最新記事
エネルギー

電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千年稼働」の世界

World's First Diamond Battery Could Last Thousands of Years

2024年12月12日(木)18時20分
ジェス・トムソン

ダイヤモンド電池は、太陽光パネルで光を電気に変換するように、ベータボルタ効果と呼ばれるプロセスを通じて放射性崩壊を電気に変換する。炭素14の半減期は約5730年。つまりこの電池は理論的には数千年間、持続できる。ただし出力は時間とともに低下する。

こうした電池は眼球インプラントや補聴器、ペースメーカーなど充電や電池交換なしで長期間稼働させなければならない医療機器のほか、メンテナンスが非現実的な宇宙船や人工衛星、遠隔センサーなどに使うことも期待される。

ブリストル大学材料学教授のトム・スコットは、「我々のマイクロパワー技術は宇宙技術やセキュリティ機器から医療用インプラントに至るまで、重要なアプリケーションに幅広く対応できる。今後数年かけて産業界や研究界のパートナーと連携しながら、あらゆる可能性を探求できることに期待している」とコメントした。

ダイヤモンド構造は崩壊に伴って放出される放射線を閉じ込めることもできるため、人や環境にとっての安全性も保証される。

ブリストル大学化学校のニール・フォックスは先にこうコメントしていた。「炭素14を材料に選んだのは、どんな固形物にもすぐ吸収される短距離放射線を放出するという理由だった。吸入したり素肌に触れたりすれば危険だが、ダイやモンドの中に安全に格納することで、短距離放射線は脱出できない」

「実際、ダイヤモンドは人が知る限り最も硬い物質であり、文字通り、我々が利用できる中でこれ以上に守りが堅いものはほかにない」

(翻訳:鈴木聖子)

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、前週比横ばい=ベーカー

ワールド

韓国大統領代行、バイデン氏と電話会談 米韓同盟発展

ビジネス

アングル:GMのロボタクシー撤退、事業継続への高い

ワールド

韓国大統領の弾劾案可決、与党の一部造反 職務停止に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 2
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千年稼働」の世界
  • 3
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空施設...「内部映像」が示すミサイルの威力
  • 4
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    燃え盛る工場に響く轟音...ウクライナが米国供与の「…
  • 7
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 8
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 9
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 10
    爆発と炎上、止まらぬドローン攻撃...ウクライナの標…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 4
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 5
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 10
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中