Rubyアソシエーション開発助成成果報告会 開催報告
下記のとおりRubyアソシエーション開発助成成果報告会を開催しました。
日時: 2018年7月7日(土) 13:25〜
会場: 品川シーズンテラスカンファレンス シーズンテラスホール
主催: 一般財団法人Rubyアソシエーション
2017年度のRubyアソシエーション開発助成事業では、4件の開発プロジェクトを採択し、Rubyの発展に繋がる有用なソフトウェアが開発されました。今回の報告会では、そのうち3件のプロジェクトについて、開発者の方から成果を発表いただきました。
理事長まつもとゆきひろによる基調講演や、グラント開発者、およびそのメンターによる座談会を通じて、Rubyと助成事業の未来について語りました。
基調講演:Rubyの進む方向
講演者: まつもとゆきひろ(一般財団法人Rubyアソシエーション)
まつもとさんの基調講演では、Rubyの進む方向性のお話や、Rubyアソシエーション、開発助成事業の紹介がありました。「普遍的でないものに依存するのは危険」という言葉が印象に残りました。
Implementation of Ruby/Cumo, a CUDA-aware version of Ruby/Numo
講演者: 瀬尾直利(DeNA, Co., Ltd.)
瀬尾さんからは、数値計算ライブラリRuby/NumoのCUDA(GPU向けの汎用並列コンピューティングプラットフォーム)対応版であるRuby/Cumoの開発成果の発表がありました。高速化のためにメモリプールを使うのが重要であり、その実装にはがちゃぴん先生のmalloc動画を参考にされたそうです。
会場にはRuby/Numo開発者の田中さんも来場されており、Ruby/Numoのインタフェイスはまだ変更の余地があるのでRuby/Cumoの都合上変更したいところがあれば対応可能とのコメントがありました。
mrubyをプロダクションに投入する - Webホスティング基盤利用での実証実験・開発の報告
講演者: 近藤宇智朗(GMOペパボ株式会社)
近藤さんからは、mrubyをWebホスティング基盤で利用する実証実験・開発の成果について報告がありました。ngx_mruby v2のリクエストハンドラの非同期化や大規模ホスティングでの利用、haconiwaにおけるCRIU/Seccompを使用した高速なコンテナ生成などについて説明がありました。
Ruby 3x3 に向けたRubyのベンチマーク環境と成果
講演者: 国分崇志
国分さんからは、Rubyのベンチマーク環境の開発成果について発表がありました。
Rubyには、標準添付のbenchmark.rbやbenchmark/driver.rbを含め複数のベンチマークライブラリがありますが、計測オーバーヘッドの少なさと使いやすさを両立するものがなかったので、benchmark_driver.gemを開発したというお話でした。
benchmark_driver.gemでは、YAMLを利用したベンチマーク定義や、複数のRuby実装・同一gemの複数バージョンの比較が可能になっており、プラグインを記述することで出力の加工なども行うことができるそうです。
座談会:Rubyの未来とグラントプロジェクトの今後
登壇者: 瀬尾直利、近藤宇智朗、国分崇志、まつもとゆきひろ(メンター)、村田賢太(メンター)、笹田耕一(メンター)
座談会では、開発者とメンターにより、助成プロジェクトやRubyそのものの今後について討論が行われました。
+=
の再定義や、mrubyのVMのスタックマシン化、Procオブジェクトのマーシャリング、自然言語によるプログラミングといったトピックについて議論が行われました。
来場者からは、「学生に勧めるべき言語や分野は?」「continuationはRuby 3に残るのか?」といった質問があり、Ruby 3でもcontinuationが残ることが確認されました。