いすみ鉄道 脱線事故から1か月半 運転再開見通し立たず 沿線大多喜高校も対応に苦慮 現状は?
- 2024年11月22日
千葉県の房総半島を走る「いすみ鉄道」。10月4日、通学中の高校生を乗せた列車が脱線し、けが人はいませんでしたが、1か月半がたった現在も全線で運休が続いています。なぜここまで運転再開が遅れているのでしょうか。そして、地元への影響や今後の課題は。
(千葉放送局記者・渡辺佑捺)
脱線事故から1か月半あまり 現場は?
千葉県の外房地域の大原駅と、内陸の上総中野駅の間のおよそ27キロを結ぶ「いすみ鉄道」。
10月4日、朝の通学の時間帯に学生など100人あまりが乗った列車が脱線。けが人はいませんでしたが、このときから列車は運休しています。
いすみ鉄道によりますと、レールの下に敷かれている枕木が劣化していたことが脱線の一因とみられるということです。
当初は10月末の運転再開を目指していましたが、事故から1か月半がたった今も、再開のめどはたっていません。
地元の高校では 時間割り変更などで対応
影響を受けているのが沿線にある大多喜高校です。
いすみ鉄道を利用していた生徒のほとんどが、代行バスを利用して通学しています。
高校では、代行バスのダイヤに合わせて時間割りを変更しました。授業の始まりを10分ずつ遅らせたり、休憩時間を短くしたりして、バスの時間に対応しています。
授業の始まりの時間には生徒がそろっていないといけないので、授業の進め方や内容については教員は苦労しているところだと思います。
中には、保護者に車で送迎してもらっている生徒もいます。
母も仕事をしていて、送迎ってなると「ちょっと大変」って言われることが多いです。
けっこう不便です。帰りは親が迎えに来られないこともあります。
学校が保護者向けに行ったアンケートでは、「バスが少なく1本乗り遅れるとだいぶ待つ」とか、「送迎するためのガソリン代が出費になっている」などの意見がありました。
また、鉄道が復旧しても不安があるとか、来年度の生徒の応募に影響するのではといった声も。
大原に住んでいるので大原と大多喜をつないでくれている貴重な交通網だと思っています。卒業までには乗りたいと思っているので、頑張ってほしいです。
学校生活の中では不便さを感じている生徒が多くいます。通学でお世話になっているいすみ鉄道さんですので、早い復旧を心から願っています。
なぜ復旧に遅れ?
なぜここまで復旧が遅れているのか。
いすみ鉄道によりますと、事故のあと全線で点検を行った結果、脱線現場のほかにも枕木が劣化しているところがあり、レールとレールの間が広がってしまい安全に走行できない箇所が複数あることが確認されたということです。
このため事故が起きた車両も移動できず、今も現場近くに残ったままです。
会社側では、古くなった枕木を毎年500本前後ずつ交換してきましたが、結果的に間に合いませんでした。
鉄道事業で続く赤字 どう解決?
いすみ鉄道の輸送人員は年々減っていて、令和5年度は大雨で長期間運休した影響もあり、10年前の6割程度に。鉄道事業の赤字も例年1億円から2億円程度に上り、県や沿線の自治体が補助金で補填する形になっています。
鉄道輸送の安全に詳しい専門家は、いすみ鉄道のようなローカル鉄道の安全な運行を維持していくには、経営の負担をなくしていくことがひとつの解決策だと話しています。
関西大学・安部誠治名誉教授
地方の中小の私鉄・第3セクターは本当に経営が厳しいので、いろんな安全の仕組み、制度をきちっとこなしていくだけの手がなかなか回らないというのが今の現状だと思います。バス転換というのは1つのやり方なんですが、鉄道として残したいという場合は、(財政面で行政が)鉄道会社の負担を取って、安全を向上させるいろんな取り組みに注力をしていくことが必要ではないかと思います。
いすみ鉄道によりますと、脱線の現場でも、もともとは11月に枕木の交換を行う予定があったということです。いすみ鉄道は現在、復旧に向けた計画を作っていますが、工事業者との調整などに時間がかかっていて、「まずは利用者が多い大原駅と大多喜駅間の復旧を目指したい」などとしています。