#424 興味のなかったことに関心を持つうえで、もっとも役に立っているメディアは?
世論調査部(視聴者調査) 渡辺洋子
ちょっとしたきっかけで、これまで興味がなかったものに関心を持つというような経験、皆さんもありますよね。
私は、少し前にSNSで流れてきた投稿をきっかけに、これまで特に関心がなかった戦国マンガに夢中になって、大人買いする、なんていうことがありました。
そのあと、しばらく寝不足になり、大変な思いをしました・・・。
さて、みなさんは何をきっかけに、新しいことに興味を持ちますか?
文研で、全国16歳以上の方を対象に、興味のなかったことに関心を持つうえで、もっとも役に立っているものを尋ねたところ、下のグラフのような結果になりました(図1)。
「テレビ(録画再生・インターネット動画サービスを含む)」を挙げた人が29%ともっとも多く、「あてはまるものはない」が17%、そして「YouTube」が13%と、メディアとしては「テレビ」が1番目、「YouTube」が2番目です。
テレビが1番多いのは予想どおりでしたが、テレビに次いでYouTubeが多かったのは、意外な結果でした。
YouTubeは、利用者の視聴履歴をもとに、それぞれの利用者が関心を持ちそうな動画が目につきやすいところに表示されるしくみになっています。
そうした仕組みのサービスでも、「興味のなかったことに関心を持つ」という感覚の人が一定数いるということです。
16~29歳に限ると、さらに驚くべき結果となりました。
YouTubeが28%、テレビが17%と、YouTubeがテレビを逆転していたんです(図2)。
16~29歳では、興味のなかったことに関心を持つうえで、テレビよりもYouTubeの方を評価しているということです。
もしかすると、若い人はテレビを見ないのでテレビの評価が低くなったのかもしれないと、テレビを見ない人を除いて確認してみることにしました。
※ちなみにこの調査では、16~29歳で、録画やインターネットで見る番組も含め、テレビ番組を日常的に(週に1日以上)見ない人は12%でした。
さて、どのような数字になったのでしょうか。
結果は、テレビ番組とYouTube、どちらも週に1日以上利用する16~29歳でも、
YouTubeが31%、テレビが19%と、YouTubeがテレビを上回っていました。
つまり、テレビもYouTubeも両方利用していても、16~29歳では、テレビよりYouTubeの方を、興味のなかったことに関心を持つうえで役に立つと思っているんですね。
テレビでは、ニュース、バラエティー、ドラマ、ドキュメンタリーなど、さまざまなジャンルの番組が、誰に対しても同じように流れます。 自分が好きなものが流れてくる確率は低いかもしれませんが、まったく知らなかったものを偶然目にして関心を持つという、新たな出会いが生まれやすいのではないかと考えていました。
ところが今回の結果をみると、若い人にとっては、さまざまなものが流れてくるテレビより、視聴履歴をもとにおすすめを提示してくれるYouTubeの方が、新たな関心を広げる上で役に立つと感じられていることがわかりました。
メディアに対する意識は、年齢や利用状況によって様々です。
『放送研究と調査』2022年8月号では、テレビやYouTubeなどのメディア利用と意識について、「全国メディア意識世論調査・2021」の結果をご紹介しています。
テレビと動画の利用状況の変化,その背景にある人々の意識とは~「全国メディア意識世論調査・2021」の結果から~
どうぞ、ご覧ください。