財政状況で円安再燃も 円買い介入、22年10月に2日間
財務省は7日、2022年10月21日と24日に円買い・ドル売りの為替介入を実施したと発表した。いずれも直後には公表しない「覆面介入」だった。21日の介入額は5兆6202億円で、1日あたりの円買い介入で過去最大だった。介入による円安抑制は一時しのぎの面もあり、財政状況の悪化などで円の信認が揺らげば、円安が再燃する可能性はある。
22年10~12月の為替介入の日次実績を公表した。政府・日銀は急速な円安を受けて24年ぶりに踏み切った9月22日に続き、10月に立て続けに介入していた。10月24日の介入額は7296億円だった。9月22日と合わせた9~10月の介入額は9兆1880億円となった。11~12月は介入していない。
10月21日は円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。週末を挟んだ24日も一時1ドル=149円台後半まで下げた後、介入によって145円台まで急騰した。
鈴木俊一財務相は7日の記者会見で「投機による過度な変動に適切に対応する観点でおこなった。一定の効果があったと考えている」と述べた。
10月21日は日本時間の深夜、24日は早朝と為替介入への警戒が薄い時間帯だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は「市場が油断している時間を狙った『奇襲』で、投機筋によるその後の円売りをちゅうちょさせる点では効果はあった」と説明する。
10月下旬以降は米国のインフレ鈍化や景気減速懸念が浮上し、大幅な利上げ観測が後退した。外国為替市場で日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いが減少したことも円高・ドル安を促した。
市場をゆがめる介入は本来、望ましいことではない。為替の短期的かつ急激な変動抑制を目的とした介入が為替の変動をかえって高めたとの指摘もある。介入の有無に市場の注目が集中し、市場参加者が取引を手控えるなど流動性も低下した。
国内証券の市場関係者は「当局が投機筋との攻防に終始し、円安で苦しむ輸入企業などへのサポートにつながらなかった」と指摘する。
円相場は足元で1ドル=130円台前半と10月21日につけた151円台からは20円程度の円高水準で推移しているが、中長期的な円安リスクの再燃への警戒は根強い。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「エネルギーの対外依存度の高さや持続的な賃金上昇が見込めない状況は変わっておらず、課題に向き合い続ける必要がある」と訴える。
先進国で最悪の財政状況や長引く低成長も円が売られやすい要因となる。介入に頼らなくてすむような改革が求められる。
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