最新記事
中国経済

中国、国債発行を「大幅に増やす」と発表...デフレ圧力強まるなか、経済回復を後押しへ

2024年10月12日(土)16時04分
中国が経済回復後押しのため政府債務を増加

10月12日、中国政府は国債発行を「大幅に増やす」と発表した。北京の建設現場で7月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

中国政府は12日、国債発行を「大幅に増やす」と発表した。低所得者への補助金支給や不動産市場支援、国有銀行の資本補充に充て、低迷する経済成長の回復を後押しする。

藍仏安財政相は同日の記者会見で、新たな経済てこ入れ策の規模には言及しなかった。同氏は、「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」と述べた上で、今年はさらなる「景気循環対策」を講じる予定だと表明した。


同氏はまた、政府は地方政府の債務問題の解決を支援すると述べ、年内に債務割当額や未使用資金を含めて支出できる資金がまだ2兆3000億元(3255億ドル)あると付け加えた。

地方政府は不動産開発業者から未使用の土地を買い戻すことが許可されるという。

中国は、不動産市場の急速な冷え込みと消費者信頼感の低迷により強いデフレ圧力に直面しており、世界の貿易環境が緊迫する中で、輸出への過度の依存が露呈している。

ここ数カ月は各種経済指標が予想を下回り、エコノミストや投資家の間では、今年の政府の約5%の成長目標が達成されない可能性や、長期的な構造的減速が起こる恐れへの懸念が高まっている。

中国共産党の意思決定機関、中央政治局は9月の月例会合で経済の逆風に対する危機感を示しており、世界の金融市場では、中国が打ち出す景気刺激策に関心が高まっていた。

上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数は、中央政治局の会合を受けて数日で25%急騰して2年ぶりの高値を付けたが、その後は政府の追加支出計画に関する詳細が明らかにならなかったため不安が高まり、下落していた。

ロイターは先月、中国が新たな経済刺激策の一環として今年約2兆元(2844億3000万ドル)相当の特別国債を発行する計画だと報じた。

そのうち半分は地方政府の債務問題対応に充てられ、残り半分は家電製品やその他の商品の購入への補助金や、2人以上の子どもがいる全世帯に子ども1人当たり月額約800元(114ドル)の手当を支給する資金に充てられる。

一方、ブルームバーグは、経済を下支えするため、中国が主に新たな国債の発行を通じて大手国有銀行に最大1兆元の資本注入を検討していると報じた。

中国での追加国債発行は通常、全国人民代表大会による正式な承認が必要となる。

中国人民銀行は9月下旬、住宅ローン金利の引き下げなど、不動産部門を数年にわたる深刻な不況から脱却させるための措置を公表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来最も積極的な経済金融支援策だ。

こうした措置で中国株価は上昇したが、多くのアナリストは、消費の拡大や債務によるインフラ投資への過度の依存など、より根深い構造的問題にも政府がしっかりと取り組む必要があると指摘している

中国の景気対策としての財政支出の大半は依然として投資に回されているが、収益は減少しており、地方政府は13兆ドルの負債を抱えている。

[ロイター]

トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国大統領の弾劾案可決、与党の一部造反 職務停止に

ワールド

アングル:韓国大統領代行の韓悳洙首相、超党派の実務

ワールド

情報BOX:韓国大統領の命運握る憲法裁、弾劾可決受

ワールド

韓国与党、大統領弾劾への方針協議 午後に国会で再び
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 2
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千年稼働」の世界
  • 3
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    燃え盛る工場に響く轟音...ウクライナが米国供与の「…
  • 6
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 7
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    増加し続けるウクライナ軍の「脱走兵」は20万人に...…
  • 10
    爆発と炎上、止まらぬドローン攻撃...ウクライナの標…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 4
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 5
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 6
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 9
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 10
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中