大学入試「20年度は大きな改革でない」 下村博文氏
混迷・入試改革 キーパーソンに聞く
2020年度に始まる大学入試改革を巡る混迷が続いている。制度づくりの議論に加わるなどした改革のキーパーソンに、改革の現状や今後の課題を聞いた。初回は、改革を提言した時の教育再生実行会議のメンバーで、文部科学相として大学入学共通テストを導入する工程表を取りまとめた下村博文衆院議員。
――共通テストを巡る混乱が起きています。
「入試改革の議論は20年以上前からあるが、これからの時代は知識・技能に加え、思考力や判断力、表現力、主体性を持ち多様な人と協働して学ぶ能力や態度が必要だ。この学力の新しい3要素を入試で試す必要がある」
「入試を変えることは皆、総論では賛成するものの、各論になると様々な意見が出てくる。(混乱の一因になっている)記述式問題でも採点をどこまで公正公平にできるか、現場は試行錯誤している。公正公平を求めすぎて入試が元通りになっては困る。角を矯(た)めて牛を殺してはいけない」
――初回の改革を20年度に実施する工程表に無理はありませんでしたか。
「無理があったとは全然思わない。改革は着実に進んでいる。20年度はそれほど大きな改革ではない。とはいえ国語と数学に記述式問題を導入すること自体は画期的だ。英語の民間試験の活用も画期的であり、20年度には実施できる」
――20年の東京五輪・パラリンピック開催に合わせようとの意識はありませんでしたか。
「五輪とは関係ない。(入試改革は)いつも『総論賛成・各論反対』となるので、進められるものから進めようと考えた」
――英語では目的が異なる民間試験の成績を「欧州言語共通参照枠(CEFR)」に当てはめて比べることに疑問が出ています。
「本来は英語の問題も(共通テストを運営する)大学入試センターが作ればいいが、それだけ人もお金も投入することになる。既に『読む・聞く・書く・話す』の4技能を問う民間試験があり、ノウハウや実績があるなら活用すればいい。一方、どの試験を使うかで不公平になると困るのでCEFRを使うことになった。厳密に公正公平かと問われれば課題はあり、克服に向けて準備しているところだ」
「今回の改革のコンセプトは『一点刻み入試』をやめること。民間試験の活用方法も、例えば『一定水準以上の成績ならばよい』とすればいい」
――20年度の国語や数学の記述式問題は、小規模な内容にとどまる見込みです。
「公正公平な採点を限られた期間でするためには、あの程度しか出せないという。採点上の問題だ。本当なら記述式なんて言えないものだ」
――大学教育や高校生の学力は多様化しました。50万人規模の学力テストは今後も必要ですか。
「海外の大学で入試に学力テストを課すところは少ない。日本も全員がテストを受ける必要はなくなるだろうが、一気に無くすのはリスクがある。まずはより良いものに変えていく」
「大学には、一点刻みではない多様な入試をしてほしい。ただ、『公正公平ではない』という社会の批判に耐える覚悟と決意が大学にあるかという問題はある」