)できると思うか』と尋ねた。クルーはカメラを止めた後、『これは無理ですね。でもわれわれには編集権がないもので…』といって結果として私が悪者のように報道されてしまった」
≪新井氏は令和2年12月、日本外国特派員協会で記者会見し、「性被害は事実だ」と訴えた≫
──新井氏の主張は海外メディアも報じる事態になった
「米紙の主要紙は『日本に日常的に性暴力を働く政治家がいる。日本は女性の性被害で後進国だ』という記事を出し、英国の主要紙も『日本の地方や国の政治における男性支配を浮き彫りにした』などと報じた。フランスの記者からも取材を受けた。台湾ではこの事件が大学の教材になっていると聞く。ドイツの知り合いも事件を知っていた。草津町の汚名が世界に伝播された」
──海外に発せられた汚名は今回晴らされたと思うか
「ぜんぜん思わない。地裁判決の内容を知ったならば再取材するのが礼儀だと思うが、その動きはない。みんなだんまりだ」
「唯一共産党の機関紙『しんぶん赤旗』の編集幹部は草津町に来て、私に『間違った記事を出してしまった』と謝罪し、その後、訂正記事を出した。私は『きちんと調査した上で報道してほしい』と伝えたが、赤旗だけだ。世の中はひどいですね…。いわれっぱなしだ。たたかれるときはたたかれたが、それきり謝らない。間違ったら『ごめんなさい』ではないか」
≪黒岩氏は平成22年に町長に就任して以降、町中心部の観光名所「湯畑」周辺の再開発を進めている。令和5年度の観光客数は前年比17%増の370万人となって過去最多を更新した≫
──観光客数が増加している
「驚異的な数字だといえる。バブル期に達した観光客数300万人も22%上回った。ほかの大手の温泉地も観光客の数字が好調だが、どこもバブル期までは超えていない。女性に受ける景色づくりに力を入れたことが功を奏したかと思っている」
「私の使命は草津町へのお客さまを増やすことだ。町長就任時に『若い女性に支持される街づくりを目指す』と宣言し、『100年先にも通用するまちづくり』をテーマに、レトロでクラシックな街づくりを進めてきた。行財政改革しつつ新型コロナウイルス禍でも整備を続け、とことん魅力的な街づくりに努めた。事件でバッシングされたことも、バネになったかもしれない。風評被害でお客が減ったなんて本当に忍び難いからだ」(聞き手 奥原慎平)