知られざる「補助犬用トイレ」の現状──パートナーと一心同体の補助犬も外出先で排泄の場を必要としている
JRさいたま新都心駅構内の補助犬用トイレ 写真:内村コースケ
<身体障害者の目、耳、手足の役割を果たす盲導犬、聴導犬、介助犬。皆さんは、これら「補助犬」のトイレ事情を考えたことがあるだろうか?私たちが外出先で職場や商業施設のトイレ、公衆トイレを利用するように、パートナーと一心同体の補助犬たちも外出先で排泄の場を必要としているのだ。
補助犬用トイレは、2020東京オリンピック・パラリンピックを境に日本でも駅・空港、公共施設などにポツポツと整備されてきてはいるが、まだまだ数は限られているし認知度も低い。一方で、有識者らが補助犬用トイレについて話し合う公開研究会が今年初めて開かれるなど、関心は徐々に高まっている。その現状と課題を紐解いてみたい。>
どこへでも入れる補助犬は指示を受けてから排泄する
身体障害者補助犬(補助犬)とは、身体障害者補助犬法に基づいて、障害をサポートするために訓練・認定された犬のこと。視覚障害者の歩行を助ける「盲導犬」、聴覚障害者に音を知らせる「聴導犬」、肢体不自由のある人の日常生活動作をサポートする「介助犬」の3種類がある。これらの犬たちは、通勤、ショッピング、旅行など、パートナーの行く先に同行し、公共交通機関や商業施設、レストランなどへの乗車・入店も法律で認められている。
身体障害者補助犬法では、補助犬の乗車・入店について、「補助犬の同伴を受け入れるように努めなくてはならない」としている。これは、補助犬は単なる犬ではなく、身体障害者の「体の一部」として社会参加が認められるという考え方に基づいている。障害者差別解消法でも、補助犬の存在を理由とした入店拒否は障害者自身に対する差別に等しいため、あってはならないことだとしている。
犬が人と異なるのは、人間に比べてトイレを我慢できるとされていることだ。補助犬はそれに従って、パートナーの指示があってはじめて排泄するよう訓練されている。たとえば、アイメイト(「公益財団法人アイメイト協会」出身の盲導犬)の場合、「ワン・ツー、ワン・ツー」と声をかけながら自分の周囲を円を描くように歩かせることにより、排泄を促す(「ワン」は小便、「ツー」は大便の隠語)。だから、時と場所を選んで用を足すことができ、「補助犬用トイレ」という概念も成り立つのだ。
リラックスできる人目につかない場所で
では、補助犬専用のトイレは現在、日本国内にどれくらいあるのだろうか。「全日本盲導犬使用者の会」のホームページには、成田空港、京王プラザホテル(東京都新宿区)、東京・豊島区役所など15カ所が挙げられている。筆者が知る限りでは、新国立競技場などそのほかにも5カ所以上はあるので、実数は20〜30カ所ではないだろうか。また、多機能トイレは補助犬も利用できることになっており、数年前からそれを周知するために入り口に「ほじょ犬マーク」を掲示する施設が多くなっている。
しかし、ユーザーが実際にどんな場所に、どんな仕様のトイレを求めているのか、そもそも専用トイレは必要なのか、多機能トイレだけで良いではないか、といった議論はまだまだ進んでいない。その中で、今年3月20日、工学、福祉、文化などのさまざまな分野の専門家で作る「一般社団法人日本福祉のまちづくり学会」主催の公開研究会「補助犬用トイレの国内外の事例解説とユーザーニーズ・評価〜補助犬用トイレ、どう整備する」が、ZOOMミーティングで開かれた。補助犬ユーザーのほか、福祉関係者やトイレメーカーの社員といった一般参加者を交え、有識者による海外と国内の事例紹介、アイメイト(盲導犬)使用者による実状報告などがあった。
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