知事からのメッセージ 令和2年3月10日
知事からのメッセージを紹介します。
令和2年3月10日のメッセージ
コンスピラシー
英語です。conspiracy、陰謀とか謀議とか訳します。日本語にするとちょっときついのですが、企みとか言うと、まあそんなもんかという言葉です。
通商摩擦を担当していますと、特に米国相手だと、すぐ先方が、これは日本政府やMITI(通産省)のコンスピラシーだろうと言って攻めてくるのです。
このコンスピラシーで先日面白いことがありました。
和歌山県では2月中旬から新型コロナウィルス感染症に関して、病院の院内感染が起こり、和歌山県を挙げて必死の努力で、何とか抑え込み、3月初めから当該病院は完全に正常化するに至っているのですが、それを聞きつけた米国の大手新聞、ニューヨークタイムズが取材をしたいと言ってきたのです。実際は、3月4日に電話取材を受けました。
初めは、私の記者会見の様子を連日見て、情報公開のやり方とトップマネジメントの姿が素晴らしいと支局内で評価しているので取材させてもらったと、当方を持ち上げて下さって、色々と聞かれました。
その内容は、他所では保健所がどんどんPCR検査を断っている中で、病院の関係者全員のPCR検査が和歌山では出来たが、それは何故出来たのかということから始まりました。私からは、病院がクリーンなことを皆に納得してもらうためにはそれが必要だと思って決断した。保健所は、私の部下だから、言うことは聞いてくれる。検体は国が協力して回してくれたし、検査可能数の制約は、県内の検査機関をフル回転させ、大阪府にも助力を頼んで何とか出来たと答えました。
次の質問は、和歌山に比べると、政府の対応でクルーズ船への対応とかこれはちょっとまずい対応だったとか支持できないという事はあるかというので、私が政府を批判する立場にはないし、加藤大臣は毎日一生懸命だし、安倍総理も全力投球ではないか、加藤大臣なんか検査も臨機応変でいいよと言っているのに、一番初めの国の指示をずっと変えないで従い続けていた他県の担当やその機関の方が、問題だったのかもしれない。ただ、最近国の方針だと言って報道されている、風邪症状の人は4日間は医療機関に行くなという点だけはおかしいと思う。今は安倍総理も学校を休校にするほど、感染を抑え込もうとしている時なのに、政府の専門家といわれる人が、感染が拡がりすぎて、もう抑え込むのは無理で、重症者を死から守ることが大事な状況に変わった時の対策を推奨しているのは論理的におかしいと言いました。和歌山では、風邪の人がいつも通りクリニックを受診する事を留め立てはしないが、治らないようだとレントゲンなどで肺炎を疑ってもらって、肺炎の人にはPCR検査をしてもらっている。そうすればリーズナブルな数の検査でコロナの早期発見、重症化防止が出来ると言ったわけです。
そうすると、質問が段々と尖ってきました。
「仁坂さんからご覧になって、国としてのトップマネジメントでうまく出来ていなかった、又はもう少しこうしたら良かったというのは他に何かありませんか」
私が「ありませんね。国も一生懸命やっているし、毎日説明していると思いますよ。全体として、皆で批判をしたってしょうがないじゃないですか。日本人はこういう時は皆で団結しなきゃと思います。」と言ったところ、ついにこの質問が来ました。
「国はPCR検査に消極的なように思われるが、国の研究所とか厚労省が意図的に感染者の数を低く抑えようとか、数として本当に出ないという事情があるのでしょうか」
私はそういう風に考えるんだなあと苦笑しつつ、「そんなことを考えるのはナンセンスではないですか。そういうコンスピラシーを考えるというのは、日本人は得意ではありませんからね。」と答えたところ、先方は「そうですね。アメリカ人は得意ですけど。」とおっしゃるので、「そこまでは言ってはおりませんよ。」と申し上げておきました。
どうもニューヨークタイムズの意図は、私に政府を批判させたいということであって、特に、日本政府は感染者の数を低く見せたいのでPCR検査をわざと多くさせないのだと言いたく、それを私に是認してほしかったのだと思います。やれやれと思った次第です。
この結果がどうなったか。言わずと知れたことですが、このインタビューは記事には全く引用されませんでした。すなわち没であります。インタビュアーからは忙しい時間を取らせて申し訳ない旨の謝罪メールがありました。
そして、記事はどうなったか。大略次のごとくです。
「コロナウィルスは、安倍総理が何もしないうちに日本の健康と経済に脅威となっている。PCR検査は近隣の国と比べても少ししかやらず、突然の学校休校発表で安倍総理は皆に大いに批判されているが、政府の措置が良くないのは安倍総理の長期政権で誰もものを言えなくなったからで、彼に代わりうる人もいない、その中での突然の休校宣言で安倍総理は自民党内を含む多くの批判を浴びている。安倍政権はどうなるのだろう。」
さらに、このニューヨークタイムズの記事を材料として、ニューヨークタイムズ2020年3月5日付けの見出しが、“Shinzo Abe,Japan’s Political Houdini,Can’t Escape Coronavirus Backlash”というユーモアか、ただの言い過ぎか分からないタイトルであったことから、『NYタイムズ紙「政界の脱出王」(Houdiniは脱出を得意とした手品師)呼ばわりの猛批判』という安倍総理を揶揄するようなネットニュースも現れました。日本人が海外の有名な人やニューヨークタイムズといった有名な物に弱いという特性に乗った取り上げ方だと思います。
日本もそうだし、世界中もこの新型コロナウィルス感染症に大変な影響を受けていて危機なのですから、こういう時こそ、誰が悪いとばかり言っていないで、力を合わせて危機を乗り越えることを考えれば良いのにと私は思います。
日本は何でもオープンな国です。色々紆余曲折をしていますが、日本全国皆コロナと戦うことで力を合わせて頑張っていると私は思います。
しかし、WHOも(そもそも、こんな人達が初め、中国はえらいとか、世界的には大したことが無いとか言ったのが問題だったのではないでしょうか)、世界中の国々も、日本が著しい感染国であるかのように言挙げをしています。政府も国民も大混乱しているのだとばかり言われ、従って日本からの渡航は厳しく制限というような措置が、世界中で他国にも感染が拡がっているのに、その他国に対する措置と比べて過大になされているような気がします。
他国はどうであれ、そして他国の人が何と言おうと、コンスピラシーなど日本では無縁、みんなで愚直に頑張って、力を合わせてコロナを抑え込みましょう。