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低迷する文庫市場に光明 女性読者が支える“時代小説”

女性読者が増えた要因とは?

3/25付オリコン週間文庫ランキング(集計期間:3月11日〜3月17日)

3/25付オリコン週間文庫ランキング(集計期間:3月11日〜3月17日)

 部数減が叫ばれる書籍市場の中で、文庫市場は厳しい立場に置かれている。オリコン調べによる年間書籍市場規模では、文庫市場は2010年以降8年連続で前年の売上を下回る結果に。そんな厳しい市場のなか、光明になっているのが、時代小説だ。直近となる3/25付週間文庫ランキングでは、5.2万部を売り上げ、佐伯泰英氏の『夢を釣る 吉原裏同心抄 五』が1位を獲得。TOP20の中に時代小説が7作もランクインするという状況になっている(表1)。この背景にはいったいどんな要因があるのか、時代小説専門のコーナーもある紀伊國屋書店 新宿本店の吉野裕司氏、竹内美智代氏に話を聞いた。
  • 紀伊國屋書店 新宿本店の時代小説コーナー

    紀伊國屋書店 新宿本店の時代小説コーナー

竹内時代小説のファンの方は男性の年配の方が多いので、まだ電子書籍化せずに文庫本でお求めになる方が多いということが1つあると思います。ただそれだけではなく、近年は女性読者の方が増えたことが要因としてあると思います。

 時代小説というと、50代以上の男性のファンが多い印象だが、近年は女性読者も増えているという。竹内氏は、考えられるその理由の1つ目に「グルメ」を挙げてくれた。

竹内1つは、時代物なんだけど、食べ物を取り扱った作品が増えたこと。その点が女性にとって身近で手にしやすいテーマなのかなと思います。
吉野『みをつくし料理帖』シリーズは、特に人気ですね。NHKのドラマになって火がついて、そこから時代物×料理の作品が増えたと思います。
竹内女性の主人公の話が多いので共感しやすいというのはあると思います。併せて、『みをつくし料理帖』にはレシピも付いているので、今の感覚で実際に作れたりもする。30代以上の女性がお求めになるケースが多いので、実際に作られているのかなと思います。

2つ目の理由は歴史好き女性(歴女)の流入

  • (写真左)紀伊國屋書店 新宿本店 竹内美智代氏 (写真右) 紀伊國屋書店 新宿本店 次長 兼 第二課長 兼 第二課フロア店長 吉野裕司氏

    (写真左)紀伊國屋書店 新宿本店 竹内美智代氏 (写真右) 紀伊國屋書店 新宿本店 次長 兼 第二課長 兼 第二課フロア店長 吉野裕司氏

 2つ目の理由として挙げてくれたのが、本ではない他のメディアからの、歴史好き女性(歴女)の流入だ。

竹内戦国を舞台にしたゲームや2.5次元の舞台、例えば刀剣乱舞などで、歴史を知って武将のファンになって、時代小説に行き着くというケースも多いですね。そういうところから入ってくる人は20代、30代の女性で知識も深い。刀剣きっかけで、舞台化された作品の原作を購入された若い女性も多かったです。
吉野NHK大河ドラマの「真田丸」の時もすごかった。戦国はもちろんなんですけど、新選組などの幕末や源氏と平家の戦いなど、動乱の時代にはファンが多いですね。昨年、教科書などではあまり扱われない岡田以蔵を描いた作品が、FGO(ゲーム)の影響で急に動いたりしましたね。
竹内いい男が出てくる、熱い戦いものに女性が反応するのは納得ですね。

複合的な要因で女性読者増。今後の課題は?

 この大きな要因に加えて、このほかにもさまざまな要因が複合的に重なった結果、女性読者が増えたのではないか、と推測する。

竹内これ以外にも、装丁がきれいで女性が手に取りやすいものが増えたこと。ひと昔前に比べて、時代物を描く女性の作家さんが増えたこと。時代小説専門ではなく、ほかのジャンルで活躍している作家さんが、時代物の作品を手がけるようになったこと。作家自身がSNSなどを使って発信できるようになったことなどの複合的要素が重なったことも、女性読者が増えた要因として挙げられると思います。

 このように着実に読者層を広げている時代小説だが、今後さらに時代物を盛り上げ、ひいては文庫市場を盛り上げていくための課題とは?

竹内男性の若い世代の読者が増えることが一番ですね。これまで歴史って、男性が好きなことが多かったんですけど近年は、女性のほうが圧倒的に多い。若い男性がもっと歴史を面白がって時代物の小説を読んでくれるようになると、市場ももっと盛り上がると思います。

 ただし、こうした課題においても女性層への拡大は好材料といえる。時代小説の好況は女性層から若い男性へ広がっていくことも大いに期待させる。いまだその炎は中火といったところ。本年さらにこのジャンルは盛り上がりを見せていきそうだ。

提供元: コンフィデンス

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