「電磁波で健康被害」認めず 携帯基地局訴訟で宮崎地裁支部
宮崎県延岡市の住民30人が、携帯電話中継基地局の電磁波が原因で健康を害したとして、KDDI(東京)に基地局の運用差し止めを求めた訴訟の判決で、宮崎地裁延岡支部は17日、住民に耳鳴りや頭痛などの症状があることは認めたが「電磁波と健康被害との立証は不十分だ」として請求を棄却した。
判決理由で太田敬司裁判長は、世界保健機関(WHO)が「電磁波過敏症は健康被害への恐れから起こるストレス反応の可能性がある」と指摘したことを挙げ、住民について「反対運動などを通じて健康被害を意識したり、症状への意識が主観的に増幅されたりした可能性がある」と判断。
人が電磁波の強弱を感知できるかには疑問があるとも述べ「電磁波への不安感が影響した可能性もある」とした。
さらに原告住民3人を診断した医師の所見書にも「問診結果を主な根拠としており、医学的意見としての価値はない」とし「症状は電磁波による健康被害だと認定はできず、因果関係は認められない」と結論づけた。
判決によると、問題の基地局は延岡市内の住宅街にある3階建てマンションの屋上に設置され、2006年10月末に運用が始まった。
住民側は「運用後しばらくして頭痛や耳鳴りなどの症状が出た」と主張。KDDI側は症状があること自体に疑問を投げ掛け「基地局からの電磁波は国の指針値内であり、健康に悪影響はない」と反論していた。
原告側は閉廷後に延岡市内で記者会見。原告団長の岡田澄太さん(64)は「いちるの望みを託した裁判所が暴論を並べ、請求を一刀両断に切り捨てている」と憤った。〔共同〕