プログラム
貿易投資
日本経済の成長は世界経済の変化と密接不可分である。このプログラムでは、企業の国際化(輸出・海外生産)と日本経済の成長との関係に注目し、国際化する企業のR&D・イノベーション、国際技術移転、雇用、産業集積を理論面、実証面から研究するとともに、国際的な貿易・投資ルール(WTO、RTA)に関して実証面、法・制度面からの研究を行う。さらに大震災による外的ショックが企業・産業に与えた影響、復興後の生産ネットワークの変化や貿易構造の変化、供給制約と日本経済の構造変化についても研究する。
国際マクロ
グローバル化が急速に進展するなかで、日本経済は新興市場国の成長をいかに取り込み、アジアのなかで、バランスのとれた維持可能な成長をいかに実現するかを考える必要がある。本プログラムでは、アジア地域のバスケット通貨の役割など制度インフラを検討することに加え、パススルーとインボイス通貨選択に関する諸問題をマクロ経済、企業レベルの視点から分析する。さらに為替への影響も考慮しつつ財政再建を中心としたマクロ経済政策のあり方を分析し、長期デフレのメカニズムを解明して脱却の方策を探るなど、国際貿易とマクロ、国際金融、マクロ・ファイナンス、企業の為替リスク管理、コーポレート・ファイナンスなどにまたがる分野で研究を進める。
地域経済
日本の地域をグローバル経済の中で捉え、都市、地域、あるいは産業の成長について検討し、政策的な提言等につなげていく。具体的には、市場メカニズムを通じた国内および国際的な地域システムの形成、企業の集積のメカニズム、経済成長と都市化の関連等を理論・実証両面から分析し、国の経済成長や効用最大化の観点から望ましい地域政策を検討し、地域ブロック、コミュニティーの最適規模も研究する。日本企業のサプライチェーンのあり方や東日本大震災被災地域の復興についても検討を加える。さらには、地域の資源等を生かした優れた中小企業の経営戦略のあり方について検討する。
技術とイノベーション
新たな知識の創造と問題解決への活用がイノベーションの根幹であり、日米欧三極発明者サーベイをはじめとして、その過程を把握できるオリジナルなデータの開発を行い、それによる国際水準の研究とエビデンス・ベースの政策形成に貢献する分析を行う。具体的には、特許制度など知的財産制度のあり方、知識移転と人材移動、産学連携、技術標準、イノベーションに関する外部連携、イノベーションを促進する企業組織・産業組織、アントレプレナーシップの国際比較など、広範な問題について分析する。
産業・企業生産性向上
日本および東アジア諸国について、産業・企業の生産性とその決定要因を計測し、生産性向上政策の研究を行う。産業レベルでは、一橋大学と協力して日本と中国の産業生産性データベース(JIPおよびCIP)の更新・拡張を進めると同時に、日本の都道府県別産業生産性データベースを構築し、震災が地域経済に及ぼす影響と復興政策を分析する。企業・事業所レベルでは、内外の政府統計ミクロデータや企業財務データを活用して、企業間生産性格差の決定要因、グローバル化や需要変動が企業のパフォーマンスに及ぼす影響、サービス産業における生産性向上政策、日中韓企業間の生産性格差動向や生産性ダイナミックスの国際比較、等について研究する。またイノベーションと生産性向上の源泉である、研究開発、ソフトウエア、企業内訓練、組織改編等の無形資産投資を、産業・企業レベルで計測しその経済効果を分析する。
新しい産業政策
世界主要国が環境分野をはじめとして産業政策的要素を含んだ戦略・政策を策定する動きがある中、環境政策、エネルギー政策、資源政策、競争政策、農政改革等も視野に入れつつ、新規需要の果たす役割にも留意して、日本経済の課題を解決するための新しい産業政策の在り方等について研究を行う。
人的資本
急速な高齢化の進行、グローバル競争の強まり、東日本大震災からの復興の中で、資源小国である日本が経済活力を維持・強化し、成長力を高めていくためには、人的資源の活用が大きなカギを握っている。労働者のインセンティブや能力を高めるような労働市場制度のあり方、幼児教育から高等教育、さらに、就業期の人材育成、高齢者の活用まで含めた、ライフサイクル全体の視点からの人的資本・人材力強化の方策について多面的、総合的な研究を行う。
社会保障・税財政
他国に例を見ない急激な少子高齢化の中で、我が国の経済活力を維持していくため、包括的高齢者パネルデータの分析、社会保障と税制を一体とした改革の方向性、環境税と省エネ投資補助金の適切な組み合わせ、大震災からの復興・景気回復・財政再建の同時達成へ向けての政策提言、サードセクターを含む新しい公共のあり方等に関する多面的かつ統合的な研究を行う。
政策史・政策評価
20世紀末の日本の経済社会とその通商産業政策を考察するにあたって、1980年から2000年を中心とした通産政策を振り返り、評価することが本研究の目的である。20世紀末の20年間は、日本の経済社会にとって意味のある変化の時期であると同時に、通商産業政策にとってもきわめて大きな実質的かつ組織的な変化のときであった。本研究は、世紀の転換期に訪れた通商産業政策の変化が、それまでの四半世紀の政策課題の認識やそれに対応した政策手段の選択、さらにはその結果に対する評価等にもとづいてどのようにもたらされたものかを明らかにしようとするものである。
特定研究
RIETI第3期の研究体制について
RIETIは第3期中期計画(2011〜2015年度)において、日本経済を成長軌道に乗せ、その成長を確固たるものにしていくためのグランドデザインを理論面から支えていくことが期待されています。このため、今後5年程度を見越した経済産業政策の重点的な視点(下図参照)に沿って研究を推進することが求められています。第3期の研究テーマは、これらの視点を常に踏まえることを基本方針として、個々の研究テーマのうち一定のまとまりを持つ政策研究分野として9つのプログラムを設定し、これらプログラムの下にそれぞれ複数の研究プロジェクトを設けることとしています。また、これらのほか、プログラムに属さない「特定研究」があります。なお、研究の進捗状況や経済情勢の変化に伴う新たな研究ニーズを踏まえ、必要があればプログラムの変更・追加等を行うこととします。
研究プロセス
研究の質を高める目的で、国内外の専門家や政策当局者を交えて、少なくとも3回の議論の場(BSWS、中間報告会、DP検討会)を設けています。