千葉都市モノレール35周年 「懸垂式」ギネス記録 隠された絶景スポットとは
- 2023年10月20日
千葉市の中心部や住宅街を走る「千葉都市モノレール」。1988年(昭和63年)に開業して今年で35年を迎えました。
空中を縦横無尽に飛ぶように走る姿は、千葉市民の皆さんには見慣れた光景かもしれませんが、千葉に住んでまだ5か月のスタッフ(筆者)は、初めて千葉のモノレールを見たとき「未来都市!?」と仰天しました。
しかし、当初の想定を下回る利用者数、県市の共同事業の解消など、その歩みは平坦ではありませんでした。開業35年の節目にあたって、「千葉都市モノレール」の全貌に迫りました。
(千葉放送局・千葉美穂)
🚟「空中散歩」のモノレール
道路の上を飛ぶように走る車両。運営会社の許可を得て、「千葉都市モノレール」の走行中に、運転席から見える景色を撮影しました。眼下には、ふだんは見ることのできない風景が広がり、「空中散歩」をしているような気分を味わえます。
撮影したのは、「乗ることを楽しんでもらおう」という狙いで、2012年から運行している「0形(アーバンフライヤー)」という車両です。
運転席の前方が全面窓になっているほか、運転席の横の床面も窓になっているのが特徴です。
開業当初から走る「1000形」は、今後、すべて「0形」に切り替わるということです。
千葉都市モノレールの沿線は、テーマパークや競技場などの大きな集客施設がありません。そこで、「モノレールで移動する」だけではなく「モノレールに乗りに来る」ことをめざそう、と考えています。乗ること自体を楽しんでもらい「千葉のモノレールっておもしろいね」と言ってもらえるような工夫を日々考え、実践しています。
🚟なぜ千葉にモノレール?
1988年3月28日、モノレール開業の様子を伝える、当時のNHKニュースです。(注意:音が出ます)
なぜ、千葉市内をモノレールが走ることになったのか。調べてみると、計画が始まったのは50年ほど前…。
高度経済成長期の昭和40年代、千葉市内では大規模な団地の造成が進み、人口が一気に増加。道路の整備が追いつかず、路線バスでは輸送をまかないきれなくなりました。
しかし、道路が狭く、民家が建ち並ぶ中、新たな交通網の整備は難しい状況でした。
そこで白羽の矢が立ったのが「モノレール」でした。土地の購入や道路の拡幅などを最小限にし、道路上の空間を利用して作ることができるためです。
県と市が手を組んで整備に着手。第3セクターとして、1988年に開業しました。
🚟開業当初から試練の道のり
新たな都市交通の役割を担うために開業した、千葉都市モノレール。しかし、その歩みは、平坦なものではありませんでした。
利用者の数は当初の見込みを下回り、初期投資の負担が重くのしかかります。開業以来、赤字状態が続きました。
県と市は、資金面などで支援を続けてきたものの根本的な解決にならず、2006年、県と市の共同事業を解消。千葉市が株式を93%保有する形で、抜本的な経営再建に取り組むことになりました。
その後、利用者は順調に増加して2019年には開業以来最も多い、年間2,000万人近くに上りました。
しかし、新型コロナの感染拡大で大きく減少。その後、回復しつつあります。今後は海外旅行客のニーズも視野に入れて、モノレールの価値向上を進めたいとしています。
ローカル線として35年間、運行を続けてきました。経営を再建しつつ存続できているのは、日ごろから乗り続けてくれている多くの市民の皆さんのおかげで、感謝の気持ちです。これからも、モノレールの魅力を広く伝えることで、街のイメージを高めていきたいです。
🚟千葉都市モノレールの特徴は?
「千葉都市モノレール」の大きな特徴が「走行方式」です。
モノレールには、「跨座式(こざしき)」(跨座型ともいいます)と「懸垂式(けんすいしき)」(懸垂型ともいいます)の2つのタイプがあります。その名の通り、跨座式は、車両が軌道の上にまたがって走るもの。一方、懸垂式は、軌道の下の台車に車体が吊り下げられて走行します。
🚝跨座式(写真は「北九州モノレール」)
🚟懸垂式(写真は「千葉都市モノレール」)
千葉都市モノレールは「懸垂式」です。現在、日本国内にあるすべてのモノレール10か所(廃止が決まっている上野動物園モノレールを含む)のうち、現在も運行している「懸垂式」は、「千葉都市モノレール」と「湘南モノレール」などに限られ、世界的にも珍しいとされています。
「懸垂式」の特徴の一つは、天候の変化に左右されにくいことです。
2014年の冬、首都圏で記録的な大雪となり公共交通機関が運休する中、千葉都市モノレールは、線路に雪が積もるという影響を受けず、終電まで運行を継続しました。
また、千葉都市モノレールは、「懸垂式モノレールでは営業距離が世界最長」です。
1988年、最初に「スポーツセンター~千城台」が開通し、「千葉~スポーツセンター」、「千葉みなと~千葉」、「千葉~県庁前」と、3回の延伸をへて現在の路線になりました。
営業距離は15.2kmまで伸び、2001年にギネス世界記録として正式に登録されました。
🚟モノレール千葉駅にピアノ設置
「千葉都市モノレール」は、沿線を盛り上げるため、クラウドファンディングも行いました。
資金を集めた目的は、千葉駅にグランドピアノを設置すること。千葉駅2階にある広場は、7年前、別の場所にJRとの連絡通路が開通してから人通りが少なくなっていて、スペースの活用方法の模索が続いていました。
3か月間のクラウドファンディングで集まった資金は、110万円。目標の200万円には届きませんでしたが、運営会社が残りの資金を出してグランドピアノを新たに購入し、9月下旬に設置しました。
11月からは、一般の駅の利用者が自由に触れることができるということです。
グランドピアノを弾く機会はなかなかないので、これからも頻繁に来たいです。周りが静かで、音の反響もいいと思います。
広場を新しいにぎわいを生む空間にしていきたいです。ピアノの発表会や音楽会などの催しも開催することで、音楽を通して駅を利用する方々に安らぎを感じてもらえればと思っています。
🚟職員が明かす!とっておきポイント
さまざまな形で市民に親しまれてきた「千葉都市モノレール」。
運転士さんをはじめ、路線を知り尽くす職員のみなさんに、「珍しい走行風景」「おすすめの車窓風景」を聞きました。
📷【走行風景】手をのばせばタッチできそう!?すれすれの高さを走るポイント
市役所前~千葉の間、『センシティ広場』で上を見上げると、モノレールがまるで手が届きそうな距離で走行しています!子どもがジャンプしている風景も。
📸【走行風景】見られたらラッキー!?4つの車両が横並びになる瞬間が
1日1回、千葉駅の4線すべてに電車が同時に停車するタイミングがあります!(遅れがあるときを除く)ちょっと壮観な風景かも?
📸【車窓風景】2つの車両が並走するタイミングが!?
千葉公園駅方面からの電車が千葉駅に入線する時、突然、別の電車が下の方から現れるタイミングが、1日に数回あります!どこか不思議な感覚…(遅れがあるときを除く)。
その瞬間をとらえました👇(運行会社の許可を得て撮影しています)
📸【車窓風景】 富士山が見えるポイントが!
都賀駅近くで、気象条件が良いと遠くに富士山が見えます!冬場がチャンス!(下の写真は望遠レンズを使用して撮影)
千葉都市モノレールでは、10月21日(土)に「ちばモノレール祭り2023」を開催します。車両工場の見学や、ステージイベントなどが行われます。
取材後記
信号待ちのとき、モノレールが通るとふと上を見上げたり、車内でも、携帯ではなく外の風景を見つめたり。このような光景をたびたび目にし、モノレールを通して、千葉のみなさんは青空や街の風景を見る機会が多いのかもしれないと感じました。
市民の身近な足として、これからも長く愛され続けるために、魅力を高める取り組みについて、市民も一緒に考える機会が広がっていくことを期待しています。(千葉美穂)