「この家のため」をつくりだす
古き良き建築で時折出会う、佇まいの良い造り付けの棚やカウンター。
塗装した木の扉だったり、集成材だったり、今となっては普通の素材たちですが、サイズ感や納まり、面取り具合にすっきりしたラインなど、材料の扱いが丁寧なんです。
その空間のために設定され、そこにぴったりと並ぶ愛用のアイテムたち。空間全体から醸し出される「この場所のために設えました」という空気感みたいなものが、時を経ても魅力に感じます。
キッチンは、家の中でも人によって求める収納の在り方や所作が異なる場所。本当は、自分にあったキッチンを造作でつくり込みたいと思っている人は多いでしょう。でも、いざゼロからキッチン空間全体をつくっていくのは、それなりに根気とお金がかかります。
では、シンプルなキッチンを販売して、キッチン周辺の収納は現場ごとに造作することで完成するような、造作と既製品の間のようなキッチン空間づくりはどうだろう。そんな思いから『ユニキッチン』は生まれました。
白系で揃えた5色のメラミン
上下揃いの扉が並んだシステムキッチンでは物足りない。でも、いざ造作でキッチンに合わせた収納を造ろうとする時に設計者を悩ませるのが、既製品との色合せ問題ではないでしょうか。
今回の「ユニキッチン」で、一番大切にしたのが、キッチンに合わせて周囲を造作していく時の一体(ユニティ)感。
定番の化粧板「メラミン」をキッチン扉の面材に採用し、その色番号も開示することで、現場ごとの拡張性があり、使い方次第で色々な世界観をつくりだせる状況にすることを意識しました。
また、一概に白いキッチンといっても、いろいろな「白」がありますし、キッチンのある空間の床壁天井をどう仕上げるかによっても選択肢が変わってくると思います。
「コンクリート躯体などグレーの世界に合わせやすそうなグレーっぽい白と、木のあたたかみに合わせたい柔らかいベージュっぽい白はまた違う。本当に、すっきりした白を使いたいときもあるよね」といった、プロのみなさんからの声も参考に、定番のアイカのメラミン品番から使えるマットな5色を選び出しました。
合わせる床材、周囲の壁や天井の色、家具などとともに、微妙な色の差を拾うハマりよい「白」が選べるキッチンです。
長くつきあえる佇まいのために
キッチンは空間に占める面積も大きいもの。設備感、唐突感をなるべく減らし、隣接するダイニングからの繋がり、その一揃いに映る佇まいも大切なポイントです。
今回扉に採用したメラミンは、マットな表情が空間に馴染んでキレイな「高圧メラミン」。店舗什器のカウンターやテーブルでもよく使われているように、耐久性に優れた素材です。木口にほんのりアールがついて、扉を見下げた時の見え方がキレイになるよう、メラミンに熱を加えて一体的に巻き込むような加工で仕上げました。
引き出しタイプは、上下に2分割のデザインで、大らかな雰囲気です。長く使う中で、物量やモノの配置に変化があるかもしれませんが、箱は最初から細く仕切らず、変化を受け止められるように。開き戸タイプも選べます。
もちろん、こだわったのは表側だけではありません。引き出しのスパイスラックは、細くてもなるべくモノが詰め込めるものを、ソフトクローズの機構は、などなど、造作キッチンの世界もよく知る経験豊富な開発担当が、見えないところにも一点ずつ気を配って仕様を決めていきました。
最後の仕上げとも言える把手は、モノ次第でいいスパイスにもなる、小さいけれど、影響大なアイテム。オプションはスリムなステンレスの板を曲げただけのアングル把手をつくりました。手掛タイプや把手無しを選択して、ご自分の好きな把手をつけることも可能です。
自分らしいキッチン空間実現に向けて
リビングと一体的に繋がったキッチンの在り方が増えたいま、キッチンに求める要望も様々だと思います。使いやすく愛着のもてるキッチン空間は、キッチン本体を据えて完成するわけもなく、空間全体をどうその人らしく(ユニークに)設えらえていくか。
キッチン本体はこれに任せて、「ユニキッチン」を素材として空間に取り込んでもらい、住まい手の願望が反映された、思い思いのキッチン空間が展開されるのを楽しみにしています。
「ユニキッチンシステム」では、サイズオーダーが出来たり、キッチンのキャビネット部分の引き出しと開き扉を混ぜたり、一部をオープンにする、2型配置にするなど、出来ることの可能性がさらに広がります。こちらも合わせてご検討ください。