松下が『宝島』に圧力 警察天下り受け入れの特集6ページがボツに
言論弾圧事件の被害にあった寺澤氏 |
- Digest
-
- 不祥事が起きた際の保険に
- 天下りを斡旋する専門組織を特定
- 読売新聞も警察からの天下り受け入れ
- 松下の直接的な関与を否定する新井編集長
- 松下1社だけ『直接来い』と言ってきた
- お詫びの電話100本かけるはめに
- 企業側に「気概」なくなった
不祥事が起きた際の保険に
松下は4月1日付で、警察庁から昨年天下った竹花豊氏を取締役に昇格させる。堅実なモノ作り中心の家電メーカーが警察のキャリア官僚を取締役にまで就任させる理由は、よこしまな期待以外は建前といってよい。松下が事件・事故を起こした際などに便宜をはかってもらうのが狙いというのが一般的な見方である。天下り批判が高まるなか、記事が出るのは松下にとって確かに好ましくない。
松下は以前から警察庁から天下りを受け入れており、前任の上野治男氏は、竹下内閣の総理大臣秘書官や群馬県警察本部長などを歴任したあと94年に松下に天下って常勤顧問に就任、常務(2001~2004年)にまでなり、その後、顧問に就任している。松下はこの頃、石油温風機による一酸化炭素中毒で死者が続出したが、松下本体は家宅捜索すら受けず、警察はおとなしかった(たとえばシンドラー社などは早期に家宅捜査を受けている)。
今回取締役に昇格する竹花氏は、警察庁時代、石原慎太郎都知事の右腕として副知事に就任し、いわゆる「歌舞伎町浄化作戦」を主導。警察庁生活安全局長を最後に2007年退職、同年3月に松下に「参与」の肩書きで天下った。警察の腐敗を追求してきた寺澤氏によれば、竹花氏は警視総監を狙えるくらい警察庁内での評価が高い実力者で、庁内に睨みが効くため、どの企業もいざ不祥事が起きてしまったときの「保険」として欲しい人材だった。
天下りを斡旋する専門組織を特定
こうした、警察組織から企業への天下りは実際にどの程度行われているのか。人事院は天下り白書として『営利企業への就職の承認に関する年次報告書』を公表しているが、これはキャリア官僚で直接官庁と利害関係があるものなどに限定され、全体のごく一部に過ぎない。
「警察では今後10年間、毎年およそ1万人ずつが定年を迎える。でも交通関係を除けば、他の省庁のように所管の企業との公共事業による明確な利害関係がない分、幅広く一般企業に押し込むしかないはずで、癒着や腐敗の温床になりかねない」(寺澤氏)
意向調査書の記入見本。これを見ると、警視庁がシステマチックに天下り先を斡旋していることがよく分かる |
天下りの実態を明らかにするため、寺澤氏は昨年、情報公開請求を繰り返し、警視庁内に天下りを斡旋する専門組織として「人材情報センター」が設置されていることを特定。その部署が過去2年で斡旋した再就職先の組織が分かる文書を、さらに情報公開請求した。
出てきたのは、2千枚に及ぶ、待遇などが黒塗りとなった求人票。退職者は意向調査書(右記画像)を記入し、その情報をもとに人材情報センターが、かなりシステマチックに再就職を斡旋していることが分かった。形だけ企業側が求人を出した格好になっているが、これが事実上の再就職につながる。
これを企業ごとに揃えて集約し、約4百の企業・団体リストを作成。さらに、チームで手分けして各社に電話で取材をかけ、天下りを受け入れる理由などを尋ねた。
読売新聞も警察からの天下り受け入れ
4百社のうち業種で多いのは、やはり警備会社やビル管理会社。セコム、綜合警備保障の2社を筆頭とする警備会社、そしてビル管理会社が多かった。「これは警察官が保有する資格がないと業務が回らない仕組みにしているので、天下りを受け入れざるをえない。あとはバラバラです。建設、運輸、不動産、広告、銀行、証券…」
採用理由として多かったのは「ノーコメント」と後ろめたさを感じさせるが、理由として多かったのは「反社会勢力の要求に毅然とした態度をとる」「顧客対応の分野でご指導いただく」といったものだったという。
天下り先は、松下のほか、NEC、三井物産、双日、博報堂、竹中工務店、コスモスイニシア、アデランスなど、大手もズラリと並び、メディア企業としては読売新聞東京本社の名前も。過去に不祥事を起こした会社が目立つ。読売は寺澤氏の取材に対し、ノーコメントだったという。
松下の直接的な関与を否定する新井編集長
すでに出ていたレイアウト。タイトルや小見出しのスペースも決まり、表や写真も入れられていたが、松下の問合せ後にボツが決まった |
寺澤氏は、旧知の編集者である宮川亨氏の依頼を受け、この特集を月刊『宝島』に掲載することを承諾。1月下旬の企画会議で通り、3月25日発売の5月号に掲載されることが決まった。
原稿を提出したのは3月14日で、すでにレイアウトが出ていた。タイトルや小見出しのスペースも決まり、表や写真も入れられており、あとは文章を流し込むだけの状態だ。
だが3月17日、寺澤氏は、宮川氏から電話で「ボツになりました、松下が原因です。松下と宝島は特別な関係にある。すみません。」との連絡を受ける。
宮川氏の説明によれば、新井浩志編集長が、雑誌担当取締役の関川誠取締役に記事を見せたところ、松下部分の削除を要求
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り2,376字/全文4,481字
上:松下の見開き広告。計5ページも入っていた下:宝島連載の石井信平氏『メディアに喝!!』。この言論弾圧事件に次号で喝を入れられるかで、石井氏がホンモノかを判断することができる。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
「…自らに不利な情報を隠蔽するため、広告出稿先の宝島社に「担当者は誰か?」などと圧力をかけた結果、…特集『警視庁「天下り企業」これが全リストだ!!』が直前になって丸ごとボツに」
「警察が天下り」より「竹花豊が松下の取締役」と書いた方がげんなり度合いマシマシ。
ああ、読売は警察の天下り先なのか。なるほど、マスコミなのに表現規制推進になるのも納得 #hijitsuzai #kisei
警視庁内に天下りを斡旋する専門組織として「人材情報センター」が設置されていることを特定。その部署が過去2年で斡旋した再就職先の組織が分かる文書を、さらに情報公開請求した。
宝島以外の雑誌に載せればいいのに。あ、でも、松下関連の広告を受けてない出版社って、限られてくるよね。さらに言えば竹花豊こそ、「漫画・ゲーム制派」の権化。広島の暴走族潰しで、調子づいてるのだろうか。
やるもんだね~ > 松下電器産業(10月からパナソニックに社名変更予定)が、自らに不利な情報を隠蔽するため、広告出稿先の宝島社に「担当者は誰か?」などと圧力をかけた結果
facebookコメント
読者コメント
偽装請負の仕組みや契約内容を機密事項として口止め、隠蔽しておいて最高裁で偽装請負だと認定されるまで違法な労働形態でも続けようとしているのではないだろうか。
現場で生かすリスクマネジメント 事例で学ぶ不祥事・内部告発から企業を守る方法(上野治男、ダイヤモンド社)という本が出版されていますが、ナショナルリース事件のことだけは書かれていました。透明性を高めることができるのだろうか。
広告のダシに使われた、という事。雑誌側も背に腹は代えられない状況なのです。ライターもこのあたりを気にしながら仕事を請けないといけない時代になりました。
とある公務員対策講座で言われた事なんですが「警察官は読売新聞購読者が多い。面接対策では読売を読んだほうがいいかも」の真意がわかりました。
話を持って行くのは正解。メーカーの年間広告予算&計画は年度頭には決まってるので、予備費を扱える人に相談しないと。迅速に決定できるので版下も間に合います。
究極の営業ツールですね(笑)編集記事のページ分を広告に差替える。今回は最初に攻めた松下だけでうまく埋まったけど、もし埋まらなかったら、残りはリストアップされた企業を上から順に当たればイイんだから。さすが賢い。松下もそのぐらい見抜けなきゃ。人がよすぎ。
「これだけ大きくページを割いてレビュー(おべっか)記事を書いてるんだから、広告ください」というのは消費財を扱う雑誌では当たり前の光景。逆に”見せ球”が無いと営業の足掛かりにもならない、というのも事実。業界の体質に問題もあるが、いよいよジャーナリズムまで出汁に使う時代になったか。そりゃぁ雑誌も買わなくなるよ。
『宝島』の広告獲得のための策略では?寺澤氏の記事は「広告を入れるなら、この事実(記事)を公表しない」という駆け引きのために利用された見せ球という推測。ファッション誌では常套手段です。「広告入れるなら、御社服着用写真をトップに移動させる」など。
として、ライターに責任を押し付ける点が挙げられます。通常雑誌の企画、特に特集記事であれば、編集会議で揉まれ、編集長の承認も当然あったはず。編集部(雑誌)総意の企画なのに、まるで他人事。あたかもライター(寺澤氏)が勝手に書いたかのような扱い。『宝島』ってそういう雑誌なの?
編集記事は聖域であり、外部からのコントロールは不可。その代わり公になる記事に対して一切の責任を持ち、そのため綿密な検証や裏づけをするのがジャーナリズムのあるべきファクトだったのでは?雑誌(新聞も?)はいつから牙を抜かれたのだろうか?
編集記事(広告記事ではなく)を先方に見せてお窺いをたてるくだり、よほど癒着しているように思えます。が、現代のマスコミ業界のファクトとして、大クライアントに対してはこの程度は常識行為なのでしょう。マヒしてます。
松下のような不祥事は、他の大企業でもこの10年で増加しています。理由は簡単です。大企業はどの業界も大手→下請け→孫請けのシステムが定着しており、実際の作業をしている孫請けには報酬が行き渡りません。孫請けは低賃金で、良い人材も集まるわけもなく、トラブルが多発して当然かと思います。松下もトヨタ化しつつあるようで、社員も厳しい状況に置かれています。日本企業の縮図がここにあるという感じがします。
大手マスコミは、いまや企業の広報が出すニュースリリースをそのまま報道する出先機関に成り下がっています。宝島の記事が没になったのは、残念です。
という性格上、(本が売れず広告収入に頼るしか無い今の状況では特に)仕方ありません。ましてや『マルコポーロ』という例もあります。雑誌編集者にジャーナリズム魂は既に存在せず、日本の一流(とされる)企業もこうした記事をよしとする懐の深さはこれっぽっちも無い、という日本の現状を、改めて認識できました。日本の雑誌は企業の広報カタログです。
する側の連携が水面下で進んでいる様子なので、される側は要注意です。
その先に待つものは共産化でしょうか。
ニュートン曰く、人類は早ければ2060年にも滅ぶと予想したそうで。
あれだけ世間の注目を浴びて批判がなされても、状況はあまり変わっていないようですね。内閣府内で人事を取り纏める案が検討されているようですが、どうしたものだか。
松下は、イエスマンばかりが出世して業績が悪化した為に中村改革が行われたような会社です。技術者の多くは真面目で優秀な方々なのでしょうが、文系の一部が他力にかまけて鼻に掛けてる印象がありますね。
記者からの追加情報
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい