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ORICON NEWS
「なぜTVerで配信しなきゃいけないの?」7年で各局のマインドに変化、視聴率に代わる新たな指標に
当初は海賊版・コピー防止でローンチ「YouTubeやVODを脅威と捉えてなかった」
「そもそもは海賊版コンテンツ、不正コピーの防止など、YouTubeで流されてしまうのであれば、公式にきれいな画像で見せようなどの目的で立ち上げられたのですが、7年前のローンチ時は、各局まだYouTubeやVODを脅威と捉えておらず、“なんでTVerやらなければいけないの?”といったマインドでした。ですが最近は、局内でも“TVerで流さないと”、“見逃し配信で見てもらわないと”と言われるようになってきました」(渡辺氏/以下同)
「現在のランキング上位はやはりドラマですね。10位中、8〜9番組を占めています。コンテンツ数で見ればバラエティが圧倒的に多いので、全体ではドラマとバラエティの視聴者が半々。バラエティにおいては『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など、ダウンタウンさんの番組が抜けて人気がある傾向にあります」
消えた民放各局のライバル関係、「テレビ観ない」若年層増加で業界に生まれた“結束力”
こうした幅広い世代を囲ったTVer定着の動きは、業界全体をも変化させた。現在、長澤まさみ主演ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)が放送中だが、これに合わせ、TVerでは『長澤まさみ特集』を展開。フジテレビ系だけでなく、他局も含めた長澤主演の過去ドラマを配信した。
地上波NGシーンや“消えた俳優”出演作も配信、日本ドラマ「名作継承」への想い
これは、視聴者が流れてくる作品を見るのではなく、自らが“取りに行く”感覚ゆえ、「観たくないものは再生しなければいい」という意識が定着しているからではないかと渡辺氏は推測している。コンプライアンスの強化により、地上波での表現がますます制限される中、若年層にもアプローチできるTVerで昭和・平成の名作ドラマを配信することは、世代を超えた“名作の継承”にも繋がる。
現在は、織田裕二主演『東京ラブストーリー』(1991)、篠原涼子主演『アンフェア』(2006)、山下智久主演『クロサギ』(2006)なども配信中。好きなものを、いつでも観に行ける場所であるというのは、VODサービスと同様だ。しかし、毎日大量のコンテンツが追加され、新作のみならず、過去の名作もリコメンドされる点は、TVer随一。テレビのように、“観に行ったら、気づいてない面白い作品や情報が得られた”という発見の場でもありたいと渡辺氏は語る。
「TwitterやYouTubeで、誰がいつ投稿したかわからない、情報が不確かなものが有象無象にある今こそ、正しい情報をリアルタイムで届けるというのもテレビの使命だと考えています。そうしたテレビ界と配信界はこれまで権利関係が別であり、バラエティの資料映像やVTRなどで、TVerでは“権利の関係で一部配信できません”と表示されていることがあります。そのあたりも、徐々に各局でTVerで流すことが前提の番組制作になりつつあるので、地上波と配信がつながり始め、クリアになっていくかと思います」
(取材・文=衣輪晋一)