「なるほどですね」?
2009.03.01
このごろ「なるほどですね」と相づちを打つ人がいますが、何かしっくりこない感じがします。
「なるほどですね」は、特に最近になって頻繁に使われているようです。ただし違和感を覚える人も多く、少なくとも現時点では、放送ではあまり使わないほうがよいでしょう。
解説
まず、「なるほど」という相づちは、「自分は今まで知らなかったが、あなたの言っていることには納得できる」といった気持ちを表すときに使われます。ただし、国語辞典の中には「目上の人には用いない」と明記してあるものもあります(例えば『新明解国語辞典(第六版)』三省堂)。目上の人が発言した内容に対して、そもそもこのような「評価」を下すこと自体が失礼であるという考えがあるからです。
一方で、この「なるほど」は同年輩どうし(いわゆる「タメグチ」の間柄)の会話ではよく用いられています。これを目上の人にも使えるように作り変えたものが、「なるほどですね」です。この動きは、どうもある特定の地域で先に起こっているようなのです。
NHK放送文化研究所がウェブ上でおこなったアンケートでは、九州・沖縄地方は「なるほどですね」という相づちを聞いたことがあるという人が他の地域に比べて多く、また「抵抗感がある」という人が少ないことが明らかになりました(2006年2~3月実施、1530人回答)。
このように、ことばに対する感じ方に地域差がある場合、地元の人どうしで会話しているときには、さほど神経を使う必要はありません。しかし他の地域の人と話す場合、特にさまざまな人が聞き手である放送の場合には、その言い方を聞いた人がどのように受け止めるのかを想像・配慮しながらことばを選んでゆくのも、必要なことだと思います。
では、目上の人が言ったことに対して「なるほど」という気持ちを表したいときには、どうしたらよいのでしょうか。私の周りでは「つつしみを込めて『はい』『ええ』などと言う」あるいは「何も言わずに、ただ首を上下に大きく揺り動かす」のがよいという意見がありました。こういったものも、正解の一つかもしれません。