IE9はHTML5のオフライン機能よりも安定性を選んだと
正式版がついに公開されたマイクロソフトのInternet Explorer 9(日本語版の公開は延期されていますが)。HTML5対応といわれていますが、しかしオフライン機能やWeb Workders、File APIなど主要なHTML5の機能の一部は実装されていないことを、以前の記事「Internet Explorer 9がHTML5のオフライン機能やWeb Workersを実装していないことをどう受け止めるか」で紹介しました。
HTML5に積極的にコミットしたはずのマイクロソフトが、なぜFirefoxやChromeやOperaでは実装されているような主要なHTML5機能の一部をInternet Explorer 9で実装していないのか? 日本マイクロソフトの担当者にインタビューを行いました。
インタビュー記事は@ITに「IE 9がHTML5の機能の一部を実装しない理由」として寄稿し、先週掲載されましたが、あらためてインタビューで語られた理由を引用して整理しましょう。
なぜHTML5の一部機能を実装しなかったのか?
日本マイクロソフトのUXエバンジェリスト春日井良隆氏。
「IE 9では「Same Markup」を掲げていて、それはどのブラウザであっても同一の記述が同じようにレンダリングされるべきだということ。つまりそもそもCSSでベンダプレフィックスが必要なものはこのコンセプトに外れているので、そういうプロパティに関してはIE 9ではサポートしていません。
そしてもう1つがオフラインアプリケーション系。これは関連する機能の1つであるIndexedDBの仕様がまだ安定していないので、それにまつわるオフラインアプリケーション関係が今回は実装されていません。」
シニアプロダクトマネージャー 溝口宗太郎氏
「IEはエンドユーザー、開発者、法人など非常に多くのレベルのお客様をカバーしています。そのためどうしても新しい仕様、機能に対する実装はコンサバ(保守的)になっています。
基本的に実装は、勧告候補になって安定していると思われる仕様や、変更されるおそれがないもの、あるいはβ版以降で優先的に実装してほしいというで要望が高くなっているものを優先しています。
(略)
IE 9の実装がどうしてもコンサバになるのは、例えばオンラインバンクなどでIEを使って預金ができなかった、ということがないようにしないといけないからで、例えばWindows 7のサポートは購入後90日ですが、IEではいつでも電話のサポートを受けています。その点ではOSのサポートよりしっかりしています。
特に今回は、新しいWebブラウザが法人市場にどれだけインパクトがあるのか、ということを身にしみて感じています。」
次はInternet Explorer 10になるか
Internet Explorer 9でHTML5の一部機能が実装されない理由は、マイクロソフトとしては「安定したものだけを実装した」からだ、ということになります。以前の記事「Internet Explorer 9がHTML5のオフライン機能やWeb Workersを実装していないことをどう受け止めるか」でも、デベロッパからはIEに対しては安定性を望む声が多かったこともあり、理由としては妥当なものと言えそうです。
とはいえ、やはりInternet Exploere 9も他のブラウザ並みにHTML5準拠してほしいもの。すでにマイクロソフトの「Interoperability Bridges and Labs Center」というサイトのHTML5 Labsというコーナーでは、IndexDBとWebSocketのプロトタイプ実装が公開されているため、Internet Explorerにもいずれこれらの機能が実装されることは見えています。
それがいつ頃になるかといえば、記事には書いていないのですが、インタビューの中で、Internet Explorerは頻繁にバージョンをあげるわけにもいかないため、バージョン9.1や9.2といったアップデートがすぐ出ることはないだろう、という発言がありました。
ということは、新たな機能追加はおそらくInternet Explorer 10で行われることになるのでしょう。マイクロソフトは来月4月12日から、クリエイター向けのイベント「MIX11」を米国ラスベガスで開催予定ですから、おそらくそこでInternet Explorer 10についてなんらかのアナウンスがあるはず。
そこから約1年後、つまり来年の春頃にはInternet Explorer 10が登場するのではないかと予想しています。