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さくまあきら、“復帰作”でシリーズ最大の売上「もう一度、悔いのない『桃鉄』を作りたかった」

 時代を越えて愛される名作ゲーム『桃太郎電鉄』シリーズ。発売開始から30年を超え、4年ぶりの完全新作として発売された『桃太郎電鉄〜昭和 平成 令和も定番!〜』が、コロナ禍の巣ごもり需要も取り込み、累計販売本数(ダウンロード版を含む)250万本とシリーズ最大売上を記録した。シリーズ生みの親であり、一度は引退したものの復帰し、本作で総監督とゲームデザインを務めたさくまあきら氏と副監督の桝田省治氏が、本作の大ヒットの裏側を語った。

悔いのない『桃鉄』を作りたい…一度は引退したが後悔ばかり浮かんできた

――4年ぶりの新作となりました。株式会社コナミデジタルエンタテインメントの統括プロデューサーの岡村憲明氏が「僕の責任できちんと作れるスタッフや環境を整えますので、もう1回チャンスをいただけませんか」とさくまさんに懇願したとも言われています。新作が制作されることになった経緯について教えてください。

さくまあきら 御存知の通り、一度は引退しました。でも、引退してみると、あの物件を入れ忘れたとか、あのイベントをまだやっていないとか、後悔ばかり浮かんできたので、私のほうからコナミさんにお願いしたんです。もう一度、悔いのない『桃鉄』を作りたかった。去年の正月に心筋梗塞で倒れたのは、仕様書を書き上げた直後でした。やりきって満足したんでしょうね。

――本作のサブタイトル『〜昭和 平成 令和も定番!〜』はとてもシンプルです。

さくまあきら 桝田省治さんのアイデア。広告代理店の出身なので、サブタイトルは彼におまかせです。『桃鉄』という言い方も彼からです。

桝田省治 数年前にシステムも見た目も『桃鉄』に似たボードゲームが発売されました。『桃鉄』と完成度の差は歴然でしたが、それはプレイしてみないと見えにくい。プレイする前から訴求できる差別化ポイントは、30年以上の実績や信頼、そして知名度。これがもっとも伝えやすい差別化ポイントと判断し、現状のサブタイトルに決めました。

――『桃鉄』といえば、サザンオールスターズの関口和之さんの曲が印象的でしたが、本作では音楽制作スタッフとしてヒャダイン(前山田健一)さんを新たに起用しています。

さくまあきら 関口和之くんにはもう30数年、曲を作ってもらっていて、いまや『桃鉄』の顔です。ヒャダインくんは『桃鉄』のおかげで京都大学に入学したというエピソードを聞いて、依頼しました。娘が彼の曲は『桃鉄』に合うと言っていたのも大きいです。以前から『桃鉄』の音楽を作っていたかのように、ピッタリの曲を作ってくれて。デストロイ号では、新しい局面も見せてくれました。

変わらないのが『桃鉄』 新作ごとに変わるのは2割だけ

――コナミ作品としては例外的に、個人のプレイ動画配信が公式に認められています。YouTubeでも多く動画が公開されていますが、ヒットに繋がった要因でもありますか?

桝田省治 動画を配信しているゲームは『桃鉄』以外にもたくさんあり、その大半が『桃鉄』のような売れ方はしていません。ゆえに動画配信を承認したからヒットにつながったという分析は短絡的です。ただし、他のゲーム配信と同様に『桃鉄』に“観る”という楽しみが加わったことは確かです。データの解析が終わっていないので確実なことは言えませんが、『桃鉄』のプレイ動画は圧倒的に「笑い声が聞こえる」から他のゲーム動画よりも癒される、という仮説を立てています。

――累計販売本数(ダウンロード版を含む)が250万本を突破。コロナ禍の巣ごもり需要もあるかと思いますが、シリーズ最大の売上となりました。

さくまあきら 4年ぶりの新作で、キャラクターの一新、音楽の一部刷新があったほか、ユーザーが大人になって、子どもと一緒にやりやすくなったり、リモートで同窓会ができたりすることが要因のひとつでしょうか。また、テレビで『日本一周! #リアル桃鉄』(TBS系)が放送されたり、人気YouTuberたちが「3年決戦」の対決を配信したりして、話題が広がったこともあります。でも、たまたまと偶然の重なり合いでしょう(笑)。

――『桃鉄』といえば、子どもたちが放課後に友だちの家に集まって遊んだりと、多くの人が知っている“国民的ゲーム”のひとつです。長きに渡り愛される理由はどんなところだと思いますか?

さくまあきら 新作のたびに2割を変えて、あとは変えない。できるだけルールは変えないので、やりやすいんじゃないでしょうか。

――たしかに発売当初より基本的なルールはほとんど変わらず、極めてシンプルです。本作で変わった点がありましたら教えてください。

さくまあきら 変わらないのが『桃鉄』ですから。ただ「☆飛びカード」で選べる駅が減ったり、「物件飛びカード」で目的地まで何マスかといった細かい改良はしています。

――ゲーム内容は変わりませんが、オンライン対戦といった新しいゲーム環境が加わりました。

桝田省治 まず近い将来、ネットを介した対戦が『桃鉄』においても大きな比重を占めるという予測を立てました。今回の具体的な目標は、リアルの対人戦と同じようなプレイ感覚をネット対戦で実現すること。さらには、より快適なネット対戦を実現するためのテストとデータ収集。これらの変更や追加の多くは、ユーザーから見えない箇所です。一方、たとえば「寝落ち」したプレイヤーに代わり自動的にCPUがゲームを継続する機能や、会話の代わりにユーモラスなスタンプを送る機能などはわかりやすい変化だと思います。
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