NHK福岡のラジオがスウェーデンで聴こえた件
- 2024年3月8日

今回の「追跡!バリサーチ」は、NHK福岡になんとスウェーデンからお手紙が届いた件について!
送り主は69歳の男性・ゲーテさんで「スウェーデンでNHK福岡ラジオ第2放送を受信した」と書かれていました。
本当にスウェーデンでNHK福岡のラジオが聴こえたのか? 聴こえたとしたら、なぜなのか…?
(NHK福岡放送局ディレクター・清田翔太郎)
こちらが、スウェーデンから届いた一通の手紙とCDです。

送り主はゲーテ・リンドストロムさん(69)。
一緒に入っていたCDには「JOLB NHK福岡第2放送です」とNHK福岡の廣瀬雄大アナウンサーの声が!
「JOLB」は、福岡放送局が1日の放送終わりに流しているコールサインです。

同梱されていた手紙には「あなたの局の電波は、普通は受信できません。きれいな音質で聴こえた時には驚きました」と書かれていました。
ちなみにAM放送である、福岡のラジオ第2は、春日市の放送所から送信されています。
基本的には福岡県内向けに発信されているのですが…
今回は県内どころか…8000キロ以上!
スウェーデン南部の郊外にある、ゲーテさんの一軒家に電波が届いたというのです!

なぜ、スウェーデンで聴こえたのか?
この施設を管理・運用する、NHKの技術担当者に説明してもらいました。

放送所からラジオの電波は発射されると、遮るものがなければそのままま進んできます。
しかし、上空には“電離層”という大気の層がいくつも重なっています。
なかでも、地表に近いD層はラジオの電波を弱める性質があり、遠くまで電波は届きません。

ところが夜になると、このD層がなくなります。
そのうえにあるE層は電波を反射する性質があります。これによって電波が思わぬ遠くまで届くことがあるのです。


これって、よくあることなんですか?

よくは起こりえないですね。様々な条件が重なったときのみ発生する自然現象です。
電波がどこまで反射するかは太陽の活動や季節などによって常に変化します。詳しくわかっていないことも多く、ラジオ第2の電波が海外まで届くのはとても珍しいんです。
さて、スウェーデンのゲーテさん。いったいどんな人物なのか?

手紙を読むと、妻と娘と暮らしながら農場を営んでいるそうです。もっと詳しく知りたいと、連絡を取ってみたところ…。
なんと自宅に12メートルのアンテナを建てているアマチュア無線家でした!
世界中から偶然飛んでくる電波を見つけるのが趣味で、これまで165か国2600の放送局からラジオを受信してきたそうなんです。


どこの国のどんなラジオ局の電波が届くかは運任せです。私にとって、新しいラジオ局をみつけるのはスポーツみたいなものなのです
実はこうした趣味、“BCL=ブロードキャストリスニング”と呼ばれ、日本にも愛好家がいるんです。海外の放送をネットで簡単に聴ける今でも、あえてラジオで受信することにこだわっているといいます。

(提供:せきやま☆れいわさん)
BCLの普及に取り組む、せきやま☆れいわさんに話を聞きました。

ラジオがあれば今すぐにでもはじめられる、そういった趣味ですね。『ラジオは1人でも聴けるけど友達がいると何倍も楽しい』という信念のもと、ブログでのPRや交流活動をしています。
せきやまさんが設立したBCL愛好家の団体メンバーは250人ほどです。
全国各地にいて、みんな使っているラジオや聴いている国や局などバラバラだといいます。

100人いたら100人違いますね。ラジオやアンテナもすべて手作りの人もいれば、ネットオークションなんかで手に入れた古いラジオを使っている人もいます。みんな自分なり楽しみ方を持っています。
ちなみに福岡にもBCL愛好家がいると知り、たずねてみました。
福岡市に住む増本廣海さん(56)です。

営業の仕事をしながら市内で妻と息子と3人で暮らしています。
より細かく周波数を調整することで、混信やノイズを押さえられる高性能の受信機を使っています。

増本さんがハマったのは中学生のころ。

実は、BCLは日本全国で1970年から80年代にブームでした。
海外旅行がまだ特別だった時代、海外への憧れが背景にあったといいます。

受信した時間や内容、その周波数などをラジオ局に手紙で伝えると、ベリカードと呼ばれる記念品がもらえて、これを必死で集めたそうなんです。

増本さんに自慢のコレクションを見せてもらいました! 珍しいカードを手に入れて、友達と自慢しあっていたそうです。



ラジオウランバートル、モンゴルですね。放送自体は英語の放送だったんですけど、正直、何言ってるか分かんないながらも受信レポートを英語で書いて、果たして返信は来るのかな?と思っていたら来て、うれしかったと(笑)


今はなくなってしまったソ連、ソビエト、今のロシア。モスクワ放送ですよね。


イギリスのBBC。当時、チャールズ皇太子とダイアナさんの結婚式がある年で『BBCで結婚式を聴いてください』という案内状まで一緒に入っていました。
これはいまだに何の意味もなく見るときがあります。うれしいですからね。多分、日本で持ってるの私ぐらいかなとか思いながらですね、多分ですよ(笑)

ちなみに今回、手紙をくれたゲーテさんもベリカードが欲しかったそうです。
(ただ申し訳ございませんが、NHK福岡で今はベリカードは発行しておらず、ディレクターからお礼の手紙を送らせていただきました)
夕方6時、増本さんは、この時間夜中のアラスカの放送が入るかもしれないとチューニングします。

数分後、増本さんから「音楽聴こえました!」と教えてもらいましたが…この日はノイズがひどく、クリアには聴こえませんでした。
増本さんは微かに聴こえた音が、本当に海外の放送なのか、スマホを使ってネットの配信で確認します。

…かすかに聴こえた歌声は、確かにアラスカのラジオ局の放送だったようです。…って、それなら最初からスマホを使えば簡単に聴けますよねぇ。なぜ、わざわざBCLで聴くのでしょうか…?
増本さんは、こう断言しました。

この放送と聴こうと思ったら、もうスマホでいいんですよね。ただ、ロマンですから。その過程を楽しむと。

遠い国から雑音混じりでやっと届いた放送…外国に行ってレポートを出したとか、友達とベリカードを自慢しあったとか、いまだに少年時代の思い出を引きずってるだけかもしれませんけど。…まぁ、ロマンでしょうね(笑)

せきやまさんも仰っていましたが、BCLは必ずしも高価な機材が必要というわけではありません。ディレクターの私も、数千円のラジオを使って試したみたところ、夜の9時くらいに自宅で中国の国外向け放送を聴くことができました。周波数さえあわせれば、誰でも聴くことができるそうです。
ロマンあふれるBCLの世界…みなさんも、ぜひ試してみてください!
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