2022年12月にスタートした動画配信サービス・DMM TVで、オリジナル番組を制作した佐久間宣行と藤井健太郎。“地上波では流せないコント番組”として話題の佐久間の「インシデンツ」、クロちゃんが首まで地面に埋まったキービジュアルに注目が集まる藤井の「大脱出」が作られることになった発端から、お互いの番組を見て感じたこと、それぞれの番組で肝になっているシチュエーションや役柄×出演者という組み合わせの妙について話を聞いた。
■それぞれの作品に抱いた感想「ワクワクと不穏な要素」「テレビじゃない、配信メディアに向いている」
――今回おふたりが制作された「インシデンツ」「大脱出」は、新しくスタートするプラットフォームであるDMM TVでのオリジナル番組というオファーから、どのように番組作りがスタートしたのでしょうか。
佐久間 僕はDMM TVのコンセプトが固まる前の段階で、お話をいただいたんで、どういう顧客層を取ろうとしているのか、同時に配信される作品がどういうものかを聞いた上で、8つくらい企画を持っていったんですよね。めちゃくちゃ狭い範囲の芸人のショーレースみたいなものから、芸人さんも関係ないリアリティーショーのような企画などがあった中で、初めから「地上波で放送できないコント番組『インシデンツ』」は入れてあって。そこから「できればこれで」とDMMさんに選んでいただいた形です。
藤井 僕は、クロちゃんを首まで埋めるのはずっとやりたくて、でも地上波には適合しなかったんですよ。だから今回も、地上波に出すCMではその画は使えないみたいですけど。バラエティー番組だと何話か見ないと全体像がわからないものってあまりないので、だったら少しストーリーが長めにあるもので、6話を通しての見終わり感とかを肉付けして考えた感じですかね。
――お互いの作品をご覧になった感想を教えてください。
佐久間 「大脱出」はまだ3話までしか見ていないんだけど、1話で「これ、どういうふうにするんだろうな」と思って、2話でルンバが出てきたときにすごくワクワクしましたね(笑)。「うわ、さすがだな」というか。
藤井 でも3話だと、どう終わるかは全然わかんないですよね(笑)。
佐久間 全然わかんないね。でも6話までに何かあるんだろうなとは思ったし、ワクワクする要素と不穏な要素が散りばめられているのが藤井さんの作品だなとすごく感じたので……そうですね、全部見たほうがいいんじゃないですかね(笑)。
藤井 僕、何度も言っていると思うんですけど、佐久間さんの作品で「SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜」がすごく好きで、似て非なるになるものではあると思うんですけど、「インシデンツ」は大きく分けたら近いジャンルのものなので、楽しく見させていただきました。今回でいうと6回見てわかることもあるし、ストーリーが本格的でだいぶ複雑でもあるから、そういう意味では集中して見ることも求められるので、まさにテレビじゃない、こういう配信メディアに向いている作品だなと思いました。
■互いに真似できない部分は? 6話制作の良さは「タイトにやりたいことができる」
――お互いに、ここは真似できないなと感じた部分はありますか?
佐久間 いや、オレは全然真似できないですよ。藤井くんの番組は。
藤井 そうなんですか?(笑)
佐久間 そもそも僕は配信でやっと1000万円を超える予算を使ったんですよ。テレ東でお笑いの番組は500万以下しかほとんどないですからね。あと、ダウンタウンに会ったら緊張しちゃうし(笑)。僕は基本的には同世代か、ちょい上くらいしか仕事していないんですよ。加藤浩次、東野幸治が限界。一緒に育ったタイプの芸人さん以外は緊張しちゃうんで、「ダウンタウンと仕事してくれ」と言われたとしても「水曜日のダウンタウン」みたいな面白いVTRを見せるという形式を多分選べないと思う。あと好きなものの文脈が全然違って、僕は演劇やアニメとかのカルチャーが好きなので、必然的にそういうものに寄っていくんですけど、藤井さんは格闘技やヒップホップ、あとは謎解きやミステリーとか。でも謎解きは好きなわけじゃなくて、そこが得意なスタッフが多いのか。
藤井 自分が好んで見たりするかというと別に見てないですけど、作るときにはそういう謎解き風の要素が入ることが多いかもしれないですね。
佐久間 多いよね。俺はそういうゲームに近いものとか、ルール作りみたいなことができないんですよね。
藤井 確かに、毎週ルールを考えています(笑)。僕は「ドリームマッチ」とかではありますけど、コント撮りをちゃんとはやったことがないし、一から十までのお話を作るみたいなこともあんまりないので、そこの感覚はあんまりわからないですね。今回の「インシデンツ」もそうだし、「ウレロ」みたいなパターンの番組もあるし、大きく言えば「キス我慢」(「ゴッドタン」の人気企画)もそうだし。
佐久間 確かにそうだ。そういうストーリーのあるものを結構やっている。
藤井 僕もパーツではあるかもしれないんですけど、それが全体ってのはやったことがないので。
佐久間 でも「名探偵津田」(「水曜日のダウンタウン」で放送されたダイアン津田篤宏の企画)はそうじゃん。
藤井 たしかに、ある種「キス我慢」的でもあるかもしれないですね(笑)。
佐久間 あれは津田のスケジュール待った理由がわかるね。
藤井 あれは津田さんでしかないと思って。見えちゃったから、もうこの人しかないなって瞬間、ありますよね。
佐久間 あるある。
――今回はそれぞれ6話で制作されていますが、単発ではなく通して1作品になっている続きもの、尺の自由さがある中で、作る上での難しさや面白さを感じることはありましたか?
佐久間 僕の場合はシリーズ構成を立ててから作ったんで、そこから6話に合わせて何を見せるかを考えて。地上波だと実験番組なら6話完結もあるけど、大体12話とかになっちゃうんで結構持て余すんですよね。でも最近はドラマも12話はあまりなくて、10話から8話くらいが適切に、飽きずに作れるなと思っていたので、6話だとタイトにやりたいことができるなと思いました。あと僕はいろんな場所で配信番組を作ってみて、1話から2話の離脱率が高いなと思ったので、今回は新しいサブスクの場所だから「1話の終わりにびっくりさせる」という自分の中でのルールだけ決めて、ああいう形式にしたという感じです。実際の離脱率はわかんないですけど、1話でびっくりして入ってきてくれた人はすごく多かったので、今回はうまくいったんじゃないかなとは思うんですけど。
藤井 僕はもともとクロちゃんで1話、別の人で2話みたいな一話完結のスタイルで進んでいきながら展開があるという形を考えていたんです。でも編集して違うなと思ってカットバックにしたんですけど、やっぱり6話まで見てカタルシスがあるというか、見終わり感がいいものにしたいなとは思っていましたね。普段は1オンエアごとの区切りで番組を作っていて、話数やゴールが決まっている作品をやったことがなかったので、こういうところでやらせてもらうなら、全体を貫くストーリーのようなものがある番組にしたいなとも思っていました。
――今回は配信サービスの番組なので、繰り返し見たり、好きな部分だけを見るという楽しみ方もあるかと思います。そういったことを意識された部分はありましたか。
佐久間 4話を見たら1話のブリッジの意味がわかるとか、作り方の部分ではもちろん考えました。
藤井 佐久間さんがおっしゃったようなつながりうんぬんということも当然あるとして、地上波の番組でも録画して何度も見るものもあれば、良いかどうかは別にして何らかのかたちで永遠に残っちゃうものもあるじゃないですか。僕の番組でいうとコウメ太夫(「テベ・コンヒーロ」で放送された「コウメ大夫で笑ったら芸人即引退」)とかは放送から10年以上経っているのに見ようと思えば今でもたぶん見られるわけで、そういうことは一応想定しながら作っていますし、繰り返し見てはなかったとしても「この番組のこのシーン」って強烈に覚えているものがあるじゃないですか。そういう、ずっと記憶に残るようなオンエアを出せるようにということはいつも意識していますかね。
■それぞれの作品に抱いた感想「ワクワクと不穏な要素」「テレビじゃない、配信メディアに向いている」
――今回おふたりが制作された「インシデンツ」「大脱出」は、新しくスタートするプラットフォームであるDMM TVでのオリジナル番組というオファーから、どのように番組作りがスタートしたのでしょうか。
佐久間 僕はDMM TVのコンセプトが固まる前の段階で、お話をいただいたんで、どういう顧客層を取ろうとしているのか、同時に配信される作品がどういうものかを聞いた上で、8つくらい企画を持っていったんですよね。めちゃくちゃ狭い範囲の芸人のショーレースみたいなものから、芸人さんも関係ないリアリティーショーのような企画などがあった中で、初めから「地上波で放送できないコント番組『インシデンツ』」は入れてあって。そこから「できればこれで」とDMMさんに選んでいただいた形です。
藤井 僕は、クロちゃんを首まで埋めるのはずっとやりたくて、でも地上波には適合しなかったんですよ。だから今回も、地上波に出すCMではその画は使えないみたいですけど。バラエティー番組だと何話か見ないと全体像がわからないものってあまりないので、だったら少しストーリーが長めにあるもので、6話を通しての見終わり感とかを肉付けして考えた感じですかね。
――お互いの作品をご覧になった感想を教えてください。
佐久間 「大脱出」はまだ3話までしか見ていないんだけど、1話で「これ、どういうふうにするんだろうな」と思って、2話でルンバが出てきたときにすごくワクワクしましたね(笑)。「うわ、さすがだな」というか。
藤井 でも3話だと、どう終わるかは全然わかんないですよね(笑)。
佐久間 全然わかんないね。でも6話までに何かあるんだろうなとは思ったし、ワクワクする要素と不穏な要素が散りばめられているのが藤井さんの作品だなとすごく感じたので……そうですね、全部見たほうがいいんじゃないですかね(笑)。
藤井 僕、何度も言っていると思うんですけど、佐久間さんの作品で「SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜」がすごく好きで、似て非なるになるものではあると思うんですけど、「インシデンツ」は大きく分けたら近いジャンルのものなので、楽しく見させていただきました。今回でいうと6回見てわかることもあるし、ストーリーが本格的でだいぶ複雑でもあるから、そういう意味では集中して見ることも求められるので、まさにテレビじゃない、こういう配信メディアに向いている作品だなと思いました。
■互いに真似できない部分は? 6話制作の良さは「タイトにやりたいことができる」
――お互いに、ここは真似できないなと感じた部分はありますか?
佐久間 いや、オレは全然真似できないですよ。藤井くんの番組は。
藤井 そうなんですか?(笑)
佐久間 そもそも僕は配信でやっと1000万円を超える予算を使ったんですよ。テレ東でお笑いの番組は500万以下しかほとんどないですからね。あと、ダウンタウンに会ったら緊張しちゃうし(笑)。僕は基本的には同世代か、ちょい上くらいしか仕事していないんですよ。加藤浩次、東野幸治が限界。一緒に育ったタイプの芸人さん以外は緊張しちゃうんで、「ダウンタウンと仕事してくれ」と言われたとしても「水曜日のダウンタウン」みたいな面白いVTRを見せるという形式を多分選べないと思う。あと好きなものの文脈が全然違って、僕は演劇やアニメとかのカルチャーが好きなので、必然的にそういうものに寄っていくんですけど、藤井さんは格闘技やヒップホップ、あとは謎解きやミステリーとか。でも謎解きは好きなわけじゃなくて、そこが得意なスタッフが多いのか。
藤井 自分が好んで見たりするかというと別に見てないですけど、作るときにはそういう謎解き風の要素が入ることが多いかもしれないですね。
佐久間 多いよね。俺はそういうゲームに近いものとか、ルール作りみたいなことができないんですよね。
藤井 確かに、毎週ルールを考えています(笑)。僕は「ドリームマッチ」とかではありますけど、コント撮りをちゃんとはやったことがないし、一から十までのお話を作るみたいなこともあんまりないので、そこの感覚はあんまりわからないですね。今回の「インシデンツ」もそうだし、「ウレロ」みたいなパターンの番組もあるし、大きく言えば「キス我慢」(「ゴッドタン」の人気企画)もそうだし。
佐久間 確かにそうだ。そういうストーリーのあるものを結構やっている。
藤井 僕もパーツではあるかもしれないんですけど、それが全体ってのはやったことがないので。
佐久間 でも「名探偵津田」(「水曜日のダウンタウン」で放送されたダイアン津田篤宏の企画)はそうじゃん。
藤井 たしかに、ある種「キス我慢」的でもあるかもしれないですね(笑)。
佐久間 あれは津田のスケジュール待った理由がわかるね。
藤井 あれは津田さんでしかないと思って。見えちゃったから、もうこの人しかないなって瞬間、ありますよね。
佐久間 あるある。
――今回はそれぞれ6話で制作されていますが、単発ではなく通して1作品になっている続きもの、尺の自由さがある中で、作る上での難しさや面白さを感じることはありましたか?
佐久間 僕の場合はシリーズ構成を立ててから作ったんで、そこから6話に合わせて何を見せるかを考えて。地上波だと実験番組なら6話完結もあるけど、大体12話とかになっちゃうんで結構持て余すんですよね。でも最近はドラマも12話はあまりなくて、10話から8話くらいが適切に、飽きずに作れるなと思っていたので、6話だとタイトにやりたいことができるなと思いました。あと僕はいろんな場所で配信番組を作ってみて、1話から2話の離脱率が高いなと思ったので、今回は新しいサブスクの場所だから「1話の終わりにびっくりさせる」という自分の中でのルールだけ決めて、ああいう形式にしたという感じです。実際の離脱率はわかんないですけど、1話でびっくりして入ってきてくれた人はすごく多かったので、今回はうまくいったんじゃないかなとは思うんですけど。
藤井 僕はもともとクロちゃんで1話、別の人で2話みたいな一話完結のスタイルで進んでいきながら展開があるという形を考えていたんです。でも編集して違うなと思ってカットバックにしたんですけど、やっぱり6話まで見てカタルシスがあるというか、見終わり感がいいものにしたいなとは思っていましたね。普段は1オンエアごとの区切りで番組を作っていて、話数やゴールが決まっている作品をやったことがなかったので、こういうところでやらせてもらうなら、全体を貫くストーリーのようなものがある番組にしたいなとも思っていました。
――今回は配信サービスの番組なので、繰り返し見たり、好きな部分だけを見るという楽しみ方もあるかと思います。そういったことを意識された部分はありましたか。
佐久間 4話を見たら1話のブリッジの意味がわかるとか、作り方の部分ではもちろん考えました。
藤井 佐久間さんがおっしゃったようなつながりうんぬんということも当然あるとして、地上波の番組でも録画して何度も見るものもあれば、良いかどうかは別にして何らかのかたちで永遠に残っちゃうものもあるじゃないですか。僕の番組でいうとコウメ太夫(「テベ・コンヒーロ」で放送された「コウメ大夫で笑ったら芸人即引退」)とかは放送から10年以上経っているのに見ようと思えば今でもたぶん見られるわけで、そういうことは一応想定しながら作っていますし、繰り返し見てはなかったとしても「この番組のこのシーン」って強烈に覚えているものがあるじゃないですか。そういう、ずっと記憶に残るようなオンエアを出せるようにということはいつも意識していますかね。
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2023/02/24