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多様化する“子どもの趣味”、児童書は滅びゆく運命なのか? 「ビジュアル選考の時代だからこそ“文字で描かれる物語”を」

  • 児童文庫版『坊ちゃん』、「キミノベル」(c)ポプラ社

    児童文庫版『坊ちゃん』、「キミノベル」(c)ポプラ社

 近年、『鬼滅の刃』や『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』など、子どもたちのなかで読まれた漫画や児童書からヒットが生まれ、子ども向け作品の存在感が増している。そのようななか、『ズッコケ三人組』や『かいけつゾロリ』シリーズなど長年にわたって読み継がれる児童文学を生み出してきたポプラ社が、今年3月に新たな児童文庫レーベル「キミノベル」を創刊。創刊の背景にある児童書をめぐる状況の変化について、同編集長・門田奈穂子氏、編集担当・後藤正夫氏に聞いた。

“ダークさ”は流行コンテンツの鉄板、「わかりやすい魅力から、複層的な面白さへ誘いたい」

あらすじ紹介動画「試し読見」を公開し、本への興味の入り口を広げている (c)ポプラ社

あらすじ紹介動画「試し読見」を公開し、本への興味の入り口を広げている (c)ポプラ社

 ポプラ社では「ポプラ社文庫」(1976年)に始まり、「ポプラ社ポケット文庫」(2005年)と時代に合わせて児童文庫レーベルを刷新してきた。3度目のリニューアルとなる「キミノベル」創刊の背景について門田氏は、子どもたちに受け入れられるコンテンツの傾向に変化があることを説明する。

「娯楽の多様化で、子どもたちに向けて『何が売れるか』はなかなか読みにくい時代となっています。ただ現代は情報にあふれているせいか、子どもたちもスピード感重視といいますか、『怖い』『泣ける』『笑える』など直情的に面白さが判断できるコンテンツを選ぶ傾向にあるようです。」(門田氏)

 近年、子どもたちの間で流行したコンテンツと言えば『鬼滅の刃』や『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』など、暗めで「怖い」世界観の物語が目立った。しかし門田氏によると「ダークファンタジーは子どもたちを魅了する普遍の鉄板ジャンル」とのことで、これらのヒットも頷けるところがあるという。たしかに、江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズを夢中になって読んだという人も多いはずだ。

「キミノベルでは、入り口をわかりやすくして、まずは『読みたい』という気持ちを喚起することを大事にしています。一方で、物語の魅力は決してわかりやすい一言では語れないものです。複層的な面白さを経験し、本の魅力を知ってほしいですね」(門田氏)

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