経済波及効果、試算3兆円 コンパクト五輪実現
東京で開かれる2020年五輪の会期は7月24日~8月9日。28競技の熱戦が37競技場で繰り広げられる。成熟した都市インフラを活用し、コンパクトな会場配置で選手本位の大会とする計画で、今後7年間で新設が必要な競技場建設などの準備を進める。都などは直接的な経済波及効果を約3兆円と試算。民間では最大150兆円規模との見方もある。
東京招致委員会の開催計画によると、開会式は20年7月24日午後8時から、約8万人収容に建て替える新国立競技場(オリンピックスタジアム、東京・新宿)で開く。
先行して1次リーグが始まる男女サッカー以外の競技は翌25日から。国際オリンピック委員会(IOC)が高く評価したのがコンパクトな会場配置。サッカーを除く33会場は東京圏に配置され、うち85%の28カ所は臨海部の晴海地区(東京・中央)にできる選手村から半径8キロメートル圏内に置く。
大きく2つのエリアに分かれ、1964年大会で使った東京体育館など既存施設が中心の内陸部は「ヘリテッジ(遺産)ゾーン」と呼ばれる。国立競技場は約1300億円を投じ、収容5万4千人の現競技場を開閉式屋根付きに建て替える。19年に完成する予定。近未来的なデザインで流線形の外観を特徴とする。
新しい施設が中心となる臨海地区は「東京ベイゾーン」だ。水泳の会場となる「アクアティクスセンター」(2万席)などの大規模施設の建設が相次ぎ、東京の都市の姿は大きく変わる。
五輪に続き、8月25日~9月6日にはパラリンピックが開かれる。
施設の総工費は4554億円を見込む。さらに大会運営費、観客らの宿泊・交通・買い物、テレビの買い替え、地価の上昇……。五輪は世界からヒト・モノ・カネを呼び込み、日本経済再生の起爆剤になり得る。
都などの試算では、13~20年の7年間で国内経済にもたらす直接の経済波及効果は約3兆円。約15万人の雇用を創出すると予測する。業種別ではサービス業が6510億円と最大で建設業(4745億円)、商業(2779億円)と続く。企業の設備投資も増えるとみられ、金融・保険業も1178億円とはじく。
経済効果はさらに膨らむとの見方もある。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは今後7年間に観光産業が倍増すると想定し、経済効果は約95兆円と分析する。安倍政権の国土強靱(きょうじん)化計画が進めば約55兆円の効果を見込めるため総額150兆円規模になるとする。
東京五輪のビジョンは「Discover Tomorrow(未来をつかむ)」。バブル崩壊後の沈滞ムードを打破するとの思いを込めた。東日本大震災から立ち直った姿の発信も重要なテーマ。聖火リレーは東北の被災地から東京へ向かう。サッカー会場の一つには宮城スタジアムを使う。各国選手団の事前合宿も誘致する計画だ。
熱戦を支えるのは充実した交通インフラや治安の良さ。1日当たり約2570万人が利用する鉄道網は運行時間の正確さを世界に誇る。選手や大会関係者を円滑に輸送するため、成田空港や選手村などを結ぶ高速道路や主要道に専用車線「オリンピックレーン」(約317キロメートル)も設ける。
「世界で最も先進的で安全な都市の一つ」(都幹部)である東京。猪瀬直樹知事は招致活動で「財布を落としても現金が入ったまま戻ってくる」と繰り返し強調した。大会期間中は警察官や民間警備員、ボランティアなど5万人強のセキュリティー要員を配置する。