最新記事

子どもの貧困と格差の連鎖を止めるには「教育以外の環境」へのアプローチも不可欠

2017年7月31日(月)17時49分
福島創太(教育社会学者)

adamkaz-iStock

<子どもの7人に1人が貧困という現代社会の裏で進む格差の再生産――貧しさの連鎖を食い止めるカギはどこにあるのか。模索が続くなかで「21世紀型スキル」という能力観が注目を集めている>

2016年に厚生労働省が行った国民生活基準調査の結果が先日公表され、「こどもの貧困率」は12年ぶりにやや改善されるも、いまだ7人に1人が貧困の状態であることが明らかになった。

2013年6月に政府が「子どもの貧困対策法」を制定したことも手伝って、「子どもの貧困」という言葉が広がるとともに、日本国内の6人に1人の子どもが貧困状態という数字(当時)も世間に衝撃を与えた。あれから4年、状況は改善されたとは言い難い。特に、ひとり親世帯(貧困率50.8%)、母子家庭(同82%)は切実だ。

【参考記事】日本の貧困は「オシャレで携帯も持っている」から見えにくい

貧しさは次の世代に受け継がれる

子どもの貧困という問題が抱える重大な問題の1つに、格差の再生産がある。親世代の経済状況が子世代の経済状況に大きな影響を与えているということだ。

経済協力開発機構(OECD)が2016年に公表した、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合は、日本は3.2%。比較可能な33カ国中、最下位のハンガリー(3.1%)に次いで32番目だった。これは教育に対する公的支出が乏しく、子どもの教育環境は家庭の経済状況に大きく左右されるということを示している。

日本では、大学(学部)進学率(過年度卒を含む)は51.5%で過去最高の割合(文部科学省「平成26年度学校基本調査」より)に達し、大卒であることがかつての高卒のように「標準」学歴となりつつある。

【参考記事】教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アポロ、日本とアジア富裕層向け事業で人員増強へ=

ビジネス

米で2回目の港湾スト回避、労組と使用者側が新労働協

ビジネス

セブン&アイ、24年度中に低収益事業や資産の整理を

ワールド

英首相批判のマスク氏、退陣も画策か 関係者と協議の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 2
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 5
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 6
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 7
    マクドナルド「多様性目標」を縮小へ...最高裁判決の…
  • 8
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! …
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 9
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 9
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中