最新記事

感染

新型コロナ、物の表面を触って感染のリスクは低いことが明らかに 米調査

2021年2月9日(火)17時50分
松丸さとみ

「まずは換気や空気清浄。余力があれば消毒を」...... PeopleImages -iStock

<米タフツ大学の研究によると、公共の場にある物の表面を触れることから新型コロナに感染するリスクは、0.05%以下で、飛沫やエアロゾルを吸い込むことによる感染と比べて低いことが明らかになった......>

物の表面を介した感染リスクは0.05%

新型コロナウイルス感染症の流行により、マスク着用、対人距離の確保など、「新しい生活様式」を私たちが取り入れるようになってまもなく1年になる。中でも、頻繁な手指消毒や、ドアノブなど人がよく触れる場所の消毒などに時間を費やしている人も少なくないだろう。

しかし米タフツ大学の研究チームが米国のマサチューセッツで行った調査によると、公共の場にある物の表面を触れることから新型コロナに感染するリスクは、「1万分の5以下」(0.05%以下)であり、飛沫やエアロゾルを吸い込むことによる感染と比べて低いことが明らかになった。

デイリーメールなどが伝えた。研究結果は、米学術誌エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー・レターズに掲載されている。

調査は昨年4〜6月、マサチューセッツが新型コロナの第1波に見舞われているさなかに行われた。横断歩道の信号機用押しボタンやごみ箱の蓋に付いているハンドル、食料品店や銀行など生活に不可欠な店舗の出入り口のドアノブなど、公共の場所にある物の表面を綿棒でぬぐい、新型コロナのウイルスが採取されるかを調べた。

348カ所のうち、新型コロナウイルスが検出されたのは、8.3%に相当する29カ所。もっとも多かったのは、ごみ箱の蓋に付いているハンドルだった。感染者数の増加に伴い、検出されたウイルスも増えたという。

飛沫やエアロゾルを抑える方が予防策として効果的

論文によると、物の表面からウイルスが検出された場合でも、感染を引き起こす危険性がないほど微量だったケースが多かった。今回の調査では、物の表面を触ることで新型コロナに感染するリスクは1000万分の2〜1万分の4と幅があったが、感染リスク中央値は、中国の武漢華南海鮮卸売市場で行われたエアロゾル感染の調査での感染リスク中央値よりも低かったという。

また、ドアノブなど物の表面を触ることで新型コロナウイルスに感染するリスクは、インフルエンザやノロウイルスと比べ低いことも示唆された。

論文は、感染者のくしゃみや咳、おしゃべりなどで飛ぶ飛沫やエアロゾルを吸うことの方が感染リスクが高いと指摘。そのため、公共施設のドアノブなどの消毒や手指の消毒は感染リスクを下げるものの、より効果的な感染予防としては、飛沫やエアロゾルの拡散を抑えたり、対人距離を確保したりすることだと述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国検察、尹大統領を戒厳令巡る内乱首謀罪で起訴 現

ワールド

WHO再加盟検討も、トランプ氏が集会で言及

ワールド

トランプ氏、政府機関の監察総監を一斉に解任 法律違

ビジネス

トランプ氏、TikTok買収で複数人と交渉 30日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 5
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 6
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 7
    ネコも食べない食害魚は「おいしく」人間が食べる...…
  • 8
    「ハイヒールを履いた独裁者」メーガン妃による新た…
  • 9
    カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 6
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中