歩行者信号、青で渡ったらダメ 自転車悪質走行に「赤切符」 思わぬ落とし穴も

品川駅前で行われた公開取り締まりで、自転車利用者に安全運転を呼びかける警視庁高輪署員ら=10月19日、東京都港区
品川駅前で行われた公開取り締まりで、自転車利用者に安全運転を呼びかける警視庁高輪署員ら=10月19日、東京都港区

自転車が加害者となる事故が相次いでおり、警視庁は10月末から「車道の右側通行」や「徐行せずに歩道通行」などの4つの違反で、悪質な場合に「赤切符」を交付し、取り締まりを強化している。赤切符には、道交法違反容疑での書類送検や罰金が科せられる場合もある。自転車のルールの認知不足もみられ、警視庁は「目的は事故防止だ」とし、利用者に安全運転を求めている。

自転車は車道の信号

「運転手さん、いま信号、赤でしたよね?」

東京都内の大通りにかかるスクランブル交差点。昨年10月、会社員の女性(36)は、自転車で交差点を渡ったところで警察官に呼び止められた。女性は青信号で渡ったのに、なぜ止められたのか理解できなかった。

警察官は「青だったのは歩行者用の信号です。車道の信号は赤でしたよ。守らなきゃいけないのは、車道の信号です」と説明。自転車は道交法上、「軽車両」に分類されるため、原則、車道を走り、車道の信号に従わなくてはならない。女性は歩道の青信号で渡っており、「その認識が全くなかった」という。

さらに、歩道を渡っていた男性が自転車を避けるような動きをしたため、「歩行者妨害」とも指摘され、女性は赤切符を切られた。数日後、警察署で取り調べを受け、書類送検されたが、起訴はされなかった。

女性は「同じ交差点を見ても、車道の信号を見ている自転車もいるが、歩道の信号を見ている人も多い」とし、「今は、『私は車』と言い聞かせながら自転車に乗っている」と話した。

取り締まり強化

警視庁によると、令和3年に自転車利用者に赤切符を交付したのは4315件。事故寸前など、特に危険な運転をした利用者に交付してきたが、今年10月31日からは、信号無視▽一時不停止▽車道の右側通行▽徐行せず歩道通行-の4つの違反で、事故の危険はなくても悪質な場合は赤切符を交付する措置を始めた。

赤切符が交付されれば、警察官の取り調べを受け、書類送検される可能性もある。信号無視などでは「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」に科せられるケースも出てくるとみられる。

警視庁が取り締まりを強化する背景には、自転車が加害者となる事故が後を絶たないためだ。警察庁のまとめによると、3年には、自転車側の過失がより重い死亡事故は、全国で172件発生した。

3年12月には、足立区で男子高校生の自転車が歩行者の男性=当時(75)=と衝突。男性ははずみで車道に転倒し、トラックにはねられて死亡した。高校生は無灯火でイヤホンを付けていたとみられる。

ルール周知に課題

運転免許のない自転車の正しい乗り方の理解は進んでいない。警視庁によると、小学生に対する安全教室のほか、各署で月に1回程度、路上で自転車を止めて安全走行を呼びかける「自転車ストップ作戦」を行い、自転車の正しい乗り方を指導しているという。

警察庁によると、安全利用には5つの基本ルールがある。①自転車は車道が原則で、歩道は例外②車道は左側を通行③歩道(を通る場合)は歩行者優先で車道寄りを徐行④交通ルールを守る⑤子供はヘルメットを着用-だ。

警視庁によると、3年の自転車死亡事故の約8割が頭部に致命傷を受けており、大人のヘルメット着用も有効だとされる。交通規制課の担当者は「自転車に乗るときは交通ルールを守り、安全運転をするよう、気を付けてほしい」と話している。(橘川玲奈、写真も)

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