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家計の円売り、はや前年上回る 新NISAで1〜5月5.6兆円

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「家計の円売り」が加速している。1〜5月の国内の投資信託運用会社などによる海外投資は5.6兆円超の買い越しとなり、2023年通年の4.5兆円を早くも上回った。新NISA(少額投資非課税制度)を通じた個人の海外投資の拡大が反映された。

個人が外国株型の投信を買う場合、円を売ってドルを買うなどの取引が発生し、円相場の押し下げ要因になる。日米の金利差が縮んでも、実需の円売りはなお勢いが続くとの見方が多い。

財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、国内の投資信託委託会社や資産運用会社による対外証券投資は5月に1兆3719億円の買い越しだった。1月の1兆2936億円を上回り、単月の過去最大を更新した。

1〜5月の累計では5兆6388億円の買い越しとなり、23年の4兆5454億円を上回った。このペースが続けば、24年通年では13兆円の買い越しになり、15年の6兆8323億円を上回って年間最高を更新する。

背景にあるのが24年1月に始まった新NISAだ。非課税の期間制限をなくして恒久化し、非課税枠も最大1800万円に引き上げた。

5カ月間の累計の商品別の内訳を見ると、新NISAによる個人の海外投資を映す「株式・投資ファンド持ち分」が5兆1634億円の買い越しで全体の9割を占める。「短期債」と「中長期債」の買越額はそれぞれ1210億円、3545億円にとどまる。

新NISAで最も買われている投信は三菱UFJアセットマネジメントの全世界株式型投信「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)だ。投資先の6割が米国株で、1〜5月の資金流入額は1兆1448億円と前年同期比で約5.7倍に膨らんだ。

オルカンの運用部隊は新規マネーが流入する度に、毎朝円を外貨に替える。海外株の購入資金を確保する目的の円売りのため、為替水準は関係ない。複数の銀行に円売り・外貨買い注文を出し、1日に1千億円を超えることもある。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは為替ヘッジもあるため、5.6兆円のすべてが円売りとは言えないものの「年初来の円安相場に関係がないと考えるのは難しい規模になってきた」と語る。その上で「従来の機関投資家をしのぐ円売り主体が生まれたとみることもできる」と指摘する。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金運用は資産構成割合(ポートフォリオ)を定めている。一方で、新NISAによる家計の円売りは毎月定額を投資するケースが多く、過去の円売り主体と比べて持続性は高いとみられる。

米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動けば、米株式市場の株高要因になる。そうなれば家計の海外投資が加速する可能性がある。日米金利差が縮小して投機筋による円売り攻勢が落ち着いても、構造的な円安圧力はむしろ高まりかねない。

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