室蘭製油所を停止、石化工場に転換 JXエネ
JX日鉱日石エネルギーは2日、2014年3月に室蘭製油所(北海道室蘭市)の石油精製設備を停止すると正式発表した。同製油所の日量18万バレルの精製能力を削減し、アジアで需要が伸びる石油化学品の原料製造能力を高める。石油元売り各社は従来の内需減の対応に加え、アジア企業との競合も想定した投資が必要になっている。最大手の決断で業界の構造転換が加速しそうだ。
室蘭製油所の精製能力はグループの13%に当たる。室蘭停止後の計7製油所の稼働率は、定期修理による稼働停止を除いたベースで現状の90%からほぼ100%に高まる。同日室蘭市内で会見した一色誠一社長は「国内トップの競争力を備えた製油所体制を構築する」と強調した。
JXエネは10年の経営統合前に日量180万バレルあった精製能力を14年3月までに同60万バレル削減するとしていた。これまでの能力削減と室蘭停止で合計同58万バレルとわずかに届かないが、一色社長は「14年3月まで追加削減はない」と明言した。
精製設備停止後、室蘭は石化工場と位置付け数十億円を投資。14年6月までにポリエステルやペットボトルに使われるパラキシレンの原料製造装置を増強する。従業員は256人から200人程度にするが、減少分は配置転換などで対応する。
JXエネは14年に韓国石油最大手SKイノベーションと、韓国・蔚山広域市でパラキシレンの合弁生産を始める計画。日本で需要が減る石油を化学用途などに転用し、国内の稼働率を維持する。
また自動車部品・電子機器などに使う樹脂の原料となる化学品「キュメン」の製造は続ける。さらに油槽所機能も残し、自社の他の製油所から製品を海上輸送する。苫小牧市に製油所を持つ出光興産との製品融通もしており、道内向けのガソリンや灯油など製品供給には支障はないという。
同社は室蘭停止に伴い13年3月期に特別損失を計上する見通し。金額は明らかにしていない。
政府は「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、13年度末までに石油会社に実質的な精製能力削減を義務付けている。大手ではすでに出光興産とコスモ石油も停止を決定。09年3月の新日本石油(当時)の富山製油所(富山市)から、JXエネ室蘭が停止する14年3月まで5年で、国内全体の約2割に当たる日量約100万バレル分の能力が減る計算だ。
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